
【元駐米大使が分析】トランプはなぜ人々を惹きつけるのか
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2025年7月5日
「レジェンド超解説」第3回のテーマはドナルド・トランプ。「暴君」と呼ばれながらも熱狂的なファンを生み出し続けるトランプの、コミュニケーション術やリーダーとしての資質を分析する <ゲスト> 杉山晋輔(早稲田大学特命教授) レイザーラモンRG(レイザーラモン/お笑いタレント) https://x.co...
親密さと大胆さを併せ持つ "ディール王" トランプの素顔
「個別に会うと優しくてチャーミング」元駐米大使が語るトランプの意外な人間性

Q. トランプ前大統領の人間性について、実際に会った印象はどうだったのでしょうか?
個別に対面するとテレビの印象とは異なり、非常に優しくチャーミングな人物だった。公の場での発言や映像に映るトランプとは別の一面がある。
個人的に会うと肩を叩いたり手を握ったりするスキンシップをとり、緊張をほぐしてくれる気遣いがあった。
大統領という立場でありながら、予定よりも長く時間を取って話を聞いてくれるなど、人当たりの良さを感じた。
こうした魅力が熱狂的な支持者を生み出す一因になっていると思う。
Q. 初めてトランプ氏を政治家として認識したのはいつ頃ですか?
約8年半前、2016年の大統領選挙の頃だ。当時は誰もが知るヒラリー・クリントン氏が勝つと思われていたが、トランプ氏が勝利した。
それまでトランプ氏は不動産王やテレビの司会者として有名だったが、政治の世界では全く無名だった。ワシントンの政界では誰も知らない人物だった。

外務省の幹部として、トランプ氏についての情報収集を始めたが、政治家としての資料はほとんどなかった。
テレビ出演や公開情報から、どのような主張や性格を持つ人物かを分析する必要があった。
Q. 安倍元首相が就任前のトランプ氏に会いに行った経緯を教えてください。
トランプ氏が当選した直後、多くの国が様子見の姿勢をとる中、安倍首相は「自分が会いに行く」と決断した。
当時、トランプ氏は政治家としての経験がなく、どのような発言をするか予測できないため、外務省を含め多くの関係者が反対した。
リスクが高すぎると考えたからだ。
しかし安倍首相は自己責任で会いに行くと言い、実行した。結果的にこれが功を奏した。
トランプ氏は後に「東洋の大国の首脳が最初に自分のところに来てくれた」「自分も外交ができることを示してくれた」と評価していた。
これが日米関係の強固な信頼関係の原点となった。
Q. トランプ氏の経歴が彼の政治手法にどう影響していると思いますか?
ビジネスマンとして培った「ディール(取引)」の感覚が彼の政治手法の本質となっている。
バイデン大統領が上院議員30年以上、副大統領8年という政治経験を持ち、常識的な政治家であるのに対し、
トランプ氏は政治経験がなく、実業家としてのキャリアしかなかった。

細かい実務的な数字や詳細な事実関係を把握するのは得意ではないが、何かを「ディール」する時の勘の良さ、勝負感覚に優れている。
これが彼のリーダーシップの特徴だ。彼は常に「ディール」という言葉を使い、「交渉」や「協議」といった外交用語はほとんど使わない。
Q. トランプ氏の数字の扱い方に特徴はありますか?
数字に対して非常に大雑把だ。例えば、日本の対米貿易黒字は約680〜700億ドル程度なのに、
トランプ氏は「1000億ドル」「2000億ドル」と言うことがあった。
私たち役人は正確な数字にこだわるが、安倍首相もトランプ氏と会談の際に、その場で数字の訂正はしなかった。
代わりに食事の時などカジュアルな場で「ちょっと数字が違う」と伝えると、トランプ氏は「とにかく大きな額だということだ」と言って先に進む。
ある意味でこれはリーダーシップの一つかもしれない。
細かい数字を正確に扱うのは実務担当者の仕事で、リーダーは言おうとするメッセージの本質、方向性を示すことが重要だという考え方だ。
Q. トランプ氏の政治信条や一貫した理念はあるのでしょうか?
「ディール」という交渉術以外に強い信条や哲学、倫理観は特に感じられない。
「アメリカ・ファースト」という主張以外に確固たる政治理念を持っている人ではないと思う。現状対応型の政治家だ。
ある時言ったことと別の時に言うことが矛盾していても気にしない。
しかし、「アメリカを再び強くしたい」「他国に全てを負担させるのではなく、自分たちでやるべきことは自分たちでやってほしい」という姿勢は一貫している。
これは実はトランプ個人だけでなく、現在のアメリカ全体に流れている空気なのではないか。
Q. トランプ氏が2期目を終えた後、どのような進路を選ぶと思いますか?
本人に聞かないと分からないが、トランプ氏は明るく、もじもじとしない、スパッとした性格だ。
4年間の2期目を終えたら、潔く政界から退くのではないかと思う。
実はアメリカの政治リーダーには、そうした人が多い。任期を終えると田舎に行って教会の牧師をしたり、私生活を楽しんだりして、政界から完全に引退する。
日本を含め多くの国では退任後も影響力を保とうとするが、アメリカ人の潔さは特別なものがある。トランプ氏も例外ではないかもしれない。
Q. トランプ氏について最も印象的なエピソードを教えてください。
訪日した際の大相撲観戦のエピソードが印象的だ。
第1次トランプ政権時代、国賓として来日し、今の天皇皇后両陛下が即位されて初めての国賓だった。

大相撲観戦の準備は大変だった。
特に土俵に上がる際、アメリカ人は普段靴を脱がない文化なので、大統領に靴を脱いでもらうことに周囲のスタッフは神経をすり減らした。
しかしトランプ氏本人は全く気にせず、イベントは大成功し、彼は日本文化に非常に感銘を受けていた。
こうした経験も含め、トランプ氏は本当に日本が好きだと思う。選挙中に「日本を愛している」と言うのは本心だろう。
ただし、だからといって特別扱いはせず、貿易などの交渉では厳しい姿勢を取る。これは日本や日本人が嫌いだからではなく、彼のビジネス感覚から来るものだ。
