
東アジアの若者が結婚しない理由
結婚したくない?東アジアの若者たちが語る「婚姻事情」の本音
結婚に対する考え方は国によって異なるのだろうか?日本・韓国・中国・台湾の若者たちが集まり、各国の結婚事情について語り合った。経済的な理由から結婚をためらう人がいる一方で、理想のパートナー像や結婚に対する価値観も変化している。第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストを交えて、東アジアの結婚観と少子化の現状について議論した。

Q. 東アジアの少子化・結婚事情の現状は?
東アジアの少子化問題は深刻さを増している。日本も少子化が叫ばれているが、韓国はさらに深刻な状況だ。一方で、データを見ると韓国は9年ぶりに出生率がやや増加し、婚姻件数も大幅に増加している。中国では出生数が52万人増えたものの、婚姻件数は急減している(前年比マイナス20.5%)。
この背景には、コロナショックからの回復過程の違いや、若年の雇用環境が影響している可能性がある。特に中国では若年失業率が10%後半に達しており、結婚したいと思える環境にないことが一因として考えられる。
韓国では、2024年の調査によると青少年の「必ず結婚したい」との回答は約3割にとどまっており、2012年の7割超えから急激に減少している。
Q. 結婚式にはどれくらいお金がかかる?
韓国では結婚式に3000万円近くかかるというデータもある。日本では結婚式にお金がかかっても、招待客からのご祝儀でバランスを取ることができるが、韓国では招待状を送ったあと誰が来るかわからない仕組みになっている。

「韓国は一旦案内状を送ると、誰が来るか当日までわからないんです。50人が来るか100人が来るかもわからない。でも式場を借りるときにはもう金額が決まっているので、日本とは文化的に少し違います」と韓国出身の参加者は語る。
中国でも結婚にはかなりのコストがかかる。特に家と車を買わないと結婚が成り立たない文化があり、さらに女性側の親に渡す「礼金」も必要だ。
「新卒年収は150万円くらいなのに、お嫁さんの親にあげる礼金は少なくても600万円くらい。私の周りで一番高かった礼金は2000万円くらいでした」と中国出身の参加者は説明する。
台湾でも礼金の習慣は残っているが、金額は数十万円程度で、なしでもよいという場合もある。
Q. 結婚したくない理由は?
「結婚をしたくない理由は、今を楽しんでいるからです。今のライフワークバランスがちょうどよい状態で、恋人ができたら崩れてしまう可能性が心配です。やはり今が一番いいですね。精神的にも経済的にも、結婚することは今ではないと考えています」
「結婚はあくまで一種の経済制度です。みんなが当たり前のようにしていますが、私は小さい頃からずっと『なぜみんな結婚しているの?』とわからなかったんです。また、式や手続きなど様々な面倒な点があります。好きな人ができたら一緒にいれば満足できますし、結婚して男性が子供を欲しいと言ったら抵抗できなくなる怖さもあります」

「私は結婚しなくてもいい派です。現在のパートナーとの生活に満足しているので、結婚してもしなくても現状はあまり変わりません。お互い仕事も頑張っていて、結婚するメリットを話し合ったときに、『家を買う際にローンを組みやすい』という理由くらいしか出てきませんでした。周りからも『しなくてもいいじゃない』という声が多いので、あまりプレッシャーはありません」
Q. 結婚と不動産の関係は?
結婚と不動産の関係は各国で興味深い違いがある。韓国では家を借りるという文化があまりなく、購入するのが一般的であるため、結婚前から経済的負担が大きい。
中国では上海や北京などの大都市では、その地域の戸籍を持つ人しか購入できない不動産が多くあるため、地元出身でない人が不動産を買いたい場合は結婚して戸籍を取得するという戦略も存在する。

「中国のマッチングアプリでは出身地検索ができて、北京出身の人は『勝ち組』と見られることもあります」と参加者は説明する。
台湾でも「結婚すればローンが組みやすいから考えようかな」という実利的な理由で結婚を検討するケースがある。
また中国では、世帯で投資できる不動産の数に制限があるため、以前は「偽装離婚」して不動産を多く購入するという現象もあったという。
Q. 各国の「玉の輿」事情は?
日本では女性が「玉の輿に乗る」相手として医師などが有名だが、台湾では半導体技術者との結婚が「玉の輿」と言われるようになっている。
「台湾ではIT系やエンジニアの年収が高く、TMSCなどの企業は家族も含めて保険を安く付けられるなどの福利厚生も充実しています。ただ、最近は女性が自立して自分で稼いだお金で好きなものを買いたいという考え方も増えています」
韓国では医師や法律家、大学教授のほか、サムスンやカカオなどの大手企業に勤める人が人気だという。特に大手企業の福利厚生の充実ぶりは注目に値する。
「韓国の大手企業では、子供が生まれると大学院まで全て支援する制度があります。子供が留学しても学費を支援する会社もあります」
中国では公務員が最も人気があるという。「国家公務員は安定していて失業しないので、給料が低くても安心できる職業です」
Q. 専業主婦志向は強い?
専業主婦志向についても国によって差がある。韓国では「結婚したら必ず専業主婦になりたい、仕事はしたくない」という考えの人もいるが、一方で「専業主婦になりたい人は一人も見たことがない」と語る参加者もいた。
中国では「専業主婦はほとんど見なくなった」状態だという。子育てについても、両親や義父母に預けて自分は働くというのが一般的な形態となっている。
台湾でも女性の自立志向が強まっており、経済的に自立して自分の望む生活を送りたいという考えが広がっている。
これらの状況から、結婚や子育てに関する価値観は多様化しており、国や個人によって大きく異なることがわかる。経済的要因だけでなく、ライフスタイルの変化も結婚観に影響を与えている。
