PIVOT CAREER
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2025年8月6日

近年、就活生の多くはAIを使って「とりエン(とりあえずエントリー)」しているという。人材採用の最前線を知り尽くしたNo Company・秋山真氏に、いま企業がとるべき採用戦術を聞いた。 <ゲスト> 秋山真|No Company代表 2021年、No Company, inc.を設立し、代表に就任。...
人材市場は「売り手市場」へと大きく変化する中、企業の採用活動はますます難しさを増している。中途採用者の約30%が1年以内に退職するというデータもあり、採用コストは年々上昇している。そんな採用現場の課題に一石を投じるのが、No Company代表の秋山真氏による「スタイルマッチ」という新たな採用手法だ。従来の「業界マッチ」「カルチャーマッチ」から「スタイルマッチ」へと時代は変化しており、秋山氏はその本質と実践法を語る。

マッチングのあり方、つまり企業と働く人のマッチング方法は大きく変化している。かつては業界とのマッチングが重視されていた。その後、GoogleなどのIT企業を代表とする「働き方」や「カルチャー」「社風」を大事にする時代が到来した。
しかし現在、カルチャーマッチは終焉に向かっており、新たに「スタイルマッチ」の時代に入りつつある。カルチャーは最大公約数に近く、まとめられた綺麗なもの、雰囲気といった表層的なものだ。一方、スタイルはより個人単位やチーム単位での日常的な価値観や行動様式を指す。

働き方やキャリアが多様化している現代では、カルチャーだけでは弱いマッチングになってしまう。より深いレベルでのスタイル単位でのマッチングが非常に重要になってきている。
最近のZ世代の学生や新卒者は、自分のプロフィールにMBTI(性格診断)を必ず入れる傾向がある。これは自分の価値観やタイプを当たり前に表現し、コミュニケーションを取るための手段となっている。
この現象の背景には、社会が多様化していることがある。以前はもっと大雑把に分類されていたものが、より細かく多様になってきた。その中で自分のキャラクターやパターンを説明するためにMBTIのような枠組みが活用されている。
企業もこれと同様に、自分たちの価値観や「性格」を表現できるようにする必要がある。つまり、企業の「スタイル」を明確に打ち出すことが求められているのだ。
1. スペック依存症
「年収1000万円です」「フルリモートです」といったスペックだけでは勝ち切れない時代になっている。スペックに依存せず、自社の独自性を出していくことが重要だ。入口としてスペックを示すことは良いが、マッチングの最後の決め手や選ばれ方がスペックに依存するとミスマッチが起きやすくなる。
2. 社員不在の採用活動
採用で前に出るのがエース社員や社長だけになっていないだろうか。エンジニアから見る組織と、営業から見る組織はカルチャーは同じでも、スタイルは異なる。これを体感してもらうには、様々な社員に会ってもらう必要がある。
3. 給付者には刺さらない「良いことを言っている風」の表現
「社会貢献しています」「成長できます」「人がいいんです」といった抽象的な表現だけでは刺さらない。名詞だけでなく動詞で表現し、どうやって成長できるのか、どういう風にその価値観や行動規範が体現されているのかを具体的に示すことが重要だ。
4. すごすぎて給付者にはピンと来ない会社の魅力発信
ハイパフォーマーや経営者の話だけを聞いても、「自分とは違う」「自分にできるかな」と思われてしまう。バリエーションやグラデーションを示すことが大切で、すごいことだけでなく、違う側面も発信する必要がある。
5. 一人よがりで差が伝わらない会社説明
売り手市場になった今、これは大きな罠だ。企業が発信したいことではなく、就活生や転職を考えている人が欲しい情報をどう届けるかという視点が必要となる。
6. 優秀人材という幻想
「どんな人が欲しいですか?」と聞いたときに「優秀人材です」と答えて止まってしまうケースが多い。「あれもできる、これもできる」というスーパーマンのような人を採用ターゲットにしてしまいがちだが、もっと具体的にブレイクダウンする必要がある。
7. 昭和・平成型コミュニケーション
従来からあるナビサイトや合同説明会、人材紹介だけでなく、SNSや他のウェブメディアなど、新しいタッチポイントに合わせた形式や伝え方が求められている。それぞれのメディア特性に合わせた発信が必要だ。
企業についてオンライン上で知りたい情報についての調査では、上位から「1日の仕事の流れ」「社内の人間関係、職場の雰囲気」「福利厚生」となっている。

特に「1日の仕事の流れ」について、若い世代は一般的な流れではなく、「とある1日の流れ」という具体的なエピソードを知りたがっている。それはリアルが詰まっているからだ。会社が作った綺麗な「1日の流れ」を見せられても、「本当かな」「残業がない時の働き方じゃないか」と疑問を持たれてしまう。
また、福利厚生も自分の生活やライフスタイルにどう影響するかを知るための重要な指標として見られている。社内の人間関係や職場の雰囲気も、自分がどういう環境で働くのかを判断する上で重視されている情報だ。
スタイルマッチを実現するためには、4つの視点から企業のスタイルを捉える必要がある。これは表を縦に切ると「事業」と「組織」、横に切ると「会社」と「個人」になる。
1. 会社×事業の視点(企業理念・ビジョン)
2. 会社×組織の視点(組織文化・社風)
3. 個人×事業の視点(職種ごとの価値観)
4. 個人×組織の視点(チームや上司の行動様式)

この多角的な視点が重要で、どれから始めても良いが、一般的には会社よりの価値観の方が言語化しやすい傾向がある。個人側のスタイルを言語化することは、まだまだ伸びしろがある分野だ。
AI時代の就職活動・転職活動では、企業のB面(裏側)の情報がより重要になる。A面の情報(会社概要などのスペック情報)はAIツールで早く正確に知ることができるようになるが、B面の情報(カルチャーや風土といった働く場所の本当の姿)はAIではなかなかたどり着けない。
実際、最近の学生は「とりエン」(とりあえずエントリー)という言葉があるように、AIを活用して調べた基本情報だけでエントリーし、受かったところでさらに深く掘り下げるという行動をとるようになっている。
企業としては、このB面をいかに言語化して発信していくか、コンテンツにして発信していくかが、AI時代の就活・転職、そして採用において非常に重要になる。
対談コンテンツが効果的だ。対談を通じて普段働いている時の呼び方や言葉遣い、関係性が見えてくる。例えば、対談の冒頭から撮影していると、「お疲れ様です」と丁寧に挨拶するペアもあれば、「お疲れ」とカジュアルに挨拶するペアもあり、そこから関係性が垣間見える。
「言ってること」と「やってること」の間にあるものが「スタイル」だ。そのスタイルを言語化し、発信していくことで、自然と社員の紹介に近づいていく。会社紹介よりも社員紹介の方が重要視されている現在、このアプローチは効果的だろう。
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