PIVOT TALK BUSINESS
【岐路に立つ放送業界 現状徹底分析】本当にテレビはオワコンなのか?
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2025年8月1日

昨今叫ばれる若者のテレビ離れ。そこに起こったフジテレビ問題。本当にテレビはオワコンなのか?勢いを増すTVerの存在。在京キー局各社は売上高好調のわけとは。水野泰志氏と塩野誠氏に岐路に立つ放送業界を徹底分析した。 <ゲスト> 水野泰志|メディア激動研究所 代表 大学卒業後、中日新聞社に入社。東京新聞...
テレビはいつまで生き残れる? 元テレビマンと経営コンサルの大激論!
放送業界の未来が問われている。ネット配信サービスの台頭、視聴者の変化、そして広告主の選択肢の多様化。こうした環境変化の中で、テレビ局はどのように生き残っていくのか。PIVOTが元中日新聞社の水野泰志氏と経営共創基盤の塩野誠氏を招き、テレビの現状と未来について徹底討論した。

Q. テレビ局の経営状況はどうなっているのか?
実は民放各社の業績は依然として堅調だ。フジメディアホールディングスや日本テレビホールディングスは4000億から5000億円規模の売上高を維持し、日本テレビでは500億円前後の営業利益を生み出している。ただし、これは「放送局」としてというより「メディア企業」としての数字である。

各社の収益構造を詳しく見ると、テレビ放送本業の比率は低下している。例えばフジメディアホールディングスでは、放送収入は全体の約3割に過ぎず、残りの7割は不動産事業などの放送外収入が占めている。「フジメディア」と名前がついていても、実態は「ホテル好調」と言われるほど不動産事業への依存度が高い。
ただし局によってその比率は異なり、放送外収入の割合が高い局と低い局の差が大きい。数十年前は放送収入が8割から9割を占めていたことを考えると、明らかに各局は放送以外の収益の柱を育てる方向へシフトしている。
Q. テレビ局は経営危機なのか?
テレビ局の将来について水野氏は「放送収入が全体に占める割合が少ない方が企業として生き残りやすい」と指摘する。これは放送関連のメディア収入が確実に減少していくという見立てに基づいている。
一方、塩野氏は「放送と放送外収入が一つの企業体にあることが本当に意味があるのか」という株式市場からの問いかけを紹介しつつ、企業の選択肢を示す。例えば放送外で得たキャッシュフローをコンテンツ強化や海外事業に投資する、あるいは不動産部門を売却して得た資金をコンテンツ関連のM&Aに使うといった戦略も可能だという。
ただし塩野氏によれば、現状では各局とも「ダラダラしている」状態で、将来に向けた明確な戦略転換は見られないという。水野氏も「不動産部門を切り離せば経営が立ち行かなくなる局もある」と指摘し、経営者たちの意識は放送以外の収入で生き延びる方向にシフトしていると分析している。
Q. NHKと民放の違いは何か?
日本の放送制度は「公共放送のNHKと民放が併存する公民二元体制」という世界的に珍しい形態をとっている。欧州は公共放送中心で民放の影響力は限定的、アメリカは逆に民放中心で公共放送の存在感は小さい。日本では両者が競合する独特の構造になっている。

経営基盤の違いも大きい。NHKは受信料という安定収入があるため、視聴率に左右されずコンテンツ制作ができる。一方、民放は広告収入に依存しているため、視聴者と広告主の両方を満足させる必要がある。
水野氏はNHKについて「受信料が相対的に減っても赤字になることはない。収入の規模に合わせて支出を減らせばいいだけ」と説明。「NHKが消えるとか赤字になるという議論は空論」と断言している。
Q. テレビ離れは本当に起きているのか?
「テレビ離れ」という言葉がよく使われるが、これは「テレビというプラットフォームから離れている」という意味であり、「テレビが制作する番組から離れている」わけではない。その証拠に、民放各社が共同運営するネット配信サービス「TVer」は急速に成長し、現在約8500万ダウンロードを記録している。

これについて「テレビをやめてTVerだけにしたらいいのでは」という問いに対し、水野氏は「広告主がどうなるかという問題がある」と指摘。現状ではTVerの広告収入はテレビの広告収入に比べて「桁が違う」ため、すぐに置き換えることは難しいという。
また塩野氏は、テレビとネット配信の根本的な違いとして「有限性」を挙げる。テレビは放送枠が限られているため、多くの広告主が同じ枠に出稿したいと思えば価格が上昇する。一方、ネット配信は無限に枠を作れるため価格が上がりにくい構造にある。
Q. フジテレビ問題で企業がCM出稿を取りやめたことの影響は?
フジテレビの問題により、多くの企業がCM出稿を見合わせるという状況が発生した。これを塩野氏は「壮大な社会実験」と表現。企業がテレビCMを出さなくても、デジタルコンテンツ向けの広告の方が費用対効果が良いと判断すれば、従来のテレビ広告モデルは崩壊する可能性がある。
水野氏も「広告主がどういう判断をするかが重要」と指摘。これまで電通などの広告代理店が間に入り、視聴率をメルクマールにマーケティングを行ってきた構造が今後も続くかどうかが、放送業界の将来を左右すると述べている。
Q. 放送局の再編は起きるのか?
キー局(在京テレビ局)の再編可能性について水野氏は「ゼロ」と断言。一方で、ローカル局の再編は「待ったなし」とする。理由として、ローカル局間には既に大きな格差が存在し、赤字が常態化している局も多いためだ。
塩野氏は、テレビ局内部の世代間ギャップも指摘する。40代後半から50代の層は「波を立てずにこのまま最後まで逃げ切れたら」と考えている一方、20代から30代の若い世代は「個人のスキルを磨いて、場合によっては他業界に転職しよう」という意識を持っているという。
テレビ業界の未来に対して塩野氏は「経営としては全然変わらないだろう」と悲観的な見方を示し、「これまで楽しかったし、これからもそういう楽しい感じでだんだん衰退していってなくなっていく」と表現した。