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エネルギー政策を評価。説得力があるのはどの党か?
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2025年7月17日

参院選の重要論点の一つが「エネルギー政策」。各党はどんな主張をしているのか?どの党の公約に説得力があるのか?国際環境経済研究所理事の竹内純子氏に聞いた。 <ゲスト> 竹内純子|国際環境経済研究所理事 専門はエネルギー・温暖化政策。慶應義塾大学法学部を卒業後、東京電力で環境部門を担当。福島原発事故を...
エネルギー政策の今後とは?グリーン政策への逆風と参院選公約を解説
グリーン政策に対する逆風が世界的に強まる中、日本のエネルギー政策はどこへ向かうのか。国際環境経済研究所理事の竹内純子氏に聞いた。

Q. 現在、環境・エネルギー政策をめぐる世界の潮流はどう変化していますか?
グリーン政策に対して現在3つの大きな逆風が吹いています。1つ目は欧州の経済状況の悪化です。欧州はグリーンの旗印を下ろすことはありませんが、グリーンへの投資や補助金が遅れる状況が生じています。
2つ目はトランプ政権の誕生です。「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル(OBBA)」が成立し、バイデン政権下で進められていたインフレ抑制法による再生可能エネルギーやEVへの補助金が大幅に縮小されました。太陽光・風力については今後1年以内に運転開始や着工するものに限定され、EVについては2025年9月までの補助金となりました。ただし原子力や化石燃料からのCO2を地中に埋めるCCUSなどへの補助は拡充されているため、全てがネガティブな方向に進んでいるわけではありません。
3つ目は金融機関・投資家の動向です。パリ協定締結後、多くの機関投資家がESG投資に取り組んできましたが、最近は脱退が相次いでいます。日本の銀行も6行中5行がESG投資関連の連盟から脱退しました。これはESG投資の定義が不明確であることや、投資リターンの観点からの問題があるためです。ESG投資の根本が否定されたわけではないですが、一度立ち止まって考え直す段階に来ています。
Q. SDGsや気候変動に対する取り組みも過熱から落ち着きを見せていますね
SDGsは2030年が目標年ですが、今はその目標年が近づき、掲げたことを達成できないことが明らかになりつつある時期です。このような大きな目標を掲げることには意義がありますが、少し目標が大きすぎたところもあります。ただ、社会課題を可視化して「こういう問題がある」と示したことは良かったと思います。
国際会議で使われる流行語も変わってきました。ウクライナ危機の前は「クライメートチェンジ」ばかりでしたが、危機後は「エネルギーセキュリティ」が主流になりました。そして今は「アフォーダビリティ(価格の手頃さ)」が重視されるようになっています。安定供給があり、手に入りやすい価格で、環境にも配慮するというバランスに落ち着きつつあります。
以前お話しした通り、エネルギーの基本は「安定供給」「経済性」「環境性」のバランスです。どこに重心を置くかが問題ですが、気候変動第一主義だった状況が今は落ち着きつつあります。
Q. 参院選における各党のエネルギー政策の違いはどこにありますか?
各党の公約を見ると、いくつかの評価軸があります。まず、エネルギーを経済政策や国の安全保障として議論しているかという切り口です。立憲民主党や共産党は「気候変動が大変だから日本のエネルギー政策を再エネ100%にする」と主張していますが、日本だけが再エネ100%にしても温暖化は止まりません。国民の命を守るためのエネルギー政策という視点が重要です。

次に、原子力という手段を認めるかどうかが大きな分岐点です。気候変動対応やデジタル化による電力需要増加を考えれば、原子力から逃げた議論はできません。
そして時間軸の問題もあります。例えば、「次世代原子炉を支援します」という政策は早くても10年後、20年後の話です。核融合ともなれば2050年以降の話になります。現在のエネルギー政策を議論しているのか、将来の話をしているのか、見極める必要があります。
Q. 自民党と立憲民主党のエネルギー政策の違いは?
自民党は温室効果ガスについて「2030年までに2013年比で46%削減」という現行の目標を維持し、原発の再稼働も推進、次世代革新炉の建設・新設も掲げています。ただし、「原子力発電所を運営する事業者が廃止した場合、その立て替えとして建てる次世代革新炉を推進する」としており、若干腰が引けている印象があります。

一方、立憲民主党は現行の温室効果ガス削減目標では不十分として、より野心的な目標を掲げています。また「2050年までに再エネ100%、省エネ60%」を目指し、原発の新増設は認めないとしています。
Q. 立憲民主党の「2050年までに再エネ100%」は現実的ですか?
一般の方にとって2050年は相当先に感じられるかもしれませんが、エネルギーの世界では25年後に過ぎません。今建設した発電所は2050年も現役ですし、原子力発電所なら立地対策まで含めると、今着手しても2050年までに完成しないこともあります。
興味深いのは、立憲民主党の前代表である野田佳彦氏が首相時代、2012年の夏に大飯原発の再稼働を決断したことです。当時は原子力に対する恐怖が今以上に強かった時期でしたが、電力確保の重要性から再稼働に踏み切りました。その野田氏が所属する政党が現在このような政策を掲げていることには違和感があります。
実際、以前立憲民主党の元代表である泉健太氏とパネルディスカッションでご一緒した際、彼は「脱原発はスローガンとしての脱原発です」と発言しました。しかし、そのスローガンのために原子力分野への人材流入が減り、日本が持っていた技術力が弱まったという事実があります。「スローガンとして言っただけだから罪はない」というわけにはいきません。
Q. 維新や国民民主党の政策はどうですか?
国民民主党は「2030年代に再エネ比率40%以上」という目標を掲げ、原発の早期再稼働や次世代炉推進、安全基準と地元同意の重視を主張しています。また、再エネ賦課金の廃止も掲げています。
この再エネ比率40%以上という目標は、現在約23%なので、頑張れば達成可能な範囲です。ただし、日本は平坦な土地が少ないため、洋上風力発電のような土地制約を受けない再エネの開発が主流になっていきます。洋上風力発電は計画から運転開始まで10年ほどかかるので、2030年代という時期を考えると、すでに計画中のプロジェクトがどれだけ運転を開始できるかがポイントになります。
再エネ賦課金については、国民民主党が最も早く注目した点として評価できます。ただし、賦課金を停止した場合、再エネ事業者への支払いは契約上必要なので、税金で補填する必要があります。スペインでは再エネ賦課金の廃止後、多数の訴訟が起き、結局は税金から支払うことになりました。国民からすれば「電気代で払うか税金で払うかの違い」になってしまう恐れもあります。
Q. 参政党は「パリ協定離脱」を掲げていますが、これはどう評価しますか?
参政党は科学的な議論をして気候変動対策を考えようという姿勢は評価できる部分もあります。しかし、パリ協定離脱のメリットはあまりありません。パリ協定は掲げた目標の達成が法的義務ではなく、各国が自主的に取り組む枠組みです。

離脱すれば国際的な枠組みから外れることになり、国際社会からの信頼を失うリスクがあります。米国でもトランプ政権はパリ協定から離脱しましたが、気候変動枠組条約からは離脱していません。将来民主党政権が戻った時のことを考えると、日本はパリ協定に残り続けた方が良いでしょう。
ただ、パリ協定に基づく途上国支援の資金について、費用対効果や使われ方をきちんと検証しようという議論につながるのであれば、その問題提起には一定の理解はできます。
Q. 小型原発の可能性についてはどうでしょうか?
小型原発は研究開発が進んでおり、アメリカではスタートアップ企業が建設認可を得た例もあります。技術的には安全性も高まっています。しかし日本では、小型であっても「原発」となると地域の理解を得るのに非常に時間がかかります。時間はコストです。
日本では歴史的に、立地に理解が得られる場所に大型の原発を建設してきました。小型原発を導入する場合も、地域の理解をどう得ていくかが課題です。
Q. エネルギー政策から見ると、どの政党が現実的な政策を掲げていますか?
現実性を考えると、自民党に最も近いのは国民民主党と日本維新の会です。公明党は与党ではありますが、支持層への配慮からか原子力について前向きな発言は少ない状況です。
エネルギー政策で近いということは、国をどう守るかという点で近いということです。エネルギー政策が大きく違う政党間では連立も組みにくいでしょう。
科学的思考ができるかどうかも重要です。例えば、ALPS処理水の問題で日本の足を引っ張った政党もあります。そういった政党は福島に対する風評被害を拡大させた点について、きちんと総括や反省をすべきです。
Q. 中東情勢の緊迫化はエネルギー安全保障にどう影響しますか?
ウクライナ危機、ガザ情勢、イラン・イスラエルの緊張など、世界の安全保障環境は不安定化しています。特にイランによるホルムズ海峡の封鎖というリスクは完全に排除できません。追い詰められた国が何をするかは予測困難です。日本も第二次世界大戦前に石油禁輸措置を受け、無謀な戦争に踏み切った歴史があります。
仮にホルムズ海峡が封鎖される可能性が高まるだけでも、市場は反応し石油価格が上昇します。それに引きずられて天然ガス価格も上昇する可能性が高く、日本は大きなダメージを受けるでしょう。
日本の石油はホルムズ海峡への依存度が85%程度と非常に高いです。石油には半年分以上の備蓄がありますが、天然ガスは2週間分しかありません。資源の供給が途絶えるというより、価格高騰により買えなくなるリスクが高いです。
エネルギー政策は本質的にリスク管理であり、資源外交を含めたネットワーク構築が極めて重要です。
Q. 今後のエネルギー政策を考える上で注目すべきポイントは?
重要なのは次の3点です。1つ目は、エネルギーを経済政策や国の安全保障として議論しているかという切り口。2つ目は、原子力などの手段の現実性。3つ目は時間軸です。
政策を見る際は、足元の話をしているのか、将来のビジョンを語っているのかを見極める必要があります。単に「キラキラした未来がある」と言うだけなら、それは宗教と同じです。現実的な道筋を示せる政策かどうかが重要です。