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完全解説:キリスト教「福音派」。トランプの最強支持者
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2025年9月22日

アメリカの人口の25%を占めるとも言われる、キリスト教「福音派」。その起源と教えとは何か?チャーリー・カーク殺害とどう関係するのか?そして、なぜトランプを熱狂的に支持するのか?『福音派』の著者である、加藤喜之・立教大学教授に解説してもらった。 <ゲスト> 加藤喜之|立教大学文学部教授 専門は思想史...
アメリカ社会の深層にある福音派の影響力とその特徴
アメリカの政治や社会を理解する上で欠かせない存在が「福音派(Evangelicals)」だ。米国人口の約25%を占めるこの宗教集団は、トランプ政権の重要な支持基盤となり、アメリカの政治・社会動向に大きな影響を与えている。立教大学の加藤喜之教授に、福音派の特徴やアメリカ社会における位置づけについて聞いた。

Q. 福音派とは何か?
福音派とは、米国人口の約25%を占める宗教集団で、地域によって分布は異なるが、南部や南西部に多く存在する。基本的な考えとして、聖書を神の言葉として文字通り解釈する「聖書の権威」、自分自身が真に信じているかどうかを重視する「会心体験」、天国に行くには「キリストへの信仰」が必要という考え、そして自分の信仰を「他者に伝道する」という4つの特徴がある。

また、独自の終末論的世界観を持ち、世界の終わりが近づいており、イエス・キリストが再臨して世界が刷新されるという考えが通底している。実際、福音派の約6割が「世界は終わりに近づいている」と感じているとされる。
Q. いつ頃から政治的影響力を持つようになったのか?
福音派が名乗り出したのは1940年代だが、メジャーな勢力として認識されるようになったのは1950年代以降だ。その発展には3人のキーパーソンが重要な役割を果たした。
1人目は、1950年代に活動したビリー・グラハム。彼は原理主義者と呼ばれる狭い考えを持った人々を、より広い大衆に向けて語る戦略を立て、福音派運動を主導した。冷戦期にはアイゼンハワー政権で重要な役割を果たし、それまで脇に追いやられていた原理主義者たちがアメリカの政治・社会に影響力を持てるようにした。

2人目は、1976年に大統領選に勝利したジミー・カーター。彼は「ボーン・アゲン(生まれ変わり)」という会心体験を公言し、主流メディアが福音派の存在に注目するきっかけを作った。当時のニューヨークタイムズなど東海岸のメディアエリートには理解できない言葉だったが、調査の結果、アメリカには25〜30%もの福音派が存在することが明らかになった。
3人目は、ハル・リンゼー。彼の著書『The Late Great Planet Earth』(1970年)は1000万部以上売れ、終末論を広めた。1967年のイスラエルの六日間戦争での勝利を「神の印」ととらえ、終わりの時が始まったと説いた。60年代のカウンターカルチャー後、途方に暮れていた若者たちに語りかけ、キリスト教が広まる一因となった。
Q. 福音派はどのような主張をしているのか?
福音派は以下のような主張・活動を行っている:

同性愛への反対:聖書の文字通りの解釈から同性愛を罪と見なす傾向がある。ただし、聖書の解釈には様々な立場があり、一概に言えない部分もある。
伝統的な家族観の推進:男性中心の家父長制を重視し、女性は家庭で子育てをするという役割分担を支持する。1960〜70年代の女性の権利拡大運動に反対し、男女雇用均等法のような「イコール・ライツ・アメンドメント」の成立を阻止した。
経済的自由の擁護:小さな政府を支持し、1930年代以降のルーズベルト政権下で広まった福祉中心の「大きな政府」に反対する。税制においても累進課税に反対し、連邦政府の権限拡大に歯止めをかけようとする。
科学・歴史への神の視点の導入:進化論に反対し、創造論やインテリジェント・デザイン(知性ある存在が人間を設計したという考え)を支持する。
白人の特権の擁護:オバマ政権下で自分たちの勢力が弱まっていると感じ、「古きよきアメリカ」「白人中心のキリスト教国家」が崩壊することへの危機感から、トランプのような強いリーダーを支持する傾向がある。
イスラエルの弁護:「キリスト教シオニズム」の考えから、終末時にイスラエルが重要な役割を果たすと信じ、イスラエルを擁護する。また、9.11以降は反イスラムの観点からも、西洋的価値観の担い手としてイスラエルを支持している。
人工中絶への反対:元々はカトリックが始めた運動だが、1970年代後半から1980年代にかけて福音派も取り入れ、道徳的優位に立ちながら人工中絶に反対する運動を続けている。
Q. トランプ政権と福音派の関係は?
福音派はトランプ政権の重要な支持基盤となった。白人キリスト教徒の割合が過半数を割りつつあるアメリカ社会の変化や、黒人大統領の誕生による自分たちの立場の危機感から、「強いリーダー」としてのトランプに期待が集まった。
経済面での不満と宗教的背景は矛盾せず、むしろ密接に繋がっている。例えば、移民問題も「白人のキリスト教的なアメリカを侵害する」という観点から捉えられ、格差問題も中流層や「仮想中流層」に多い福音派のアイデンティティと結びついている。
リーマンショック以降の経済的ショックを受けた人々にとって、トランプは「何かを変えてくれる」リーダーとして期待されたのだ。
Q. 福音派とリベラルの関係は時代によって変化したのか?
興味深いのは、1970年代までは福音派とリベラルの対立が現在ほど明確ではなかったことだ。例えば、ジミー・カーターは福音派でありながら、思想的にはリベラルな面も持ち合わせていた。

南部バプテスト連盟(現在はトランプ支持の中心勢力)も、当時はまだ多様性があり、公民権運動を支持するなどリベラルな傾向も見られた。カーター自身、南部における黒人の権利獲得のために活動した経験を持つ。
しかし時代と共に対立が先鋭化し、現在では福音派は保守的な政治勢力として確立されている。これは1980年代以降のレーガン政権以降の動きとも連動していると考えられる。
Q. なぜアメリカの宗教観を理解することが重要なのか?
多くの日本人が憧れるアメリカは、非常にリベラルでポップカルチャーが豊かな面がある一方、その深層にはかなりの部分で福音派の文化が絡んでいる。アメリカ社会と政治を正確に理解するには、この福音派の存在と影響力を知ることが不可欠だ。
アメリカ人と話をすれば、地域にもよるが、ほぼ確実に福音派の人に出会うことになる。その思考様式や価値観を理解せずにアメリカ社会を語ることはできないだろう。福音派を知ることで、より包括的にアメリカの姿が見えてくるのである。