PIVOT TALK HEALTH
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2025年12月5日

忘年会シーズンに悩まされる二日酔い。二日酔いを防ぐための、上手なお酒の飲み方とは?二人の医師に対策法を聞いた。 ▼プロフィール 志賀隆|国際医療福祉大学教授 2001年に千葉大学を卒業。米国メイヨー・クリニックでの研修を経て、マサチューセッツ総合病院で指導医を務める。帰国後、東京ベイ・浦安市川医療...
年末年始や歓送迎会など、お酒を飲む機会は多い。古くから「酒は百薬の長」とも言われるが、最新の医学研究はその常識を覆している。
では、健康に配慮しつつ、お酒との良い関係を築くにはどうすれば良いだろうか?本稿では、国際医療福祉大学教授と産業医が語る「適量」の新常識から、悪酔いしない飲み方、さらには二日酔いの効果的な対処法までを深掘りする。
科学的根拠に基づいた情報を活用し、お酒との賢い付き合い方を習得することが重要だ。

かつては「酒は百薬の長」と言われ、少量飲酒が心臓病リスクを低下させるという「Jカーブ効果」が知られていた。しかし、最新の大規模研究ではこの説が覆されている。心臓病だけでなく、癌をはじめとするあらゆる疾患リスクを総合的に分析した結果、飲酒量が健康リスクに比例することが判明し、健康にとって最も良い飲酒量は「ゼロ」だという結論に至った。

心臓病に関する過去の研究はデータが限定的であり、がんや肝臓病などのリスクを考慮していなかった。現在では、より多くのデータに基づき「飲まないことが最も健康的」であるという見解が主流となっているのだ。
ただし、飲酒によるストレス軽減効果やQOL向上は個人差が大きい。データ全体として見れば飲酒の健康デメリットが上回るものの、個々の状況で適度に楽しむことは可能だと専門家は述べている。リスクを認識した上で、自己判断することが大切である。
飲酒後に顔が赤くなる人は、アセトアルデヒドという有毒な発がん性物質の分解が苦手な体質である可能性が高い。この物質はアルコールが肝臓でADHという酵素によって分解される際に生成されるものだ。日本人の約4割は、アセトアルデヒドを無害な酢酸に分解するALDH2酵素の働きが弱く、そのため体内にアセトアルデヒドが長く留まりやすく、食道がんなどのリスクを高めてしまう。
「お酒に強くなった」と感じる人がいるが、これは必ずしも良い兆候ではない。肝臓には、大量飲酒を続けた際にアルコール分解を担う「MEOS(ミクロゾームエタノール酸化酵素系)」という予備システムがある。このMEOSが過剰に稼働すると、本来担うべき薬物分解などの他の代謝が阻害され、肝臓に多大な負担をかける結果となる。これは肝硬変などの重篤な肝障害につながる危険なサインなのだ。
したがって、お酒に強くなったと感じても、それは肝臓が無理をしている証拠であり、健康には良くない状況だと認識すべきである。
二日酔いを防ぐには、飲むお酒の種類と飲み方に注意が必要だ。二日酔いの原因となる不純物(コンジナー)が少ない「蒸留酒」(ウイスキー、焼酎、ウォッカなど)を選ぶことが推奨される。特に無色透明な焼酎やウォッカは、不純物が少ないため、比較的二日酔いになりにくいとされている。醸造酒(日本酒、ワイン、ビールなど)は不純物が多いため、飲み過ぎには注意が必要だ。

さらに重要なのは、お酒を希釈して飲むことである。ストレートやロックは高濃度のアルコールが直接食道を刺激し、がんリスクを高めるため避けるべきだ。水割りやお湯割りで薄めて飲むことを心がけよう。お湯割りはアルコールが揮発し、ゆっくり飲めるため特におすすめだ。また、炭酸飲料は胃腸の運動を活発化させ、アルコールの吸収を早めて血中濃度を急上昇させるため、二日酔いを避けるなら炭酸割りを控えるのが賢明である。
空腹時の飲酒は、血中濃度を急激に上げ非常に危険だ。飲酒前に牛乳や脂肪分を含む食事を摂ることで、胃でのアルコール吸収速度が緩やかになる効果が期待できる。飲み会の場では、料理と共にゆっくりとお酒を楽しむことを意識しよう。
肝臓は体内のアルコールを分解する重要な臓器であり、肝細胞が完全に再生するには約48時間が必要である。そのため、毎日お酒を飲む習慣は肝臓に常に負担をかけ続けることになる。週に2日以上の休肝日を設けることで、肝臓を十分に休ませ、機能回復を促すことが健康維持には不可欠である。
やむを得ず飲酒する際の「適量」は、純アルコール量で男性は一日20gまで(ビール中瓶1本程度)、女性は10gまで(ビール中瓶半分程度)が目安だ。一度に飲む量の上限としては、「ビンジドリンキング」(飲み過ぎ)と呼ばれる状態に注意すべきで、男性は5杯、女性は4杯(日本人であれば3杯程度)を超える飲酒は、急性アルコール中毒のリスクを高める。また、体格が大きい人ほど体内の水分量が多いため、同じ量でも血中濃度が上がりにくく、酒に強い傾向にあることも知られている。自己の体格や体質を理解し、飲み過ぎを防ぐ意識が重要だ。
加齢とともに体内の水分保持量は減少し、アルコール血中濃度が上がりやすくなるため、若い頃と同じペースで飲むのは危険である。年齢を重ねるにつれて飲む量を減らすべきだと専門家は指摘する。無理なくお酒を楽しむためにも、自身の年齢や体調に合わせた飲酒量を心がける必要がある。
二日酔い対策として有名な「ウコン」は、動物実験では効果が見られるものの、人間での大規模な科学的根拠は乏しい。吸収率も悪いため、特効薬とは言えず、気休め程度に留まる可能性が高い。無理に服用するよりも、他の対策に注力すべきである。
飲酒後は脱水と低体温に陥りやすいため、寝る前に十分な水分補給と体を温めることが重要だ。特に、カフェインを含まない「お白湯」は、体を温めつつ脱水を防ぐのに適している。アルコールは体温を低下させ、深部体温を下げることが知られており、冬場に屋外で寝てしまうと命に関わる危険性があるため、温かくして寝ることが不可欠だ。
二日酔いの朝は、アルコールの分解によって大量のエネルギーが消費され、体が低血糖状態に陥っている。食欲がなくても、お粥やパンなどの炭水化物を摂取し、エネルギー補給をすることが回復の鍵となる。よくある「締めのラーメン」は、消化に負担をかけ、睡眠の質を低下させる最悪の選択である。炭水化物は翌朝に摂ることを習慣化しよう。頭痛がひどい場合は、ロキソプロフェンやイブプロフェンなどの市販の頭痛薬を、たまに使う程度であれば服用しても問題ない。
お酒の飲酒量をコントロールし、健康的に付き合うためには、その「目的」を見つめ直すことが大切だ。孤独感やストレスを解消するためにお酒に頼る「孤独飲酒」は、アルコール依存症のリスクを高める危険な行為である。特に、安価に効率よく酔える「ストロング系缶チューハイ」は孤独飲酒に繋がりやすく、社会問題にもなっている。

アルコール依存症の危険なサインとしては「朝起きてすぐに飲みたいと感じるか」「飲酒に罪悪感があるか」などが挙げられる。もしこのような状態にあるならば、専門機関への相談を検討すべきだ。そうなる前に、飲酒の目的を「社交を円滑にするツール」として捉えるべきである。趣味の集まりなど、会社や家庭以外の「サードプレイス」で人とのつながりを見つけ、お酒をコミュニケーションの潤滑油として活用することが、健全な飲酒習慣につながるのだ。
平均飲酒量は男性で一日2杯、女性で1杯とされており、週に2日以上の休肝日を設けることが推奨されている。これらのガイドラインを参考に、最新の医学的知見と自身の体質を理解した上で、お酒と上手に付き合っていくことが、健康的で豊かな人生を送るための鍵となるだろう。