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トヨタ vs. 中国EV。知能化を巡る世界大競争
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2025年10月27日

自動車の競争軸が「知能化」にシフトする中、二大勢力となっているのが、トヨタと中国EV勢。両者は今、どんな戦略を推進しているのか?勝つのはどちらなのか?『トヨタ対 中国EV』の著者である自動車アナリストの中西孝樹氏に聞いた。 <ゲスト> 中西孝樹|自動車アナリスト オレゴン大学を卒業後、山一證券、メ...
自動車産業の未来図を塗り替える中国EVとトヨタの戦略
自動車産業の競争軸が「知能化」へと劇的に変化する中、中国EVメーカーが世界の市場を席巻し、その勢力図を急速に塗り替えている。
この激動の時代において、日本の自動車産業のリーダーであるトヨタは、いかなる戦略で対抗し、勝ち筋を見出そうとしているのか。
本稿では、最新のリサーチに基づき、その複雑な競争環境と、トヨタの緻密な対応戦略をQ&A形式で深く掘り下げる。

Q. 自動車産業の競争軸はどのように変化しているのか?
かつて自動車の競争力は車体性能にあったが、現在、その軸は電子プラットフォームとアプリケーションで構成される
「知能化」領域に完全に移行している。
トヨタの佐藤社長も2年前にこの変化を予見しており、この「知能化」が顧客感度の高い領域として戦いの主戦場となっている。
E/Eアーキテクチャの進化やビークルOSの導入が進み、ソフトウェアで機能が定義されるSDV(Software Defined Vehicle)化が、ものづくり自体のあり方まで変革させている。
テスラや中国勢は既にこの知能化シフトの第4世代に入っており、多くの既存メーカーが第3世代に到達したばかりという状況にある。

Q. 世界の自動車市場では、どのような企業グループが台頭し、どのような企業が苦戦しているのか?
この5年間で世界の自動車市場は明確な二極化を見せている。
一つは、AIや半導体を駆使して革命的な価値を提供するテスラや中国勢が挙げられる。
もう一つは、地道に品質とハイブリッド技術の進化を追求するトヨタや韓国のヒョンデである。
両グループともにシェアを拡大させてきた。

一方、中間に位置するフォルクスワーゲン、GM、ホンダといったメーカーは、EVシフトを急いだものの、サプライチェーンや開発手法の変革が追いつかず、シェアを大きく失い「負け組」の状況に置かれている。
市場の勝者は「車単体の進化追求型」と「インフラ協調・エコシステム型」の二つの戦略を採用している。
Q. 中国EVメーカーはどのように勢力図を塗り替えつつあるのか?
中国EV市場は、NIO、Xpengといった新興EVメーカー、BYD、Geelyのような民族系企業、そして国有企業の自社ブランド、さらにはシャオミやファーウェイといったスマホ・IT企業の参入により群雄割拠している。

BYDは、垂直統合モデルと政府補助金、独特な支払いスキームによって急成長を遂げたが、これらが限界に直面し成長は減速している。
一方、Geelyはボルボやメルセデスへの出資、IT企業の買収といった巧みなM&A戦略で技術とブランド力を獲得し、テスラを抜いて世界第2位のEVメーカーに躍進している。またファーウェイは、自ら車を作らず、SDVプラットフォームを各企業に提供する「HIMA連合」を形成し、エコシステム全体での収益化を図るビジネスモデルで存在感を増している。
Q. 中国の自動運転技術はなぜこれほどまでに急速に進化しているのか?
中国の自動運転技術の飛躍的な進化は「生成AI」の活用に起因する。
従来のルールベース型開発が大量の走行データを必要としたのに対し、生成AIは少量のデータからシミュレーションで大量の学習データを効率的に生成し、データ量で先行する企業に猛追を可能にしている。

特に市街地での完全自動運転に近い「レベル2++」の普及が著しく、AIが全てを判断するテスラ型の「モノリシックエンドツーエンド」モデルへの移行を急速に進めており、これが競争の原動力となっている。
中国政府は国家安全保障の観点から半導体とAIの国産化を推進する「デジタルチャイナ」戦略を掲げ、自動車のSDV化はその中核を担う。
Q. 中国はどのようなグローバル戦略で自動車市場を席巻しようとしているのか?
中国は、かつて日本が30年を要した輸出拡大をわずか5年で達成し、現在600万台規模の自動車を輸出している。
2030年までに国外での販売を1000万台、国内生産と合わせると3000万台規模の世界最大の自動車プレイヤーとなることを目指している。
国内EV産業に見られた過剰な値下げ競争や誇大広告といった「内巻き」の不健全な状態に対し、政府はサプライヤーへの支払い期間短縮や低金利ローンの禁止といった「反内巻き政策」を導入した。
これは一見、中国EVの停滞に見えるが、実は競争の軸を値下げから付加価値へと転換し、国内の不健全な企業を淘汰することで、健全でより国際競争力の高い企業群を育成し、海外展開を加速させる狙いがある。
中国の主な攻略対象は、関税障壁の低い東南アジアや「一帯一路」沿いの国々であり、現地の日本のサプライヤー網をも利用しようとする戦略は脅威である。
Q. トヨタは中国EV勢の台頭にどのように対応し、どのような勝ち筋を見出そうとしているのか?
トヨタは、中国市場での激しい競争に打ち勝つため、緻密な多面的な戦略を展開している。
まず、現地の広州汽車やBYDのプラットフォームや技術、超高速な開発エコシステムを積極的に活用する「インチャイナ・フォーチャイナ」戦略を推進し、中国でのSDV開発ノウハウを習得している。

国内にあったBEVファクトリーを中国のレクサス工場に移管したことも、中国の圧倒的な開発スピードを学ぶための象徴的な動きと言える。
同時に、トヨタは日本のサプライヤーの再活性化を促す「油電同居」戦略も展開する。
これはレンジエクステンダー車やグローバルモデルを中国に投入し、日本の技術と部品を活用することで、中国のエコシステムへの過度な依存を避け、日本のものづくりの強みを維持・進化させる狙いがある。
トヨタの真の狙いは、中国で学んだ開発速度(22ヶ月)やコスト競争力を、遅れて投入されるグローバルSDVにフィードバックし、中国勢と世界で戦うための競争力を日本全体で築き上げることである。
中国市場は、トヨタにとって最先端技術と高速開発を学ぶための「壮大な学びの場」であり、この地で培った「対中国網」が将来のグローバル戦略を左右する鍵となるだろう。