PIVOT TALK BUSINESS
9タイプ別 離職する心理
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2025年7月16日

3年以内に3分の1が離職する若手社員たち。経営心理士の藤田耕司氏は、経営×心理学という全く新たな方向からこの離職問題にアプローチしている。部下のどんな心理に気を配るべきなのか?その解決策を聞いた。 <ゲスト> 藤田耕司|経営心理士 監査法人トーマツから独立後、高い成果を残す経営者やビジネスマンの共...
「離職防止」のプロが語る人がやめない職場の共通点
3年以内に3分の1の若手社員が離職する一方、「仕事がいくらきつくても楽しかった」という職場も本当にある。「経営×心理学」という全く新たな方向から離職問題にアプローチしている経営心理士の藤田耕司氏に、その解決策を聞いた。

Q. 人はなぜ会社をやめるのでしょうか?
人が会社をやめる根本的な理由は、4つの欲求が満たされていないからです。この4つとは、「生存欲求」「関係欲求」「成長欲求」「公欲」です。
生存欲求は安心安全に生きていきたいという欲求で、現代では特に給料と健全な労働環境に関わります。関係欲求は良好な人間関係を築き、周囲から認められたいという欲求です。成長欲求は自分の可能性を広げていきたいという欲求で、これが満たされないと「この会社にいても成長できない」と感じてしまいます。最後の好欲は、人が喜んでくれることが自分も嬉しいという欲求です。
これらの欲求のうち、一つでも決定的に満たされないとやめる可能性が高くなります。給料が極端に低い、人間関係が著しく悪い、成長の機会がない、といった状況が続くと、人は離職を決意します。

Q. 「分かっているのに対策できない」のはなぜですか?
多くの企業や管理職は、人がやめる理由をぼんやりと理解していても、整理されたフレームワークとして把握できていません。4つの欲求を網羅的に満たす必要があるという意識が薄いのです。
また、上司の側は部下の不満に気づけないケースが多いです。部下は上司に対して本音の不満を言いづらいものです。上司自身が「素晴らしいマネジメントをしている」と思っていても、実際には部下が離職を考えているというギャップが生じます。
さらに、年代やモチベーションによって離職理由は変わります。社員を一括りにして「こうすればやめない」と単純に考えるのではなく、個々の状況に合わせた対応が必要なのです。
Q. 離職を防ぐために企業はどんな対策をとるべきですか?
まず、社員を9つのタイプに分けて理解することが効果的です。20代・30〜40代・50代以上の3つの年代グループに分け、さらにそれぞれの中で「やる気がある」「普通」「やる気がない」の3つに分類します。例えば20代でやる気がある「ホープ」タイプ、30〜40代でやる気がある「エリート」タイプなど、計9タイプに分けられます。

特に重要なのは、どのタイプの社員に対しても「上司の感情的な対応」は離職につながるということです。上司が部下を怒鳴ったり、きつく当たったりすると、心が折れてやめてしまいます。また「忙しい自慢」も危険です。上司が「昨日も終電までやった」「土日も出勤した」などと話すと、部下は「将来の自分もそうなるのか」と未来に絶望してやめることがあります。
社員は自分の未来を上司に見る傾向があります。そのため、社内に「憧れの上司」が一人でもいるかどうかが離職率に大きく影響します。一人もいない場合、離職率は非常に高くなります。
Q. 「1on1」で部下の本音を引き出すにはどうすればいいですか?
1on1の勝負は、実は普段の接し方で決まっています。日頃から部下の話を聞かない、気持ちを理解しようとしない態度を取っていると、1on1の場だけで「何か言いたいことある?」と聞いても、本音は出てきません。
効果的な1on1のためには「グリモミ」という4つの質問テクニックが有効です。
1. 具体化の質問:「それって具体的にどういうこと?」
2. 理由の質問:「なぜそう思ったの?」「なぜそうしたの?」
3. 目的の質問:「どういう目的でそれをやろうとしているの?」
4. 未来の質問:「今後どうしていきたいの?」

これらの質問を駆使すると、一つの話題を深く掘り下げることができ、より本音に迫れます。また、相槌を打ちながら丁寧に話を聞き、「私もそういう経験があるから分かる」と共感を示すことも大切です。
最後に、部下から出てきた要望に対して「全部叶えられるわけではないけれど、できることはやってみる」と行動し、次回のミーティングで報告する姿勢を見せることで、「この人は話が分かる」と信頼関係が築けます。
Q. 中間管理職の「エリート」がやめる理由は何ですか?
30〜40代のやる気があるエリートタイプの社員は、他の企業から引く手あまたの存在です。彼らはキャリアアップのために転職するケースが多く、特に現在の会社に不満がなくても、圧倒的に高い給料を提示されれば転職を検討します。
また、エリートタイプは成長欲求が強いため、「この会社でこれ以上成長できない」と感じると離職を考えます。彼らは会社の売上や利益の多くを生み出す花形社員であることが多く、中小企業などではナンバー2のポジションにいることもあります。そのため、彼らの離職は会社にとって致命的なダメージになることもあります。
Q. 離職を告げられた社員を引き止めることはできますか?
離職の決意をした社員でも、上司の対応次第で思いとどまるケースは少なくありません。重要なのは、「やめる理由」の本質を掘り下げることです。
例えば「独立したい」と言う社員に対して、「独立が目的ではなく、独立して何をするかが目的だよね。その目的を聞かせてくれ」と尋ねます。「こういうビジネスをやってみたい」「こういうスキルを身につけたい」という本当の目的が分かれば、「それなら独立しなくても、うちで新規事業部を立ち上げて事業部長をやれば叶うのでは?」と提案できるかもしれません。
また、離職する社員に対して「またいつでも戻っておいで」と声をかけることも重要です。実際に転職先や独立がうまくいかなかった場合に戻ってくるケースは少なくありません。良好な関係を保ったまま送り出すことで、将来的な「出戻り」の可能性も開けます。
Q. 離職を防ぐために人事評価はどうあるべきですか?
多くの日本企業では人事評価がうまくいっていません。その主な理由は評価項目が多すぎることです。理想的な評価項目は5個以内で、会社の理念とリンクさせるべきです。
理念通りの行動を社員に取ってもらうためには、理念通りの人事評価制度が必要です。離職防止の観点からも、部下が離職するような職場を作ってしまう上司の評価を下げる仕組みが必要です。
人材市場の動向によって社員の離職心理も変わります。現在は「売り手市場」であり、若い人たちは「ここをやめても他で働ける」と知っているため、少しでも不満があればやめる傾向があります。そのような状況でも社員を引き止めるためには、マネジメント層の意識改革と評価制度の見直しが欠かせません。
Q. 「ブラック」な環境でも離職しない状況はありますか?
驚くべきことに、非常に忙しく肉体的にはハードな環境でも、人間関係が良ければ離職率は下がります。藤田氏自身も以前の会社では「朝まで仕事することもあったが、全然辛くなかった」と振り返っています。メンバーが最高だったため、「このメンバーで仕事できるなら朝までやっても構わない」と感じていたのです。

肉体的には疲弊していても、精神的には前向きな状態を保てるのは、良好な人間関係があるからです。反対に、労働時間が短くても人間関係が悪い職場では「静かな退職」が起こりやすくなります。つまり、最低限の仕事だけして帰るといった状態になります。
このことから、職場の人間関係、特に上司との関係が離職防止において決定的に重要であることが分かります。