
中国・ロシア・北朝鮮による3正面の脅威/自衛隊・陸海空元3将が徹底分析
中国・ロシア・北朝鮮による3正面の脅威/自衛隊・陸海空元3将が徹底分析
日本を取り巻く安全保障環境は戦後最悪と言われるほど深刻な状況にある。中国の急速な軍拡、ロシアと北朝鮮の連携強化、そしてかつての「世界の警察官」たるアメリカの変容は、日本の防衛戦略に抜本的な見直しを迫っている。
本稿では、元自衛隊幹部たちの議論に基づき、現在の日本の安全保障環境が抱える多角的な課題と、喫緊の対策についてQ&A形式で深掘りする。国防の最前線で何が起こり、我々は何に備えるべきか。

Q. 現在の日本の安全保障環境はどのような状況か?
日本は現在、「新悪の枢軸」と称される中国、ロシア、北朝鮮、さらにはイランが連携を強化している状況に直面している。同時に、戦後の国際秩序を主導してきたアメリカの立ち位置も変わりつつあり、日本の安全保障戦略の根幹を揺るがしていることが指摘される。これにより、現在の日本の安全保障環境は「歴史上最悪」というべき危機的な段階に突入したと言う認識が広がる。
冷戦終結後、世界的な軍縮ムードの中で、軍事力を行使して現状変更を試みることへのハードルが著しく低下した点も重要である。これは、かつて対立していたワルシャワ機構軍の消滅やソ連崩壊により、NATOを始めとする各国が軍事力を低下させたことが背景にある。この「抑止力の低下」が、今日の地域紛争や国際秩序への挑戦を誘発する一因となっているとの見方が有力である。
Q. 新政権は日本の防衛政策にどのような影響を与えるか?
高市新政権の発足は、特に安全保障政策の観点から「日本の夜明け」とも評されている。長年の自公連立が解消され、自民党と日本維新の会が政策本位で連立を組んだことで、安全保障政策の進展を妨げていた「ブレーキ」が外れたと期待されている。維新の会が提言する21世紀の国防構想や憲法改正案は高い評価を受けており、政策に裏打ちされた連携は日本の安全保障政策が本来あるべき姿へと近づく可能性を秘める。

現役時代に専守防衛の制約に直面した元空将は、この方針により本来活用すべき軍事力が十分に発揮されず、抑止力に欠けていた状況があったことを証言する。新政権下では、ハード面での防衛力強化に加え、このような実効性のない制約を見直し、より現実的で強力な抑止力を実現するための政策転換が期待されているのだ。
Q. 中国の新型空母「福建」の能力と西太平洋における空母の価値はどのように変化しているか?
中国の3隻目の空母「福建」は、日本に重大な脅威をもたらす。最初の「遼寧」「山東」がスキージャンプ方式であったのに対し、福建は米空母と同じ電磁カタパルト方式を採用した。これにより、燃料と兵器を最大限に積載した状態での戦闘機発艦や、広大な海域で「空の目」となる早期警戒管制機の運用が可能となり、従来の空母に比べて格段に高い戦闘能力を発揮する。作戦行動範囲と滞空時間も大幅に拡大し、中国海軍が太平洋へ展開する上で大きな意味を持つであろう。
しかし、一方でミサイル技術の進化により、空母自体の価値は変化している。高性能偵察衛星やミサイルの標的となりやすい空母は「脆弱な的」であるとの見方が強まる。宇宙からの監視により位置が特定される現代戦において、空母のように戦力を一箇所に集中させる運用はミサイルの脅威と相容れない可能性が出てきている。しかし、広大な海域で航空優勢を確保し、戦力を投射するためには依然として空母が不可欠であるというジレンマが、米中双方の軍事戦略に横たわっているのだ。
Q. 米中間の軍事力バランスは西太平洋でどう変化し、日本の安全保障にどんな影響をもたらすか?
西太平洋地域に限定すると、中国海軍の艦船数はすでに米海軍を圧倒しており、その差は今後も開く見通しである。アメリカの造船業は壊滅状態にあり、新たな艦船を建造する能力が著しく低下しているためだ。また、技術面での優位性もサイバー攻撃などにより容易に模倣・盗用される時代となり、「質」よりも「量」が決定的な要素になりつつある。中国は世界一の造船能力を有しており、さらなる軍拡を容易に実行できる状況にある。

このような状況で台湾が中国の統治下に入った場合、中国は台湾を新たな海軍基地とし、太平洋へ自由に艦隊を展開することが可能となる。そうなれば日本は、大陸側と太平洋側の両面から中国軍に挟撃される形となり、日本の安全保障は根本から覆されてしまう。アメリカにとっては台湾が地政学上優先度の高い課題ではないかもしれないが、日本にとっては「我がこと」として捉えるべき死活問題である。台湾防衛は、日本の存立に直結する課題だという認識が国民に広く浸透する必要がある。
Q. 中国のミサイル網に対する日本の防衛体制の課題と、海上保安庁が直面する状況は何か?
中国は、グアムまでを射程に収める多層的なミサイル網(A2/AD戦略)を構築し、有事の際に米軍の増援を阻止・遅延させる能力を高めている。「グアムキラー」と呼ばれるDF-26ミサイルなどが代表例である。この脅威に対し、米軍はグアムやマリアナ諸島に複数の飛行場を整備・分散させることで、一つの基地が破壊されても作戦を継続できるよう対応を図っている。日本は沖縄をはじめとする米軍基地へのミサイル攻撃を想定し、常に警戒態勢を維持する必要があるのだ。
日本の南西諸島防衛については、安倍政権下の安保戦略により部隊配備という「点」の整備は進められたが、弾薬・燃料・食料の補給や負傷者の後送といった「継戦能力」が最大の課題として残る。1,100kmにも及ぶ広大な海域での安定した兵站維持は困難を極める。一方、中国の海上保安機関である海警局は、この10年間で艦船数(海警159隻に対し海保75隻)、武装(海自護衛艦と同じ76mm速射砲を搭載)、そして軍との一体化が進み、「第二の海軍」と化している。日本の海上保安庁が質量ともに圧倒され、グレーゾーン事態での圧力が強化されている状況に、早急な対策が求められる。
Q. 台湾有事は日本にどのような多面的な影響をもたらす恐れがあるか?
台湾有事は、軍事行動のみならず、経済・社会活動にも深刻な影響をもたらす。まず、南西諸島に住む約10万人の住民と、台湾および中国に在留する約12万人の日本人の避難が必要となる。この大規模な避難作戦と自衛隊部隊の展開が、限られた南西諸島の空港や港湾で同時期に発生すると、物流・人流の機能は麻痺してしまう恐れがある。この問題解決には、インフラ整備、特に3,000メートル級の滑走路を持つ下地島空港の自衛隊活用に関する政治的決断が不可欠である。政府は訓練計画を進めるものの、そのスピード感は不十分だと言う声もあがる。
さらに、中国海警局が津軽海峡を航行する例もあり、有事の際には中国が宮古海峡などを封鎖する可能性もある。このような動きは、日本の海上交通路や防衛拠点への直接的な脅威となる。軍艦化が進んだ中国海警局の活動はエスカレートしており、もはや先島諸島は戦域になりかねない現実が目前に迫る。日本の国としての存在意義を守るためにも、下地島空港の活用や早急なインフラ拡充といった具体的かつ実効性のある対応策を、国家レベルで喫緊に講じることが求められている。
Q. ロシア・北朝鮮との連携強化は、日本の防衛にどう影響するのか?
台湾有事における最大の懸念は、中国の侵攻と同時にロシアが北方で、北朝鮮が日本海で軍事行動を起こす「三正面作戦」の脅威である。ロシアと北朝鮮は直接日本に攻撃せずとも、大規模な軍事演習やミサイル発射、核実験といった陽動を行うことで、日米の軍事力と情報収集能力を広範囲に分散させることができる。これにより、日米は限られたリソースで複数の脅威に対応せざるを得ず、台湾防衛への集中が困難となることが最も警戒される事態である。

安倍元総理の外交政策は、この「三正面作戦」を避けるため、ロシアとの関係を安定させ、対中戦略に集中するという高度な安全保障戦略を含んでいた。しかし、ウクライナ侵攻によりその前提は崩れ、日本は複数の脅威に同時に対応するという厳しい状況に立たされている。ロシアの極東軍はウクライナ戦線に兵力を割きながらも、日本への牽制を怠らず、航空・海軍力を増強している。中国とロシアの軍事連携は「宇宙から海底まで」深化し、共同での爆撃機飛行や潜水艦の共同通峡は、両国間の高い信頼関係と協力水準を示す。さらに、ロシアの兵器生産の90%を支える中国からの半導体供給は、両国間の経済的・軍事的結びつきの強固さを示しており、国際社会の警告にもかかわらず継続されている現状がある。
