PIVOT TALK POLITICS
高市早苗は本当に「右」か?:高市早苗×先崎彰容
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2025年9月29日

10月4日に投開票を迎える自民党総裁選。保守政党である自民党の“保守”とは何か?世界の中の日本をどう捉えているのか?どう日本を変えていくのか?総裁選の立候補者にインタビューを行った(コメンテーター:思想史家の先崎彰容氏) <ゲスト> 高市早苗|衆議院議員 松下政経塾を経て米国連邦議会へ。1993年...
高市早苗氏が語る「自民党再生」と「国力強化」:危機管理投資で未来を切り拓く国家戦略
日本政治の未来を語る上で、自民党の動向と政策は常に注目を集めるテーマである。特に総裁選などの重要な局面では、候補者の思想、国家観、経済政策、そして外交・安全保障戦略が多角的に問われる。

本稿では、政治家・高市早苗氏が「PIVOT」の対談で示した、現代日本の諸課題に対する深い洞察と具体的な処方箋に迫る。彼女の言葉から、党の立て直しから国力の再構築、そして国家の進むべき道筋まで、その真意を探求する。
Q. 自民党はなぜ国民から共感を得られなくなったのか、どのようにその状況を打開するのか?
自民党が国民の共感を失った原因は、結党時に掲げた「政治は国民のもの」という理念を忘れかけた点にあると高市氏は指摘する。常に進化を目指す保守政党であるべきだが、そのスタンスからも乖離し、国民生活の厳しさや中小企業の苦境に寄り添う姿勢が欠如したと分析する。最も厳しい声は、党の政策から「夢を感じられない」というものだ。

この状況を打開するためには、党員や党友から直接、現場の声を党本部に集約するシステムを構築し、多様な意見を政策に反映させる必要がある。また、世代間の対立を避け、全ての世代が持つ知見と経験を「総力結集」させる。そして、国民の支持を得られなかった政策に対しては、批判を恐れず素直に謝罪し、速やかに方向転換する勇気がリーダーに求められる。未来に向けた希望を示すことが真のリーダーシップだと高市氏は説く。
Q. 世間では「右寄り」と評されることが多いが、高市氏自身の政治観や国家観は何か?
自身が「右寄り」だと考えたことは一度もなく、「ごく普通の、日本と日本人を愛する国民」であると高市氏は述べる。思想史家の先崎氏は、高市氏の発言から失われがちな国家への「緊張感」と、人々の人生経験に根差す「保守本流」の思想を読み取る。それは、日々の発言に緊張感があり、国家百年を見据えた政策思考である。
また、高市氏は年齢を重ねる中で自身が体感してきた「異なる種類の苦しさ」を政策に反映させてきたと強調する。これは「人生の節目で直面する困難」への共感から生まれ、保守思想の本質である時間を大事にする考え方に通ずる。つまり、「右寄り」というレッテルは表層的なもので、本質は日本のアイデンティティを再構築し、国民一人ひとりの人生に寄り添う政治を目指すものだと高市氏は見なしている。

その政治への覚悟について、「失うものは何もない」境地だと高市氏は言い切る。自身の命も惜しまず、「ワークライフバランスという言葉は辞書にない」とまで語る。もし国家経営の責任者となれば、自らの全てをかけて職務にまい進する決意があるとした。
Q. 日本の国力強化と経済成長のため、危機管理投資を提唱する具体的な意図と内容は何か?
経済成長の核となるのが「危機管理投資」だと高市氏は主張する。激甚化する気候変動への「国土強靭化」は、国民の命を守る上で必須であり、同時に新たな需要を創出する。また、「食料安全保障」では、植物工場や陸上養殖といった日本のトップレベル技術に投資し、国内自給率向上と輸出産業化を目指す。肥料・飼料の国産化も急務とし、科学技術の活用で海外依存からの脱却を図る。
「健康医療安全保障」も重要だとし、医薬品原料のサプライチェーン国内完結を提唱する。病院の赤字や福祉施設の倒産危機に対応するため、診療報酬・介護報酬の早期改定を補正予算で実施すべきだとした。さらに「攻めの予防医療」として検診の徹底や、癌・認知症・細胞再生医療といった先進的研究開発への投資で、国民の健康長寿と医療費抑制を目指す。

「エネルギー安全保障」では、核融合や次世代革新炉、ペロブスカイト太陽電池など、安価で安定的な電力供給を可能にする技術に国家が戦略的に投資するべきだと論じた。これら全ての危機管理投資は、国民の命と暮らしを守りながら、同時に経済を成長させるという発想である。
Q. 日本が持つ優れた研究成果や技術を「研究で勝ちビジネスで負ける」ことなく、どのように富に変えていくのか?
日本は「研究で勝ち、ビジネスで負ける」という多くの機会損失を繰り返してきたと高市氏は語る。優れた論文や画期的な研究成果が、事業化のノウハウ不足や、支援制度の不認知、そして国内企業とのマッチング不足によって海外に流出する現状を問題視する。
これを解決するため、政府が積極的に介入し、大学発スタートアップの設立支援や、有望な技術を持つ研究者と国内企業との連携を促すべきだと高市氏は提言する。JETROや各国の大使館のネットワークを最大限に活用し、日本企業が国内外の市場で成功できるよう、市場情報や販路開拓を強力に後押しする必要がある。この取り組みにより、技術流出を防ぎ、国内で持続可能な富を生み出す好循環を創出するべきだ。
Q. 財政規律を重視する意見もある中で、経済成長を優先させることへの考えとは?
財政規律を重視する議論に対し、高市氏は「経済が財政に優先するのは当たり前だ」と強調する。未来に残すべきではないのは借金ではなく、「成長と安全が喪失している状態」だとした。世界の潮流は緊縮財政ではなく、官民が一体となって課題解決に投資する方向へと向かっている。日本もこの国際的な動きに乗じ、課題解決型の投資を拡大すべきだ。

高市氏は「財政規律を無視した話ではない」とし、純債務残高対GDP比を注視し、その健全性を維持しつつ「投資アンドリターン」の発想で税収が増える経済成長を目指すと説明する。課題解決型投資は将来世代のためにもなり、同時に私たちの暮らしも豊かにすると高市氏は語る。持続可能な財政のためには、まず成長が不可欠だとの立場である。
Q. 日本の外交および安全保障の現状をどう捉え、同盟国や近隣諸国との関係性をどのように構築すべきだと考えるのか?
高市氏は、日米安保条約は日本有事の際に米軍が自衛隊より先に戦うことを保証するものではないという現実を指摘し、この事実を国民が広く認識する必要があると述べる。日本の防衛は自衛隊が主体的に担うべき責任であり、米軍はそれを支援・補完する役割だと明確にする。現在の防衛力にはドローン、サイバー攻撃、海底ケーブル防護など、多くの分野で強化が不十分なため、日本独自の防衛力を抜本的に強化すべきだと高市氏は力説した。
外交については、日米同盟を基軸としながらも、「同盟と依存は違う」と明言する。米国内の世論や経済状況、政権交代によって同盟国の姿勢が変化する可能性を考慮し、他国に過度に依存せず、自国の防衛力強化を前提とするべきだとした。その上で、日米韓、日米比、日米豪のような多層的な安全保障協力を強化し、さらに次期戦闘機の共同開発を行う英国やイタリアのように、最高レベルの機密と技術を共有する「同志国」を増やすべきだと高市氏は提唱した。
中国や韓国といった近隣諸国に対しては、経済的な結びつきが強いことを認識しつつも、言うべきことは言う「強い外交」を貫くべきだとした。相手が理不尽なことをした際には毅然とした対応を示し、一方で経済や文化の交流は国益を最大化するという視点から冷静に進める「是々非々」の姿勢が求められると高市氏は締めくくった。