
氷河期世代の逆襲:原点回帰、社会適合、世代承継
氷河期世代の「逆襲」はここからが本番 - 令和版"長屋"で新たなコミュニティを
競争の厳しさと景気の悪さで苦しんだ氷河期世代。今、彼らの逆襲の時が来ている。氷河期世代が抱える「5K(金、キャリア、介護、子育て、孤独)」の悩みをどう乗り越え、新たな時代を切り開いていくのか。ブルー・マーリン・パートナーズ代表の山口揚平氏に聞いた。

Q. 氷河期世代とはどのような世代でしょうか?
1970年代生まれの現在45歳から55歳ぐらいの人たちが中心です。団塊ジュニア世代とも呼ばれています。この世代は約2000万人おり、1学年あたり約200万人います。現在の出生数が70万人を切っていることを考えると、当時は1学年の人数が3倍以上いたことになります。
単純に言えば競争社会だったと思います。競争こそ全てという価値観の中で育ち、勝ち抜くことが重要視されていました。習い事も学校も受験も全てがそういう雰囲気の中にありました。
さらに、景気も悪かったため、少ないパイを奪い合うという二重の意味で競争が激化していました。
Q. 氷河期世代の中で「余裕層」はどのくらいいるのでしょうか?
余裕層は約5%程度しかいません。1000万円以上の年収がある人たち、当時のいわゆる「いい大学」に入って、ちゃんと勤め上げてきた人たち、首都圏に住んでいて、家族がいる可能性がある人たちを考えると、さらに少なくなります。そういう意味では、氷河期世代が苦しいというのは、客観的に見れば妥当な面もあります。
ただし、苦しいかどうかは主観的なものでもあります。外から見てかわいそうだと思われても、私たちが10代の頃を考えると、バブル時代の記憶はあまりありません。子供時代の原体験が幸せの土台になるものです。例えば、朝ご飯にご飯があって、漬物があって、魚が1匹焼いてあって、味噌汁があれば幸せだったと考えれば、何を基準にするかで幸せの感じ方は変わってきます。

Q. 氷河期世代が現在抱えている悩みとは?
「5K」と呼ばれる5つの大きな悩みがあります。
1. 金(お金の問題)
2. キャリア(AIなどのディープテックとどう向き合うか)
3. 介護(親の介護問題)
4. 子育て(子育ての負担)
5. 孤独(家庭があっても感じる孤独感、未婚率の高さ)
特に注目すべきは、50歳の未婚率が25%(4人に1人)という高さです。結婚していない、あるいはできていないという状況が多く見られます。
これらの問題をチャレンジとして捉えるか、真っ暗なものとして捉えるかで、受け止め方は変わってきます。
Q. 氷河期世代が「逆襲」するためにはどうすればいいのでしょうか?
逆襲、あるいはより幸せに過ごすための3つのステップがあります。

1. 原点回帰:童心に帰る
まず落ち着くために、自分のコンフォートゾーン(心が穏やかな場所)に戻ることが大切です。10歳頃の自分に戻り、当時楽しかったものを思い出してみましょう。ガンダム、セーラームーン、ドラゴンクエストなど、10歳の時に夢中になったものに再び触れることで、心の落ち着きを取り戻せます。
人間の魂が大きく揺さぶられるのは、だいたい10歳くらいの時です。それ以降は合理主義になっていきます。10歳くらいの時、特に小学校3年生から6年生くらいまでにはまったものにもう一度はまってみることで、本当の自分の原点や幸せがどこにあるかが分かるでしょう。
2. 社会適合:現代社会に合わせる
社会適合には3つの要素があります。
1. 清潔感と透明感を整える
清潔感は分かりやすいですが、透明感とは「不正がない」「隠していない」という印象です。自分の主義主張がある人(プリンシパルがある人)は、多少の癖があっても許される傾向があります。また、会計的にも税理的にも怪しいことをしない「透明感」が重要です。
2. 目線と距離感を間違えない
目線は「横から目線」を心がけましょう。上から目線になりがちですが、パートナーシップという意味で横からの目線が大事です。距離感も重要で、相手との関係に応じて10段階くらいで調整すると良いでしょう。
3. 社会の価値観とテクノロジーの進化にキャッチアップする
テクノロジーの進化と価値観の変化という2つの軸があります。テクノロジーのキャッチアップは比較的分かりやすいですが、価値観の変化は言語化されにくく、なかなか気づきにくいものです。
これらに対応するには、様々なコミュニティに所属することが効果的です。パラレルコミュニティやマルチコミュニティと呼ばれる複数のコミュニティに属することで、テクノロジーの進化にも価値観の変化にも適合しやすくなります。

3. 世代承継:時代のバトンを受け取る
日本の人口構成は二つの山があります。団塊世代が一つ目の山で、その後少し減少し、私たち氷河期世代(団塊ジュニア世代)が二つ目の山になっています。
もうあと5年もすれば団塊世代も平均寿命を迎える時期になり、社会の主役は必然的に氷河期世代に移ります。政治家も目ざとく、そのうち氷河期世代に目を向けてくるでしょう。「自分たちは氷河期なんだ」「購買力もあるんだ」という自信を持つことが大切です。
Q. 氷河期世代のシングル問題にはどう対応すべきでしょうか?
シングル化は先進国共通の流れであり、必然的なものです。東アジアを含めてほとんどの先進国で同様の傾向が見られます。この流れを前提に社会を作っていく必要があります。
ここで注目したいのが「令和版長屋」の構想です。江戸時代の長屋文化はシェアリングエコノミーの原型と言えるものでした。当時の江戸では、男性の5割、女性の4割近くが未婚でした。離婚も今よりも簡単に行われていました。
現代版の「長屋」のような共同生活の場を作ることで、シングルの人たちが互いに支え合える環境を作れます。例えば、一緒に銭湯に行き、その後に一杯引っかけて帰るといった生活スタイルが考えられます。
特に氷河期世代は、オンラインだけでは満足できない世代です。原点がリアルなコミュニケーションにあるため、実際に会って話すことの価値を知っています。

Q. コミュニケーションが苦手な人はどうすればいいでしょうか?
引きこもりや人見知りの問題もありますが、年齢を重ねるにつれて改善される面もあります。20代30代はコミュニケーションが苦手でも、年を取ってくると脳の構造も変わり、恥や外面を気にする本能が弱まり、むしろ積極的に話せるようになる傾向があります。
また、氷河期世代は競争社会で鍛えられてきたため、基本的なスキルや能力(スペック)は高いです。基礎的な学力や知識は詰め込まれているので、やらせれば十分にできる能力を持っています。ただ、そうした能力を発揮する場がなかっただけです。
大田区や品川区などでは、シングルの男女が集まって生活できる住宅が作られ始めています。また、イギリスでは「孤独問題担当国務大臣」が設置され、コミュニケーションが苦手な人たちが集まれる場所作りが進められています。特に男性は日曜大工のような目的を持った活動、女性はカウンセリングルームのような場で集まりやすい傾向があるようです。

こうした「令和版長屋」のような場所は、単に孤独を解消するだけでなく、健康面でもメリットがあります。50代のシングルにとって、一人で食事の準備をするのは大変です。コンビニ食に頼り続けることも健康上好ましくありません。共同生活の中で食事を共にすることで、健康的な生活を送れます。
また、孤独死の問題も解決できます。一人でワンルームで亡くなり、誰にも発見されないという状況は避けたいものです。コミュニティがあれば、何かあった時に気づいてもらえます。
