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【核融合エネルギー】核融合エネルギーの期待と課題
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2026年1月13日

なぜ核融合が注目されるのか。核融合エネルギーの期待と課題とは。注目される核融合スタートアップとは。松尾一輝氏と竹内純子氏に核融合を巡る国の動きについて聞いた。 ▼プロフィール 松尾一輝|EX-Fusion CEO 大阪大学大学院博士後期課程理学研究科物理学専攻を修了し博士取得。在学時は藤岡慎介教授...
「地上に太陽を」核融合エネルギー最前線:脱炭素と安全保障の切り札
「地上に太陽を作る」という壮大な目標を掲げる核融合エネルギーは、持続可能な社会実現への期待を一身に集める技術である。地球上にほぼ無尽蔵に存在する資源を燃料とし、CO2を排出しない究極のクリーンエネルギーとして、長年の研究開発を経て実用化の道を模索している。
しかし、その実用化への道のりは長く、夢物語として語られることも少なくない。現在、核融合技術はどのフェーズにあり、日本は国際社会の中でどのような役割を担い、商業化への課題は何か。本稿では、これらの疑問にQ&A形式で深く掘り下げる。

Q. 核融合とはどのような技術か?
核融合は、太陽が自ら発光するメカニズムと同じ現象を地球上で人工的に再現しようとする試みだ。軽い原子核同士が合体(融合)する際に発生する莫大なエネルギーを利用し、これを電力へと変換する技術を核融合発電と呼ぶ。

その燃料は主に海水から抽出できる重水素と三重水素であり、これはほぼ無尽蔵に供給が可能である。化石燃料に頼らず、高レベル放射性廃棄物も発生しないため、次世代のクリーンな国産エネルギーとして世界の注目を集めている。
Q. 核融合が今、これほど注目される背景に何があるか?
核融合が再び脚光を浴びる背景には、大きく分けて二つの要因がある。一つは、2050年カーボンニュートラル実現に向けた「脱炭素」への世界的な動きだ。CO2を排出しない核融合は、この目標達成に不可欠なクリーンエネルギーとして期待されている。
もう一つは、国際情勢の不安定化による「エネルギー安全保障」への意識の高まりだ。化石燃料の多くを海外からの輸入に依存する日本のような国にとって、海水から燃料を生成できる核融合は、究極の国産エネルギー源となり、エネルギー自給率向上に貢献すると見られている。こうした潮流の中で、核融合は長期的な研究開発から、具体的なエネルギー戦略の一角を担う技術へと位置づけが変化しつつある。
Q. 日本の核融合開発は現在どのような段階にあるか?
日本は核融合研究の長い歴史を持ち、国際熱核融合実験炉(ITER)計画には初期から主要メンバーとして参画し、技術面で多大な貢献をしてきた。しかし、近年では民間主導の技術開発が世界的に加速。これを受け、日本政府も2023年には初の国家戦略となる「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を策定した。

この戦略の下、政府はGX(グリーン・トランスフォーメーション)経済移行債を財源に、核融合スタートアップ支援に3年間で600億円規模、最大5年で1000億円超という大規模な資金投入を予定する。国の本気度が高まる中で、既存の原子力関連施設や人材を有する青森県や茨城県などの地方自治体も、将来的な「原型炉」誘致に名乗りを上げ、地域経済の活性化にもつながる動きが加速している。
Q. 核融合の主な方式と、その開発状況はどうか?
核融合開発は現在、科学的な原理実証の段階を超え、「発電実証」を目指すフェーズへと移行している。特にレーザー方式においては、2022年に投入エネルギーを上回るエネルギー取り出し(エネルギー純増)が世界で初めて達成され、現象としての実現可能性が明確に示された。

核融合炉には主に「磁場閉じ込め方式」と「慣性閉じ込め方式(レーザー方式)」がある。磁場閉じ込め方式には「トカマク型」や「ヘリカル型」があり、強力な磁場によって高温のプラズマを長時間維持し、連続発電を目指す。これらは電力系統を安定させるベースロード電源としての役割が期待される。
一方、レーザー方式は高出力レーザーで燃料を瞬間的に圧縮・加熱し、核融合反応をパルス的に起こす。反応回数を制御することで出力を調整できるため、再生可能エネルギーの変動を補うピーク電源としての活用が見込まれる。
科学実証の面ではレーザー方式が一歩先行しているものの、ITER計画で大規模な装置が建設されているトカマク方式には長年の経験と実績がある。日本は特定の方式に偏らず、複数アプローチを並行して推進し、最も早く発電実証に到達可能な技術を見極める方針をとる。
Q. 世界と日本における核融合スタートアップの状況はどうか?
現在、世界中で約60〜70社の核融合スタートアップが乱立し、特に米国ではMIT発のCommonwealth Fusion Systemsのように3000億円以上を調達する企業も現れ、民間資金が開発を強力に牽引している。これらのスタートアップは、確立された技術に加え、新たなアプローチで2030年代の発電実証を目指し、競争を加速させている。
日本には約4社の核融合スタートアップが存在する。米国のスタートアップが巨額の資金力で先行する一方、日本の核融合技術はITER計画などでの実績に裏打ちされた世界トップクラスのレベルだ。特に材料科学や高精度な部品製造における日本の技術的基盤は強みであり、他国にはない大きなアドバンテージとなる。
日本が世界をリードするためには、これまでの技術・部品供給型の貢献から脱却し、核融合スタートアップが司令塔となり、大手重工メーカーや大学・研究機関といった「産官学」が一体となって技術を結集する体制が不可欠だ。これにより、日本国内で発電所システム全体を「パッケージ」として完成させ、世界に輸出できる地位を確立することを目指す。
Q. 核融合発電の実用化までの道のりや、商業化に向けた展望は何か?
「2030年代の発電実証」という目標は野心的だが、これは決して商業化を意味しない。専門家からは、核融合投資の過熱に「バブルの懸念」を指摘する声も上がっている。実用化には技術的課題を一つ一つ着実に解決していくプロセスが不可欠であり、技術が確立したからといってすぐに商業運転が可能になるわけではない。
商業化への道のりは長く、例えるならまだ「麓」から「3合目」に到達した段階だ。専門家は、現在の時点で商業化時期を具体的に予測することは「占いに近い」と述べるほど、多くの不確定要素が残る。しかし、長期的な視点で研究開発を進め、適切な資金と協力体制を維持することで、核融合が真に人類のエネルギー問題の切り札となる未来は拓かれるだろう。