ランキング超分析
クチコミで徹底追求・電通のカルチャー改革
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2025年10月24日

気になるテーマのランキングを専門家と共に徹底分析し、世相を読み解く「ランキング超分析」。今回は特別編として働きがいランキングNo.1に初めて輝いた「電通」をピックアップ。後編では、働きがいを高める施策を分析してランキング化した。 <ゲスト> 大澤陽樹 OpenWork社長 https://x.co...
電通はなぜ「働きがいのある会社」で1位を獲得できたか?
多くの大企業が「うちは変われない」と嘆く中、電通は「働きがいのある会社」ランキングで堂々の1位を獲得した。これは単なる幸運ではなく、組織文化と経営システムに対する綿密な再構築の結果だ。過去の負のイメージを払拭し、現代に即した「働きがい」を創造するために、電通はどのような大胆な改革を断行したのか。本記事では、その具体的な施策と変革の本質を深掘りする。

Q. 「働きがいのある会社」1位に輝いた電通は、どのような組織変革を遂げたのか?
電通の1位獲得の背景には、実に数十にも及ぶ地道な組織変革の積み重ねがある。AI活用による残業の大幅削減、年功序列にとらわれない階層のフラット化、自己アップデート支援、インテグリティの徹底、ピープルディスカッションによる人材評価の多角化などがその例だ。電通の社長は「電通が変われたのだから、どんな会社も変われるはずだ」と力強く語る。これらの施策は個別のものではなく、「ワンパッケージ」として総合的に設計されたものである。大企業だから変革できないという言い訳は、もはや通用しないだろう。

Q. 社員の自律的な学びと成長を、具体的にどう支援しているのか?
電通は「自己アップデート支援」を通じて、社員の学びと成長を強く後押しする。900本以上のEラーニングコンテンツを無料で提供し、英語学習や資格取得にかかる費用を半額補助している。全額ではなく半額とすることで、社員の自律性と学習意欲を高める狙いがある。また、MBA留学のための休職を年間2〜3人が利用するなど、長期的なキャリア形成も支援の対象だ。これらは会社からの指示ではなく、あくまで「やりたい人はどうぞ」というスタンスを貫いている。学ぶことで得たスキルが挑戦的な仕事(ミッション)に繋がる人事制度とも連動しており、社員の学習利用率はほぼ100%に達し、月平均14時間を自主的な学びに充てているという。スキルアップ後に転職を選ぶ社員もいるが、それを無理に引き止めず、出戻りも歓迎する「オープンな会社」の姿勢が、結果として社員のエンゲージメント向上に繋がっていると言える。
Q. 法令遵守にとどまらない「インテグリティ(誠実さ)」とは何か?
電通が全社員に徹底を求める「インテグリティ」は、単なる法令遵守(コンプライアンス)の狭い概念ではない。これはプロとして「正しいことを正しく行う」誠実さ、高潔さ、そして高い倫理観を指す、より広範な概念である。過去の労働問題などを反省点として、経営陣が率先して意識改革を進め、社内報や対話会、年1回の「インテグリティ・デー」など、あらゆるチャネルでその浸透を図る。一方的にルールで縛るのではなく、社員同士が「これってグレーではないか?」と議論し、個人の意識に根付かせることで、自由闊達な組織風土を維持している点が特徴的だ。また、インテグリティはクライアントファーストと矛盾しないと電通は考える。短期的な顧客の要望に応えることでインテグリティを欠くと、100年続くような長期的な信頼関係を壊す可能性がある。インテグリティを貫くことこそが、真のクライアントファーストだという考えが社内に共有されているのだ。
Q. 人材育成・評価の「ピープルディスカッション」では、業績以外のどのような基準で社員を評価するのか?
電通は人材育成・評価において「ピープルディスカッション」というプロセスを導入している。これは年に一度、管理職層が集まり、個々の社員の成長と育成についてディスカッションする場だ。評価軸は「業績」と「電通リーダーシップアトリビュート」と呼ばれる6つのリーダーシップ行動指針の2つである。ここで重要なのは、リーダーとは役職名ではなく、「自分らしく周囲にポジティブな影響を発揮すること」と定義され、全社員がリーダーシップを発揮することを期待される点だ。中でも「自分より優秀な優れた人材を育成する」という項目が強調される。これは、多様な専門性を持つ部下をコピーするのではなく、その強みを引き出し、生かすことの重要性を示すものだ。この価値観を浸透させるため、電通は明確なメッセージを発信する。たとえ業績が良くても他者を蹴落とすような行動をする社員は評価せず、逆に業績は標準的でもリーダーシップ行動が優れている社員を抜擢・昇格させるのだ。これにより、会社がどのような人材を求めているのかを明確に示す。評価の客観性確保のため、上司の主観だけでなく、部下や同僚からの360度評価(マネージャーサーベイ)の結果も反映され、本当にチームのために行動するリーダーが報われる仕組みになっている。

Q. チーム力を最大化するための「利他的精神」とは具体的に何を意味するのか?
電通はチームの力を「足し算(100+100=200)」ではなく「掛け算(100×100)」にすることを目指し、その核として「利他的精神」を掲げる。これは、自分の利益よりも他者の利益や成長を優先する考え方だ。企画会議などで互いのアイデアを競い合うのではなく、それぞれの良い点を引き出し、掛け合わせることで、チームとして最大のアウトプットを創出する。この利他的なリーダーシップは新入社員研修から徹底して伝えられる会社のDNAであり、競争力の一因を担う。社員の口コミによると、電通にはサービス精神旺盛で社会貢献意欲が強い人材が多く集まるという。拝金主義とは異なる「人の喜ぶ顔を見るのが好き」な気質を持つ社員を採用段階から見極め、育成することで、「利他」の精神が自然に組織文化として根付いている。リーダー層が率先して「利他」の姿勢を示すことで、組織全体の共感と実践が促され、個人プレーを超えた高いパフォーマンスが実現されるのだ。
Q. 広告代理店の枠を超え、「Integrated Growth Partner」へと事業を変革した理由は何にあるか?
電通は今、「Integrated Growth Partner(統合的成長支援パートナー)」として進化を遂げている。電通ジャパン全体の事業の約4割は、すでに広告以外の領域が占めているという。コンサルティング、スポーツ、コンテンツビジネスなど多角的な事業展開がその特徴だ。この変革はトップダウンで一方的に指示されたものではなく、社員の「やりたい」という声が起点になっている点が重要である。広告以外の事業領域への挑戦は、社員に新たな学びや「ストレッチ」の機会を与え、結果として働きがいの向上に繋がる。電通は単なる広告代理店ではなく、クライアントの経営課題や事業変革、パーパス策定といった上流工程から支援するコンサルティングの要素も強めている。口コミでは「もはや広告代理店ではなくコンサルティングファームに近い」との声も多い。電通が選ばれるのは、コンサルティングに求められる左脳的な分析力だけでなく、広告で培ったクリエイティビティという右脳的な発想力、さらにプロジェクトの最初から最後まで伴走し実現する「実装力」を兼ね備えているためだ。また、スタートアップとの連携も活発で、専門部署やCVC(電通ベンチャーズ)による出資、社員の出向などを通じて、事業の幅を広げている。例えば、アートを通じて社会課題を解決するヘラルボニーには社員を出向させ、事業開発責任者まで任せている事例もある。これにより、出向した社員は大きく成長し、電通自身のネットワークも拡大しているのだ。

Q. 電通の変革成功の要因と、そこから得られる教訓は何か?
電通が大規模な変革を成功させた要因は、個人の強みを掛け合わせ最高のサービスを提供するという思想のもと、個人の成長支援とチームの成長支援を両立させ、オープンな経営対話を通じて施策を推進した点にある。これらの施策は決して個別のものではなく、全てが相互に連動した「ワンパッケージ」として機能していることが極めて重要だ。表面的な標語で終わらせず、昇格や抜擢のルールといった人事制度の根幹にまで組み込むことで、変革は確実に社員に浸透した。電通の事例は「大企業だから変われない」という諦めの考えを覆す。事業成長と組織改善、これら経営合理性と組織改善の両方を追求する施策を総合的に実行すれば、どんな企業でも変革は可能だという強力な教訓を提供する。そして、この10年がかりの変革を最終的に成功に導いた最大の要因は、数々の施策を受け入れ、主体的に行動し、利他的な精神を実践した「優秀な社員」の存在だ。電通の成功は、良い仲間がいることが社員の働きがいの根幹を成し、組織文化として「電通DNAのアップデート」が今後も継続されることを示唆する。