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東京エレクトロンは世界一を獲れるのか
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2025年7月18日

技術の発展でさらなる進化を遂げる激動の半導体業界。2030年には1兆ドル、2050年には5兆ドル市場とも言われている中で東京エレクトロンの勝ち筋はあるのか。東京エレクトロン社長の河合利樹氏に聞いた。 <出演> 河合利樹|東京エレクトロン社長・CEO 1986年東京エレクトロン入社。Tokyo El...
東京エレクトロン河合社長が語る半導体市場の未来と成長戦略
半導体市場は今後も拡大を続け、2030年には1兆ドル、2050年には5兆ドルに達すると予測されている。その中心にいる東京エレクトロンの河合利樹社長に、業界の将来性と同社の成長戦略について聞いた。

Q. 社長就任から10年、この期間をどう振り返りますか?
この10年間で半導体が新たな成長フェーズに入ったことを強く感じています。半導体の用途が「物」から「物とこと」の両方へと広がっていきました。
トランジスタが誕生した1947年から、半導体はまずPCセントリック(パソコン中心)の時代を経て、モバイルセントリック(スマートフォン中心)の時代に移行しました。今までの半導体需要は主に物に対するものでしたが、IoTによってすべてのものが繋がり、クラウドコンピューティングやエッジコンピューティングの発展により、世界中にデータが蓄積されています。
そして今、AIを活用して産業全体が活性化する時代に入っています。半導体の用途が「物」から「物とこと」の二つの領域に広がり、特に「こと」の領域が出現したことで市場が一気に拡大しました。
Q. この10年の急成長は予想通りでしたか?
成長の度合いは予想以上に大きかったと感じています。市場の広がりが想定を超えて加速しました。
Q. グローバル企業のCEOとして、どのような日常を送っていますか?
事業部長時代の方が海外出張は多く長かったです。当時は毎週のように出張していました。1週間の中でアジアを点々としたり、欧州やアメリカに行ったりと、常に移動していました。
現在は、顧客企業のCEOとのコミュニケーションを大切にしています。技術革新やマーケット動向、次の技術革新に必要なことなどについて意見交換しています。また、投資家との対話も重視しています。投資家からの質問や期待を理解することが企業成長に不可欠だと考えています。
アナリストとのコミュニケーションも大事にしています。質問に答えるだけでなく、その背後にある期待や懸念を把握することが重要です。さらに、18カ国にある拠点を訪問したり、サプライヤーとも積極的に対話したりしています。
Q. グローバル企業のCEOとして必要な資質は何だと思いますか?
体力は重要な要素です。私は中学時代に水泳をしていて、大学でも体育会でゴルフをやっていたので、基礎体力があります。
ただ、体力だけでなく、楽しいことを考えることも大切です。世の中のためになることや、お客様が喜ぶことを考え、そのために何をすべきかを常に意識しています。趣味のゴルフを楽しんだり、お酒を飲まない日はトレーニングをしたりして体調を維持しています。
Q. 半導体市場の将来性をどう見ていますか?
半導体市場の成長ポテンシャルは非常に大きいと考えています。現在、IoT、クラウドコンピューティング、エッジコンピューティング、インダストリー4.0といった「第1の波」から、AI、AR/VR、自動運転などの「第2の波」に入っています。
2023年に半導体市場は初めて6000億ドルを超えました。トランジスタが誕生してから77年かかって到達した市場規模が、2030年には1兆ドルに拡大すると予測されています。

さらに「第3の波」として、量子コンピューティングや6G・7G通信技術、インダストリー5.0、ロボティクスなどが登場するでしょう。業界団体の予測によると、2050年には市場規模が5兆ドルに達する可能性があります。
Q. 半導体産業は社会にどのような価値をもたらしますか?
現代社会はVUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)の時代と言われています。コロナのようなパンデミックもあり、どのような状況でも経済活動が止まらない「強くしなやかな社会」の構築が求められています。
そのために重要なのが「デジタル化」と「脱炭素化」の両立です。具体的には「グリーン・バイ・デジタル」と「グリーン・オブ・デジタル」という2つの概念があります。

「グリーン・バイ・デジタル」はデジタル技術によって社会の効率性を改善するもので、Web会議、スマートファクトリー、スマートグリッドなどが該当します。「グリーン・オブ・デジタル」はAIサーバーやデータセンターの低消費電力化を進めるもので、デジタル技術自体の環境負荷を軽減します。
これらを支えるのが半導体技術の革新であり、より高速で大容量、高信頼性、低消費電力の半導体が求められています。半導体産業に携わることで、社会の共有価値を追求できることはとても意義深いことだと感じています。
Q. 東京エレクトロンの中期計画(2027年度の売上高3兆円、営業利益率35%、ROE30%)は達成可能ですか?
達成可能だと確信しています。AIサーバーを中心に市場は大きく拡大していくでしょう。分析によると、半導体装置市場も2030年には2024年比で約2倍になると予測されています。
達成の鍵は、当社の強みをしっかり認識し、コアコンピタンスを磨き続けることです。東京エレクトロンのコアコンピタンスは、半導体製造の4つの主要工程(塗布・現像、膜の除去、膜の形成、洗浄)すべてに装置を持つ唯一の企業であることです。
特に微細化のための露光工程に使われるEUV露光装置用の塗布・現像装置では100%のシェアを持っています。また、世界最大の出荷実績(今年中にインストールベースは10万台を超える見込み)と2万5000件という業界最大の特許ポートフォリオも強みです。先端分野では当社の装置を通らない半導体はないと言っても過言ではありません。
これらの強みをさらに伸ばすため、今後5年間で1.5兆円の研究開発投資、7000億円以上の設備投資、1万人規模の新規採用を計画しています。
Q. 中国市場と中国メーカーの台頭についてどう考えていますか?
中国は重要な市場ですが、規制の状況も考慮する必要があります。東京エレクトロンも経済産業省の規制に対応しながら事業を展開しています。
中国では国策として自国の装置メーカーの製品を優先的に使う動きがあります。現在、当社の中国市場のシェアは約35%ですが、汎用領域では中国メーカーがシェアを伸ばしていく可能性があります。
当社としては、技術が活かされ継続的な技術革新が期待できる市場拡大領域に戦略の中心を置いています。つまり、最先端の領域に注力するという方針です。中国における当社のシェアは若干下がるかもしれませんが、グローバルで見れば中国以外の市場の方が大きく、AIサーバーなど高度な技術が求められる領域で当社のシェアを高めていくことができると確信しています。
Q. グローバル経営がうまくいっている理由は何ですか?
当社の原動力は主に3つあります。1つ目は、長年培ってきた技術力です。世界をリードする技術革新力を持ち続けることが最も重要です。

2つ目は、実績に基づくお客様からの信頼関係です。お客様は巨額の投資をしており、その課題を共有して解決することが将来の付加価値につながります。最先端のお客様のクリーンルームで評価ができるのもリーディングカンパニーならではの強みです。
3つ目は、価値創出の源泉である社員とそのチャレンジ精神です。「やる気重視経営」を推進しており、能力×やる気がパフォーマンスにつながると考えています。
グローバル企業のトップとして重要なのは、世界一を目指す野心(アンビション)、信頼(トラスト)、協力(コラボレーション)です。私自身の能力の限界を会社の成長の限界にしたくないという思いで経営に取り組んでいます。