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有給を取る人はなぜ年収が高くなる?
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2025年10月26日

昨今、高市首相の「WLBを捨てる」という発言が物議を醸しているが、マイナビキャリアリサーチLabの朝比奈あかり氏は、WLBではなく、WLIに時代は移り変わっているという。有給を取ることでむしろ年収が65万円上がる?ミッドライフクライシスと働き方の関係とは?調査データをもとに現在の働き方について聞いた...
「働き方の未来」を徹底解剖:ワークライフバランスからインテグレーションへの進化と世代別の働き方意識
新内閣の発足を受け、労働時間規制緩和の検討指示が出された。特に、ある閣僚による「ワークライフバランスという言葉を捨てる」発言は、今後の私たちの働き方を大きく変える可能性を秘めている。
「働き方改革関連法」の施行から約5年が経過したいま、働き方に対する人々の意識はどのように変化したのだろうか。画一的な「幸せの形」が崩壊し、個人の価値観が多様化する現代において、新しい働き方や生き方を模索する人々の姿がデータから見えてくる。

Q. 働き方が変わりつつある背景には何があるか?
高市新総理の発言を契機に「ワークライフバランス」が改めて注目されたが、その背景には、個人の価値観の多様化がある。かつての日本では「大企業に入社すれば安心」「終身雇用・年功序列」といった画一的な幸せの形が存在した。
しかし、技術革新や制度変化により、これらの保証は失われつつある。その結果、人々はキャリア面において、仕事だけに注力して本当に良いのかという疑問を抱くようになった。個人が仕事にかける重みをそれぞれで定める必要が生じていると言える。
つまり、働き方には個人の自由が尊重され、優劣はないという考えが広まっている。ライフステージの変化によって仕事への比重は変わるため、定期的に自分自身の現状を内省することが重要だという認識だ。
Q. 「働き方改革」は、実際に私たちの働き方をどう変えたか?
政府は2015年に「一億総活躍社会」を掲げ、女性の社会進出支援や多様な働き方を推進するため、さまざまな制度を整備した。2019年には「働き方改革関連法」を順次施行し、労働時間短縮や有給休暇取得促進などを図っている。
具体的な施策としては、残業時間の上限規制や有給休暇の年5日間取得義務化が挙げられる。これに加え、2020年からのコロナ禍では在宅勤務が急速に普及し、働き方の柔軟性は大きく向上した。しかし、オンラインでの課題も顕在化し、再び見直しの時期を迎えていると言えよう。

データを見ると、一般労働者の総実労働時間は長期的に減少傾向にある。特に、リーマンショックやコロナ禍といった経済低迷期に労働時間は大きく減少しており、経済状況が働き方に与える影響は大きい。
一方で、年次有給休暇の取得率は「働き方改革」の成果を如実に示している。年5日の取得義務化を背景に右肩上がりに上昇し、現在では65.3%と過去最高の水準を記録している。制度の整備が、働く人々の休息を確保する上で効果を発揮していることが明らかになった。
Q. 新たな働き方の概念「ワークライフインテグレーション」とは何か?
「ワークライフインテグレーション」は、仕事と私生活を相互に良い影響を与え合うものとして捉え、両方を充実させることで人生全体を豊かにしようという新しい概念である。
これに対し、「ワークライフバランス」は仕事と私生活を「調整し切り分ける」ことを主な目的とする。両者の最終目標は人生の充実や調和にある点は共通しているが、「切り分ける」か「統合する」かというアプローチにおいて大きく異なる。

例えば、私生活での学びや趣味が仕事のアイデアやスキルアップにつながったり、仕事で得た知識や経験が私生活の人間関係や教養を豊かにしたりする状態がワークライフインテグレーションに当てはまる。
マイナビの調査では、正社員の7割が仕事と私生活の充実はつながっていると実感している。これはワークライフインテグレーションが意識せずとも自然と浸透しつつある実態を示している。しかし、その概念自体の認知度は25.8%に留まり、まだ広く知られているとは言えない。
Q. 20代の若者はなぜ「ワークライフインテグレーション」の実現に優れているのか?
ワークライフインテグレーションの実現度を見ると、20代が26.4%で最も高い割合を示している。同様に、私生活の満足度でも20代が58%と、全世代で突出して高い。
この背景には、20代の若者が仕事に重点を置く一方で私生活へのモチベーションも高く維持している点がある。彼らは就職活動の段階から、単なるキャリアだけでなく、自身の私生活も充実させられるような環境を選ぶ傾向があるのだ。
「会社への帰属意識」(終社意識)が薄れ、個人のキャリアや自己実現を重視する働き方が主流になりつつある現代において、副業やリモートワークの普及も彼らの働き方を後押ししている。20代は柔軟な働き方を求めており、それが自身のワークライフインテグレーションに良い影響を与えていると言える。
Q. 40代が仕事や生活に対する満足度が低いのはなぜか?
興味深いことに、40代は仕事、会社、私生活、そして人生そのものへの満足度が全世代で最も低い結果となった。例えば、自身の私生活に満足している40代は39%で、全体平均(49.5%)を大きく下回る。
この背景として「ミッドライフクライシス」(中年の危機)が関連している可能性がある。これは、30代後半から40代にかけて、キャリアの停滞や健康問題、今後の人生設計への不安など、心理的な悩みが顕在化しやすい時期を指す心理学的な概念だ。
「人生の折り返し地点」という認識が、自身の状況や将来への不満として表れているのかもしれない。この年代は、働き方の変化にどのように適応し、充実感を取り戻していくかが重要な課題となる。

Q. 休日が多くても高収入という「ワークライフインテグレーション」のメリットとは?
今回の調査で最も注目すべきは、ワークライフインテグレーションを実現している人が、そうでない人に比べて年収が高い傾向にあることだ。彼らは年間休日数が多く、残業時間も少ないにもかかわらず、平均で約64万9000円も高い年収を得ているという。
これは、「私生活の充実が仕事の生産性向上に直結している」という仮説を強く裏付ける。ワークライフインテグレーションの実現者は、単に時間を短縮しているのではなく、限られた時間の中で高い集中力と効率を発揮し、質の高い成果を出している「高パフォーマンス人材」であると言えよう。
私生活での学びや経験が仕事に新たな視点やスキルをもたらし、結果としてそれが評価され、収入にも反映される好循環を生み出していると推測される。
Q. 今後、企業はどのような働き方を推進すべきか?
ワークライフインテグレーションの実現に向け、企業には「働く柔軟性を高める施策」の導入が求められる。時短正社員制度や在宅勤務制度など、時間や場所の制約にとらわれない多様な働き方を支援することで、従業員のパフォーマンス向上につなげられる。
最大の壁は、企業側がこうした柔軟な働き方を単なるコストと見なしがちである点だ。しかし実際には、これは従業員の満足度向上、生産性アップ、そして優秀な人材の定着に資する「未来への投資」である。
多様な働き方を許容し、個人の自律的な成長を支援することが、これからの企業経営にとって不可欠な戦略となるだろう。