PIVOT TALK SCIENCE
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2025年12月18日

国家的プロジェクトになりつつある量子コンピュータ。 量子力学の第一人者、藤井啓祐教授によれば「日本の強みは垂直分業」だという。 日本のプレゼンスを高めるための成長戦略とは。 <ゲスト> 藤井啓祐|大阪大学教授 大阪大学大学院基礎工学研究科教授。同大学量子情報・量子生命研究センター副センター長。理化...
国家的プロジェクトになりつつある量子コンピュータ。量子力学の第一人者、藤井啓祐教授によれば「日本の強みは垂直分業」だという。日本のプレゼンスを高めるための成長戦略とは。

Googleが達成した量子エラー訂正は、複数の量子ビットを束ねて1つの情報を守る画期的な成果だ。これにより、ノイズ発生率が修復速度を上回る「ブレークイーブン」の壁を突破し、単体の量子ビットよりも情報の寿命を延ばすことに成功した。
この進展は、量子コンピューター開発を物理学の基礎課題から、安定性と規模拡大を追求するエンジニアリングの課題へと転換させた。もはや「数の暴力」による大規模化が現実的な目標となった。
量子ビットの単純な数が増えても、制御の複雑化、不良ビットの増加、冷凍機の冷却能力限界など、大規模化には多岐にわたる技術的課題が存在する。エラー訂正によって高品質を維持しつつ、これらの問題を解決するための新たなエンジニアリング開発が不可欠である。

IBMは2026年末までに、現在のエラー訂正なしのマシンでスパコンを超える「量子優位性」の実証を目指す。これは、長期的なエラー訂正路線とは異なる戦略である。
GoogleやIBMが垂直統合型で開発を進める中、日本は「水平分業」モデルを推進している。理研のチップ、アルバッククライオの冷凍機、阪大発スタートアップの制御装置など、各専門企業や研究機関が得意分野を持ち寄って協業する。

このモデルの利点は、各構成要素が独立した製品として世界市場でチョークポイントとなり得る点だ。この戦略により、日本の技術がグローバルなサプライチェーンにおいて重要な役割を果たす可能性を秘めている。
量子技術分野は世界的に人材不足が深刻であり、日本も例外ではない。博士号を取得した優秀な学生が、国内外の企業やスタートアップに次々と引き抜かれている現状がある。

アカデミアでの研究と次世代育成が困難になる空洞化を避けるため、若者が目標とし、安定したキャリアパスを描けるような「量子版NASA」のような象徴的な研究機関や体制の整備が急務だ。
ハードウェア開発で莫大な資金力を持つ大国に匹敵することは難しいが、日本はソフトウェアとアルゴリズムの分野で優位に立てる。実際、素因数分解に必要な量子ビット数は、アルゴリズムの進化によって1億個からわずか100万個へと大幅に削減された実績がある。
これはハードウェアの進化に依らず、少数の優秀な人材による理論研究で要件を劇的に改善できる可能性を示す。アルゴリズムやソフトウェア開発に注力し、優秀な人材を育成することが日本の効果的な勝ち筋である。
2025年までにエラー訂正が標準技術となった今、2026年以降の焦点は「エラー訂正された量子コンピューターで何を計算するか」へと移行する。これにより、次の5年間で実用的な応用の「解像度」が格段に高まるだろう。
日本が保有する多様な国産・海外製実機を活用した具体的な計算成果や、エラー訂正を組み込んだシステムによる新たな利用事例が続々と発表されることに注目が集まる。量子コンピューターが実用的な価値を生み出す時代が、まさに幕を開ける。