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【ローカル局の再編が難しい理由】新興メディアと放送局の関係性
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2025年8月1日

昨今叫ばれる若者のテレビ離れ。そこに起こったフジテレビ問題。本当にテレビはオワコンなのか?勢いを増すTVerの存在。在京キー局各社は売上高好調のわけとは。水野泰志氏と塩野誠氏に岐路に立つ放送業界を徹底分析した。
テレビ局は銀行のように再編されるのか?プロが語る民放業界の深層
放送局が「かつての銀行のように再編される可能性があるか」という問いについて、メディア激動研究所代表の水野泰志氏と株式会社経営共創基盤の塩野誠氏に話を伺った。メディア環境が激変する中、民放業界の構造と課題、そして将来像について率直な見解が語られた。

Q. 放送局が銀行のように再編される可能性はあるのでしょうか?
現在、日本には127社の民放局があります。これらは大きく3つに分類できます。まず、民放キー局と呼ばれる東京の5局、次に準キー局と呼ばれる広域放送局(中京や関西など県をまたいで放送するテレビ局)、そして一県一局のローカル局です。

再編の可能性は、この分類によって大きく異なります。まず、キー局同士(TBSとフジテレビなど)の再編が起きる可能性は「ゼロ」です。一方、準キー局に関しては、今年になって日本テレビ系列の準キー4局(札幌テレビ、読売テレビ、中京テレビ、福岡放送)が持ち株会社を作り、再編をスタートしました。
しかし、ローカル局の再編は「待ったなし」の状況です。5年、10年のスパンすら待てないほど急を要します。
Q. ローカル局の現状はどうなっているのでしょうか?
全国47都道府県のうち、広域放送局以外の県が30以上ありますが、そのうち3局以下の県が13県あります。つまり、民放局のネットワークは全国を網羅していないのです。
例えば佐賀や徳島などは、隣県(福岡や大阪)からの電波が入るため、わざわざ局を作る意味がありません。また福井や秋田、青森は3局しかなく、これは4局が経営的に成り立たないからです。放送エリアのマーケティング規模が小さく、4局目に名乗りを上げる事業者がいないのです。
この状況は、民放局が全国ネットを志向していなかったことの裏返しでもあります。本当にNHKに対抗して全国ネットを作ろうと思えば、資本関係も含めた自前のテレビ局を全国に作っていたはずです。しかし、「田舎のことは田舎でやってくれ」という姿勢で、関東だけ良ければいいという考えがあったのです。
Q. ローカル局の経営状況は厳しいのでしょうか?
非常に厳しい状況です。2023年度の赤字局は20局に上ります。ローカル局は30数局しかないので、その多くが赤字という状況です。一方、準キー局やキー局が赤字になることは基本的にありません(フジテレビが赤字になったときは大騒ぎになるほどです)。

ローカル局には格差が厳然と存在しています。TBS系列や日テレ系列など古くから開局した局と、テレビ朝日系列など90年代以降に開局した「平成新局」とでは、経営基盤の強さに大きな差があります。同じ県内でも、フジ系や日テレ系は強い傾向にあります。
Q. 総務省はこの状況をどう見ているのでしょうか?
総務省は放送業界を所管する立場から、自分の配下にある放送業が傾くことを望んでいません。これまで「マスメディア集中排除原則」という規制をかけてきましたが、ローカル局の赤字が増えてきたため、この原則を段階的に緩和し続けています。
最初は合併や統合を認めていませんでしたが、今ではホールディングスにぶら下がるなど、ほぼ「なんでもあり」の状態です。しかし、制度として統合がOKになっているにもかかわらず、現実にはローカル局の統合や再編はまだ実現していません。
Q. 日本テレビ系列の再編はどのような意義があるのでしょうか?
日本テレビ系列の準キー4局(福岡放送、札幌テレビ、読売テレビ、中京テレビ)は「フィックス」という中間持ち株会社を作り、ネットワーク化を試みました。これは放送業界で初めての再編事例です。
重要なのは、この4局がいずれも黒字会社だということです。黒字プラス黒字は当然黒字になりますが、赤字局同士の再編は「赤字プラス赤字でより赤字になる」ため難しいのです。また、黒字会社が赤字会社を抱えることも、株主訴訟のリスクがあり容易ではありません。
テレビ朝日系列も九州地区や東北地区をまとめるといった再編を考えましたが、各局の独立志向が強く、うまくいきませんでした。また、ローカル局は地元資本(地方新聞社や地元企業)が強いため、キー局が簡単に支配することも難しいのです。
Q. キー局同士の統合は本当に可能性がないのでしょうか?
キー局は現状困っていないので、統合する必要性を感じていません。放送外収入でも収益を上げており、不動産業やコンテンツ管理、海外販売、著作権ビジネスなど様々な分野に進出しています。
テレビ朝日と日本テレビが統合するというのは、朝日新聞と読売新聞が統合するようなものです。これは現実的にはあり得ないでしょう。
Q. テレビの未来はどうなるのでしょうか?
放送というメディアがなくなることは考えにくいですが、影響力は激減し、メディアパワーは相対的に減少していくでしょう。これは新聞が10〜20年前から経験してきた道を、テレビも後追いしているといえます。
現状、民放各局は朝から晩まで情報バラエティを放送し、コメンテーターが話す番組が多いですが、これはコストパフォーマンスの良さからです。ドラマやドキュメンタリーは制作費がかかりますが、スタジオでコメンテーターに話してもらう番組は安く作れます。
報道に関しては、視聴者から見れば民放各局の情報バラエティ番組はエンターテイメント要素を含んでおり、NHKの報道一直線とは異なる形でニュースを提供しています。これがなくなると困るという声もあります。
Q. 新興メディアとの関係はどうなるでしょうか?
7月初めに、TVerとNHKプラスを共通のプラットフォームで視聴者に提供する研究報告が出されました。現在、TVerは民放しか見られず、NHKはNHKプラスでしか見られませんが、これを一つのプラットフォームにまとめ、ローカル局のコンテンツも含めて全部見られるようにしようという試みです。

TVerの利用者数は右肩上がりで、5年後にはテレビをリアルタイムで見る人よりもTVerで見る人の方が多くなる可能性があります。この共通プラットフォームが実現すれば、地方の人は中央のテレビを全部見ることができ、中央の人も全国のローカル番組を見ることができるようになります。
この取り組みがビジネスとしての放送にプラスに働くことが期待されますが、課題も多く残っています。技術的な問題や関係者の意識の問題もあり、実現までには時間がかかるでしょう。