
ダイエットでも「おやつがOK」な理由
肥満専門医が語る、リバウンドしない科学的痩せ方〜ダイエットは「頑張ったら負け」〜
ダイエットは「頑張れば報われる」と考えている人は少なくない。しかし、無理な努力がかえって逆効果となり、リバウンドを引き起こす可能性が高いことを知っているだろうか。今回は、予防医療を専門とし、多くの肥満患者と向き合ってきた内科医の髙倉一樹医師が提唱する、科学的に正しい痩せ方に迫る。「頑張らないダイエット」という一見矛盾するフレーズの真意を解き明かし、リバウンド知らずの体を手に入れるための具体的なアプローチを紹介する。
彼の著書「無理なく痩せる科学的メソッド 肥満外来」は、多忙なビジネスパーソンやこれまでのダイエットで挫折を経験してきた人々にとって、新しい体重管理の視点を提供している。世界的に肥満人口が増加する中で、ストレス、運動不足、睡眠不足が引き起こす現代特有の「太りやすさ」にどう対処すべきか、医学的な観点から深掘りしていく。

Q. ダイエットは「頑張ったら負け」というのは本当か?その真意とは何か?
髙倉医師は「まず頑張らないことから始めましょう」と語る。これは、過去の無理なダイエットがリバウンドにつながり、「頑張ったことが負け」となる患者が多いからである。目標達成のために短期的に頑張る受験勉強と異なり、体重管理は一生続くものだ。一時的な努力は持続不可能であり、必ず限界が来る。無理なダイエットで減るのは脂肪だけでなく、重要な筋肉も含まれる。しかし、リバウンドで増えるのはほとんどが脂肪だ。結果、元の体重に戻ったとしても体組成は悪化し、「筋肉が減り、脂肪が増えた」状態になり、以前よりも太りやすく不健康な体質となる。このサイクルを避けるため、「リバウンドするくらいならダイエットしない方がマシ」というのが髙倉医師の持論である。したがって、気合や根性に頼り、生活を一変させるようなダイエットではなく、自分のできる範囲で調整し、継続可能なライフスタイルを構築することが真の成功への鍵となるだろう。
Q. 現代人が肥満になりやすい主な要因は何か?
現代社会において、肥満になりやすい要因は以下の3点が指摘される。
ストレス: 情報過多や人とのつながりの希薄化が内面にストレスを蓄積させ、ストレス食いを引き起こす。
利便性による運動不足: スマートフォン一つで買い物が完結するなど、生活の利便性向上により日常的な活動量が減少。意識せずとも運動不足に陥る。
睡眠不足: 絶え間ない情報流入により脳が休まらず、睡眠の質が低下する。睡眠不足は食欲を増進させるホルモンバランスの乱れに直結し、肥満を助長する。
特に多忙なビジネスパーソンは、これらのリスクと隣り合わせの状況にあるため、意識的な対策が求められると髙倉医師は警告している。
Q. 心と体を整え、食欲を抑制する「マイクロアクション」にはどんなものがあるか?
お金も時間も努力もかけずに、日常に取り入れられる小さな習慣が「マイクロアクション」だ。これらを組み合わせることで、痩せやすい土台を作ることが可能である。

1分間の深呼吸: 息を吸う時より吐く時を長く意識することで副交感神経が優位になり、リラックスして食欲亢進ホルモンを抑制する。
「推し活」やペットとの触れ合い: 好きな動画を見る、動物と触れ合うことで愛情ホルモン「オキシトシン」が分泌され、心の空腹感を満たし食欲を抑える効果が医学的にも確認されている。
日光浴と人との交流: 友人とのランチなどで日光を浴びながら交流すると、幸福ホルモン「セロトニン」が分泌され、心の満足感が過食を防ぐ。
仕事への集中: 脳は体の基礎代謝の約20%を消費するため、仕事や勉強に集中し脳をフル回転させることは、運動せずともカロリーを消費する「ゴールデンタイム」となる。
寝る前の3〜5分ストレッチ: 副交感神経を刺激し、末梢血行を良くすることで入眠しやすくなり、睡眠の質を高める効果が期待できる。
これら「合わせ技一本」のような地味な小技の積み重ねが、短期的な結果に固執せず、1〜2年といった長期的な視点で「気づいたら痩せていた」という真の成功につながると髙倉医師は強調する。
Q. ダイエット中におやつは食べてはいけないのか?効果的な食べ方はあるか?
ダイエットにおいて「これダメ、あれダメ」といった否定的なアプローチはストレスを生むため逆効果だ。髙倉医師は「おやつを食べてください」と推奨している。おやつの目的は、空腹時間を短くし、血糖値の急激な低下を防ぐことである。空腹時間が長すぎると低血糖状態から食欲増進ホルモン「グレリン」が分泌され、次の食事でのドカ食いにつながる。夕方のおやつは、血糖値のつなぎ役となり、晩御飯での過食を防ぐ戦略的な「仕込み」として機能するのだ。おやつの内容は「自分の好きなもの」で問題ない。甘いものを少し食べることで「嬉しい」という感情が幸福ホルモン「セロトニン」を分泌させ、精神的な満足感が得られ、食欲を効果的に抑制できる。これにより、自然と適量の食事で満ち足りる感覚が得られやすい。
体重管理は1日単位ではなく、1週間単位でトータルに見るべきだ。多少食べ過ぎた日があっても、他の日で調整すれば良い。「唐揚げを食べたのに体重が増えなかった」といった成功体験は、自己効力感を高め、継続を可能にする強い武器となるだろう。
Q. 危険な「老化ダイエット」を避けるにはどうすればよいか?
16時間断食などの極端なダイエット法は、本来、内臓を休ませるための健康法であり、痩せるための方法論とは異なる。過度な空腹を我慢する行為は、強いストレスとなり、ストレスホルモン「コルチゾール」を分泌させるのだ。このコルチゾールは食欲を増進させるだけでなく、基礎代謝も低下させる。体は危機的状況と判断し、生存のためにエネルギー放出を抑えようとするためだ。結果的に、体は「食欲旺盛で燃費の悪い」、つまり痩せにくい状態へと変化し、リバウンドを招きやすいという負の連鎖が生じる。

また、BMI18.5を下回る「シンデレラ体重」を目指すような無理な減量は、脂肪だけでなく大切な筋肉を失わせる。加齢とともに筋肉が脂肪に置き換わるのが老化現象であるため、自ら筋肉を減らす行為は「老化ダイエット」と呼べる。これは体本来の代謝機能を低下させ、見た目の若々しさとは逆行する行為だ。「月5kg減量」といったハイペースな目標も、体に過剰なストレスを与え、食欲の爆発を準備しているようなものだ。挫折を避け、自己効力感を維持するためには、1日1分スクワットのような「失敗しようがない」低いハードルから始めることが重要だと髙倉医師は提言する。
Q. 運動よりも食事が大切というのは本当か?その理由は何故か?
ダイエットにおいて、運動による「消費」を増やすことよりも、食事による「摂取」を減らすことの方が体重へのインパクトは大きいと髙倉医師は指摘する。1日の総消費カロリーの内訳を見ると、基礎代謝が約60%、運動などの身体活動が約30%、食事誘発性熱産生が約10%を占める。運動は全体の3割程度に過ぎず、ちょっとやそっとの運動では、実は言うほど多くのカロリーを消費できないのだ。そのため、無理な運動で疲弊するよりも、食べ過ぎを防ぐ、すなわち摂取カロリーを適切にコントロールするアプローチの方が、効率的かつ確実に結果につながる可能性が高い。これがダイエットの入口として最優先すべき点であると彼は述べている。
Q. 睡眠はダイエットに大きく影響するのか?質の高い睡眠を得るためのポイントとは何か?
睡眠は体重管理において極めて重要な要素だ。現代人の多くは、寝る前のスマートフォン利用などで自ら睡眠の質を低下させている現実がある。

寝る前に発光する画面や情報刺激は、体を活動状態にする交感神経を優位にし、リラックスさせる副交感神経の働きを阻害する。このため、睡眠時間が削られるだけでなく、質の低い睡眠となってしまうのだ。質の高い睡眠中には、食欲を抑制する「レプチン」と、基礎代謝を上げる「成長ホルモン」という二大痩せホルモンが分泌される。逆に睡眠不足の状態では、レプチンや成長ホルモンの分泌が減少し、食欲増進ホルモン「グレリン」が増加する。これにより、寝不足の翌日は食欲が暴走しやすくなる悪循環に陥る。質の高い睡眠を得るためには、食事後3時間以内に就寝するのを避けるべきだ。消化活動で内臓が動いていると体が十分に休まらず、睡眠の質が落ちるためだ。週の半分でも良いので、「6時間以上の睡眠」と「朝ぐっすり眠れたという熟眠感」を意識して確保することが、太りにくい体質への近道である。
