
なぜ決められないのか?意思決定の秘訣
意思決定が苦手な人必見!心理学に基づく「決められる人」になるための方法
情報があふれる現代社会では、選択肢が多すぎて決断できない人が増えている。日常生活からビジネスまで、あらゆる場面で求められる「意思決定」のスキルを磨くにはどうすればいいのか?臨床心理士の中島美鈴さんに聞いた。

Q. なぜ意思決定について本を書こうと思ったのですか?
時間管理や計画立てについて支援してきた経験から、多くの人が計画の前段階でつまずいていることに気づきました。タスクを小さく分解する際に「どんな風になりたいのか」「どこまで達成したらゴールなのか」といった点がぼんやりしている人が多いのです。
また、やり方を決めていない人も多く見受けられました。時間管理の前に、何をどのやり方でやるかをきちんと決めていないから時間管理もできないのだと考え、意思決定を支援する本を書くことにしました。
Q. 現代人が意思決定に苦労する理由は何でしょうか?
現代社会では、自由に決められる環境があり、インターネットやAIによって情報も手軽に得られるようになりました。しかし、情報が溢れすぎて選択肢が多くなりすぎると、人間は決められなくなるという特性があります。
また、不確実性も増しています。「ずっと同じ仕事を続けるかわからない」「将来は海外に住むかもしれない」など、自由である一方で不確実性が大きいため決められなくなっています。
さらに、私たちは「よく考えて決めた方がいい決断ができる」と思いすぎている傾向があります。本来、人間は直感で決めることで合理的な判断ができることも多いのですが、そうした直感を活用しなくなっているのも一因です。
Q. 決められない人のタイプには、どのようなものがありますか?
決められない人には5つのタイプがあります:

1. モヤモヤのまま放置タイプ - 決めたいことが曖昧なまま「そのうち決まるかな」と放置する人。問題があっても自分が解決に動きたくなく、誰かがやってくれるのを待っています。これが続くと心の「メモリ」を常に使ってしまいます。
2. 情報の海に溺れて混乱タイプ - 情報を集めすぎて疲れ果ててしまう人。例えば、カメラを買おうとして価格サイトやAmazon、楽天など様々なサイトを見て、価格変動に翻弄されるうちに決められなくなります。
3. 自分の価値基準が曖昧タイプ - 情報を整理して選択肢を作っても選べない人。自分の好みがわからなかったり、多数の条件のどれを優先すべきか判断できません。価格なのか、納期なのか、機能性なのかが整理できていません。
4. 決断を先延ばし・保留タイプ - 締切がなければ決断を遅らせる人。ギリギリまで悩まないと損した気分になる、決断したら次のタスクに向き合わなければならないから嫌だ、といった理由で先延ばしにします。
5. 即決しすぎて失敗タイプ - 直感だけで決めてしまう人。好き嫌いだけで判断したり、限定特典に釣られてすぐ決めてしまいます。じっくり考えて失敗した経験から「もうパッと決めよう」と極端になっている場合もあります。
Q. 意思決定を上手に行うためのフレームワークはありますか?
心理学の知見に基づいた「もじせか」というフレームワークを活用しましょう。これは7つのステップを4つに簡略化したものです:

1. 「も」問題の明確化 - 何が問題なのか、自分が解決したいことは何かを明確にします。例えば「洗濯機の調子が悪い→買い替えが必要」と問題を具体化し、自分が主体的に解決することを決めます。
2. 「じ」情報収集 - 必要な情報を集めます。ただし情報収集の海に溺れないよう、適切な量を心がけましょう。
3. 「せ」選択肢の作成 - 収集した情報を整理して、4〜5個(最大でも10個以内)の選択肢に絞ります。比較検討しやすくするために重要なステップです。
4. 「か」価値判断 - 選択肢を比較し、自分の価値観に基づいて判断します。選ぶ基準を明確にし、優先順位をつけることが大切です。
Q. 情報収集で気をつけるべきポイントは何ですか?
情報収集の前に「大枠」と「詳細」を分けて考えることが重要です。
大枠とは、変えると全体に影響を及ぼす要因です。例えば洗濯機購入なら予算やサイズが該当します。旅行なら予算や日程、目的地などが大枠になります。これらは絶対に譲れない条件です。
詳細とは、変更しやすく全体への影響が少ないものです。洗濯機なら自動洗剤投入機能や色・形など、ポイント還元率や送料、納期なども詳細に当たります。

多くの人は大枠を決める前に詳細から考えてしまいがちですが、これでは効率が悪くなります。例えば旅行でマイルを使いたいという詳細から考え始めると、予算や日程といった大枠が決まっていないため計画が立てにくくなります。
情報収集する際は、以下の点に注意しましょう:
検索結果は上から5個までなど、数を限定する
検索時間を決めておく(お風呂の時間内だけなど)
実店舗で店員さんに相談するのも有効
Q. このフレームワークを子供の進路決定に応用するとどうなりますか?
子供の進路決定にも「もじせか」を応用できます:
1. 問題の明確化(も) - 単に「進路希望調査を出す」という受け身ではなく、「将来どんな生活がしたいか」という観点から考えます。例えば「海外で活躍したい」という希望があれば、そこを掘り下げていきます。
2. 情報収集(じ) - 具体的な希望(例:発展途上国の医療に貢献したい)に基づいて情報を集めます。WHO、ボランティア団体、必要な学部や資格など、ルートを調べます。
3. 選択肢の作成(せ) - 集めた情報を整理し、選択肢を作ります。医療職として入るルート、政治的な立場から入るルート、公衆衛生分野から入るルートなど、具体的な選択肢に絞ります。
4. 価値判断(か) - 子供の根本的な価値観(誰かに感謝されたいのか、自分の力を試したいのかなど)を掘り下げ、それに合った選択をします。
このように、単に「どの学校に行くか」ではなく、将来の生き方から逆算して進路を考えることで、より納得のいく決断ができます。
Q. 日常生活での時間管理と意思決定はどう関係していますか?
時間管理を効率化するためには、意思決定の負担を減らすことが大切です。
朝は意思決定をなるべく減らし、ルーチン化することをお勧めします。起きてからの一連の行動を「一筆書き」のように繋げて無駄なく動けるようにしましょう。
特に夕方以降は脳が疲れているため、「活性化エネルギー」という概念を意識します。何かを始める時に必要な「よっこらしょ」というエネルギーを効率的に使うことが重要です。
例えば、帰宅時はまだエネルギーが高いうちにすぐお風呂に入る習慣を作りましょう。お風呂で体が温まると血管が広がって筋肉もほぐれ、体が「元気になった」と勘違いします。この状態を利用して、お風呂という一つのタスクを終えた後、まだ腰を下ろさずに夕食の準備を始めるという流れを作ると効率的です。
このように、意思決定と時間管理を連動させることで、日常生活をよりスムーズに進めることができます。
