2026超予測
2026年超予測:米中のAI競争。中国が勝つ理由
(1144)
8,685回視聴
2026年1月8日

不動産価格下落などデフレ傾向が続く中国。日本のような「失われた30年」に突入するのか?AIなどのテクノロジー覇権争いで米国に勝つことはできるのか?ジャーナリストの高口康太氏に予測してもらった。 <ゲスト> 高口康太|ジャーナリスト 千葉大学客員教授。同大学院人文社会科学研究科単位取得退学。2度の中...
中国テック躍進と米中AI覇権、そして「中国VS世界」の新たな経済摩擦
中国経済は輸出とテックに牽引され、驚異的なペースで進化を続けている。莫大な研究開発費と人材の投入を背景に、バイオ製薬、ロボット、AIといった先端技術分野で世界の覇権を争う存在となった。

かつての「世界の工場」から「世界のイノベーター」へと変貌を遂げつつある中国は、米中間のAI覇権競争の行方を大きく左右するだけでなく、世界経済全体に新たな対立構造を生み出している。本記事では、中国の技術的躍進の原動力とその背景、AI覇権における独自の戦略、そして「日本化」が進む中国経済がもたらす世界の貿易不均衡と新たな地政学リスクについて深く掘り下げる。
Q. 中国の驚異的なテック躍進はどのようにして可能になったのか?
中国経済の牽引役は輸出とハイテク分野の成長である。その背景には、過去20年間で15倍にも膨れ上がった研究開発費と、アメリカの約4倍にあたる800万人近くの研究開発人員が存在する。この物量攻勢は、単なる応用開発に留まらない。
近年では基礎研究への投資も急増し、アメリカからの優秀な研究者帰国も相まって、将来的にはノーベル賞受賞者の輩出も確実視されている。このような「人海戦術」とも言える投資が、中国のテック分野における圧倒的な成長の土台を築いていると言えよう。
Q. 中国がバイオ製薬で世界をリードしつつある理由は何なのか?
中国のバイオ製薬分野は「第二のDeepSeek」と称されるほどの急成長を遂げている。この分野が大きく躍進した要因はいくつか挙げられる。
まず、バイオ製薬はまだノウハウが完全に確立されていない分野であり、各国が比較的横一線でスタートできた。中国はそこに豊富な人材と資金を集中投下した。
さらに、香港証券取引所が2018年に赤字のバイオ企業でも上場を許可するなど、国家レベルでの規制緩和と支援が投資を促進した。これにより、世界の多国籍企業で活躍した華人・華僑のトップ人材と、中国国内の豊富な労働力が結びつき、新たな新薬開発フェーズに入っている。

Q. 人型ロボットの最前線で、中国はどのような戦略を取っているのか?
中国の人型ロボット開発は、「パフォーマンスロボット」と「フィジカルAI」搭載ロボットの二面性を持つ。「カンフー」を披露するようなパフォーマンスロボットの隆盛は、部品サプライチェーンの構築を促し、部品価格のデフレを引き起こした。これにより、より高度なフィジカルAI搭載ロボットの開発コストを低減している。
自律型ロボットの完全な実用化には10年を要すると予測される中、中間段階の収益源として北京では「24時間無人薬局」をすでに複数店舗で稼働させている。
これはデリバリー専用薬局として成功を収め、2026年には日本上陸も計画される。中国はイーロン・マスクが手掛ける分野に追随する「コバンザメ戦略」を多用し、
AI、ブレインマシンインターフェース、商用宇宙など、市場リスクを抑えつつ豊富なリソースを投入し、効率的な開発を進める。
Q. 米中AI覇権競争で中国が優位に立つという予測の根拠は何か?
アリババグループのトップであるジョセフ・ツァイ氏は、米中AI戦争で中国が勝つとする4つの理由を挙げる。
一つは電力コストの優位性だ。中国は再生可能エネルギーの活用が進み、電気代がアメリカよりも安価で量も豊富である。国産AIチップを利用する企業には電気代の50%を政府が補助するとの噂も存在し、AI開発の最大の消費資源である電力において優位に立つ。
二つ目は、データセンター建設費がアメリカの約4割に過ぎない点である。不動産バブル崩壊により建設コストが抑制され、土地代の安い内陸部や電力供給が安定した地域に大規模データセンターを集約する「東数西算」国家戦略も寄与している。

三つ目は、豊富で囲い込み可能なAI人材だ。世界のAIエンジニアの約半分が中国人であり、トップ人材も厚い層を形成している。米中関係の緊張は、中国人がアメリカのトップAI企業で機密情報にアクセスするのを困難にし、結果として優秀な人材が中国国内に留まる動機を強めている。
そして四つ目は、アメリカの制裁が「安くて使えるAI」のイノベーションを促した点である。高性能な半導体の入手が制限されたことで、中国は少ないリソースで効率的にAIを開発・運用する技術を進化させ、DeepSeekのようにOpenAIの最新モデルの10分の1以下のコストで利用できるAIを開発した。
Q. 中国のAIが社会実装に注力する具体的な事例とは何か?
アメリカがAGI(汎用人工知能)の性能追求に重点を置く一方、中国は産業の無人化や実用的な社会実装に力を入れる。ファーウェイ創業者が語るように、中国のAIは鉱山の無人化や事故予測といったB2B領域で具体的な価値を生み出している。具体的なサービス事例として、ByteDanceが開発したスマホ自動操作AIが挙げられる。
音声指示だけでテスラのトランク開閉やGoogleマップへのレストラン登録などを自動で行い、モバイル中心の中国社会で計り知れない価値を生み出すと期待される。
また、AIドクターアプリは健康診断結果や患部の写真からアドバイスを行い、病院予約まで対応する。さらに、筋トレフォームをリアルタイムでAIが指導するガジェットなど、特定分野に特化した実用的なAIサービスが次々と登場し、日常生活に浸透し始めた。
多くの中国発AIサービスは、自国の膨大なユーザー層を持つ一方、グローバル市場、特に日本の「ちゃんと金を払う」市場を強く意識している。
これは日本のGDP以上にデジタル市場が魅力的であると認識されていることの表れである。
Q. 中国経済の「日本化」は、世界の貿易構造にどのような変化をもたらすのか?
中国経済は金融機関の連鎖倒産という日本のような事態は回避しつつも、国内のデフレと需要不足に悩まされ、「日本化」が進行中だ。国内需要の低迷にもかかわらず巨大な生産能力を持つため、余剰製品を世界に輸出する「デフレ輸出」を加速させている。
これにより、中国の貿易黒字は1兆ドルを突破。かつてはアメリカとの貿易摩擦が中心だったが、現在ではEU、日本、東南アジアなど世界中で中国との貿易不均衡が深刻化している。不動産不況で行き場を失った資金がEVや太陽光パネルといったグリーン投資に流れ込み、過剰生産能力をさらに押し上げている側面もある。
この結果、他国は中国に対して売れる製品が減少し、「中国だけが儲かっている」という不満が高まり、貿易不均衡が世界規模の課題として浮上しているのである。

Q. 激化する「中国VS世界」の貿易摩擦に対し、日本はどう対応すべきなのか?
米国との貿易対立が一段落した現在、中国の次なる矛先はEUや日本など、貿易不均衡に苦しむ国々へ向けられている。中国はもはや「仲間を増やす」よりも「批判者を黙らせる」フェーズに移行した可能性がある。この状況で、日本が単独で中国に対抗するのは極めて困難だ。
アメリカが貿易摩擦で一時の休戦モードにある中、頼りになるのは利害が一致する他国との連携である。特に、同様に中国との貿易不均衡に悩む欧州との連携は不可欠となる。各国が個別に中国と対峙するのではなく、「中国の貿易黒字は世界経済にとって持続可能ではない」というメッセージを国際社会全体で団結して伝え続けることが、日本にとっての有効な戦略であると言えるだろう。