
高市バブルは崩壊するか?次は「成長戦略」だ
高市総理への提言:為替より「国体」を変える産業構造改革を
高市政権への期待が国内外で高まる一方で、「円安ホクホク」発言のように、首相が為替や金利といった市場の短期的な動向に言及することへの懸念も浮上している。日本経済の真の成長と国際競争力の回復に向け、今、政治リーダーに求められるのは、小手先の対策ではなく、国の根本を揺るがすほどの抜本的な構造改革だ。本記事では、ゲストのイェスパー・コール氏が、長期的な視点から日本が目指すべき経済再生のビジョンを語る。

Q. 強い政権の誕生は、日本経済にどのような好影響をもたらすか?
総選挙で与党が300議席近い大勝を収めることで、高市政権は揺るぎない安定した政権基盤を確立する。これにより、政権トップは党内や霞が関の官僚組織に対し、より強力なリーダーシップを発揮できるようになる。党内の長老議員の意向に左右されることなく、また、それまで様子見であった官僚機構も総理の政策に従うため、大胆な政策の立案と実行が期待できる。安定政権の誕生は海外投資家からの信認を高め、新たな投資流入を促す可能性も高まるだろう。これは日本経済全体にとって好循環の出発点となりうる。
Q. 首相は為替や金利の動向について言及すべきではないという主張があるが、それはなぜか?
首相が為替、金利、株価といった市場の具体的な数値についてコメントすることは避けるべきだ。これらの市場の動きは、政府が打ち出す政策の「結果」であり、「原因」ではない。経済を良くする明確なビジョンがあって初めて、それに応じて市場が反応する。かつての安倍元首相は、「Buy My Abenomics(私の経済政策を買ってくれ)」と成長戦略の全体像を訴え、短期的な市場の数字には直接言及しなかった。小泉元首相も同様に、「民にできることは民に」という明確な哲学を語り、その結果として市場の大きな変化を引き起こした。総理の役割は、経済の「環境」や「政策」を形作ること。為替や金利は、その政策が実を結んだ後に現れる指標に過ぎないため、個別の言及は不要だ。

Q. 日本経済の稼ぐ力を高めるために、どのような「成長戦略」を描くべきか?
日本経済が国際競争力を失いつつある最大の要因の一つは、国内産業の過当競争にある。例えば、自動車産業に7社もの主要メーカーが存在し、バイクに至っては4社もがひしめき合っている現状は、互いのリソースを消耗させ、真の国際競争相手(例えば中国のBYD)に対抗しうる巨大な力を持つ企業を生み出すことを阻害している。かつて金融業界で21行あった都市銀行が「金融ビッグバン」を経て3メガバンク体制へと再編され、国際競争力を高めたように、他の産業でも政府主導で大規模な再編を促し、それぞれの産業で世界を舞台に戦える「ナショナルチャンピオン」を育成することが不可欠だ。国策として特定の企業群を強く育て上げる明確なビジョンこそが、日本経済の「稼ぐ力」を抜本的に強化する鍵となる。
Q. 「負け組天国」という厳しい指摘があるが、ゾンビ企業の存在が日本経済に与える影響とは?
海外投資家から見て、日本は「負け組天国」と評されることがある。これは、本来であれば市場から淘汰されるべき非効率な、いわゆる「ゾンビ企業」が、手厚い補助金や緩い金融政策によって温存され続けている状況を指す。このような企業の延命は、資本や労働力といった限られた貴重なリソースが成長分野に投入されるのを妨げ、結果として経済全体の効率性を低下させ、国際競争力を削ぐ。企業の経営者にとって事業の縮小や閉鎖はプライドを傷つけるかもしれないが、現在のように失業率が低く労働力不足の局面は、産業再編を断行する絶好の機会だ。ゾンビ企業が淘汰されても、そこで働く人々はより生産性の高い、成長力のある企業へと吸収され、国全体の賃金水準の向上や生産性の大幅な改善に繋がる好循環を生み出す。

Q. 企業による産業再生・M&Aが進まないのは、何が根本原因となっているのか?
日本において企業間の合併や事業再編がなかなか進まない根本的な原因の一つは、各企業の経営者が「合併によって自分のポストがなくなるのではないか」という個人的な保身やプライドを優先するためだ。このような個人の保身が国全体の産業構造改革を妨げ、ひいては国益を損なう事態を招いている。しかし、長期的な視点で見れば、産業再編による企業の収益性向上は、株価上昇を通じて国民一人ひとりの資産所得の増加に直結し、社会全体の富を増大させる。さらに、日本の年金制度の安定化にも不可欠な要素となる。今こそ、短期的な企業利益や個人的なキャリアプランにとらわれることなく、「国全体の経済成長と国民生活の安定」という大義のために、勇気ある決断を下すリーダーシップが求められている。
Q. 日本企業のイノベーションと人材活用を加速させるための具体的な方策とは?
日本企業がイノベーションを起こし、国際競争力を取り戻すためには、旧来の硬直化した文化から脱却し「頭の開国」を断行する必要がある。特に、若手のエリートやサイエンティストを積極的に登用し、その能力を最大限に引き出す文化の醸成が急務だ。具体的な施策として、企業は大学等に在籍する優秀な若手サイエンティストに対し、2〜3ヶ月間の有給インターンシップ機会を積極的に提供すべきだ。日本の学術界が抱える年功序列といった課題の壁を乗り越え、実社会での経験を積ませることで、彼らの持つ新たな発想や専門知識を企業のイノベーションに直結させる。これは「ものづくり」に強みを持つ日本が、「フィジカルAI」(現実世界に応用するAI)のような次世代技術分野で世界のリーダーとなるための重要な一歩となるだろう。

Q. 「上場企業4000社を3000社へ」という提言があるが、その目指すところは何か?
現在、日本には約4000社の上場企業が存在するが、この数を2030年までに3000社程度に集約するという大胆な目標を掲げている。これは単なる企業数の削減ではなく、非効率な企業の淘汰と産業構造の抜本的なスリム化を通じて、残る企業の生産性と収益性を大幅に向上させることを目的としている。企業が統合され、国内での無用な競争が解消されれば、国際市場での競争力が高まるだけでなく、個々の企業の収益率(ROEやROA)も現在の8〜9%から米国企業並みの15〜16%へと向上する可能性を秘める。この改革が実現すれば、株価上昇は不可避となり、結果的に国民の資産所得が増大し、年金制度の安定化にも寄与する。これは「小手先の減税」では到底達成できない、国全体の富と信頼を築き上げる構造改革となるだろう。