
肝臓を壊さないお酒の飲み方/毎日飲酒 9割は脂肪肝/がんリスク高/赤くなる人は危険/ロックで飲むな【尾形 哲】
「お酒と肝臓」Q&A!毎日飲む人の9割は脂肪肝、そして「ウコンが肝臓に悪い」という衝撃の事実
日本人とお酒の関係は切っても切れないもの。でも、お酒が体に与える影響や適切な飲み方について、私たちはどれだけ正しい知識を持っているでしょうか? 今回は「肝臓とお酒」の関係性について、肝臓外科医の尾形哲先生の解説をもとに、新しい常識をQ&A形式でご紹介します。

Q. ハイボールは糖質ゼロだからダイエット中でも安心して飲める?
ハイボールは確かに糖質はゼロですが、カロリーはかなり高いです。アルコール自体に多くのエネルギーが含まれているためです。
アルコール1gあたり7.1kcalものカロリーがあります。これは砂糖(1gあたり4kcal)よりも高く、脂質(1gあたり9kcal)に近いエネルギー量です。例えば、ワイン2杯(12%、250ml)を飲むと約170kcalになり、これはおにぎり1個分以上のカロリーになります。
居酒屋で食事をしながらお酒を飲むと、実質「4食目」を摂取しているようなものです。ダイエット中の人は、お酒を飲む機会を半分に減らすだけでも体重が落ちていくでしょう。
Q. 健康を保てるお酒の量はどのくらい?
健康を維持できるアルコール摂取量は、1日20g以下とされています。これは、5%のビール(500ml)1本、日本酒1合、ストロング系チューハイ(9%、350ml)1缶程度に相当します。
医学的な基準では、男性は1日50g以上、女性は40g以上の摂取が続くと「アルコール性肝障害」と診断されます。肝硬変になった人の調査では、平均して1日100gのアルコールを男性は40年、女性は30年飲み続けていたというデータがあります。
Q. 毎日少しずつ飲む方が良い?それとも休肝日を作るべき?
肝臓の専門医が推奨するのは「48時間ルール」です。肝臓は連続攻撃に弱く、アルコールによるダメージから回復するのに約48時間かかります。

例えば、ワイン1本を開けた翌日は飲まないようにすると、肝臓が長持ちします。細胞分裂の最中に再び攻撃を受けると、繊維を出す細胞が活性化して肝硬変に進行しやすくなるためです。
同じ量を飲むにしても、連日飲むよりも1日おきに飲む方が肝臓への負担は少なくなります。
Q. 毎日お酒を飲んでいると脂肪肝になる?
毎日お酒を飲んでいる人の約9割は脂肪肝だと言われています。これはアルコールの薬理作用によるものです。
アルコールには、肝臓内での脂肪合成を高める効果と、脂肪をエネルギーに変換する機能(ベータ酸化)をブロックする二重の作用があります。そのため、毎日20g以下の「少量」を飲んでいても、継続すると脂肪肝になるリスクが高まります。
Q. お酒を飲む時は何を一緒に食べるべき?
お酒を飲む際は、糖質が低く、脂肪が少なく、タンパク質が多い食品を選ぶと良いでしょう。
アルコールは肝臓での脂肪合成を増加させ、脂肪の利用を減少させるため、何を一緒に食べるかが重要です。居酒屋などで飲む際は、低糖質・低脂肪・高タンパクの食品を選ぶことで、肝臓へのダメージを最小限に抑えることができます。
Q. 赤くなる人とならない人では、お酒による健康リスクが違う?
赤くなる人は、アルデヒド脱水素酵素の活性が低いため、毒性のあるアルデヒドが体内に残りやすくなります。そのため、特に食道がんのリスクが高まります。

赤くなる人がお酒を飲み続けると、お酒を飲まない人と比べて食道がんのリスクが6〜10倍になると言われています。さらに、ロックでお酒を飲むと、アルデヒドが咽頭や食道に高濃度で残るため、より危険です。
赤くならない人でも、寝る前にお酒(特にロック)を飲むことは避け、飲む際は水で希釈するか、水分をたくさん摂ることが大切です。
Q. ウコンは二日酔い防止に効果的?
肝臓の専門医はウコンを推奨していません。意外なことに、ウコンはサプリメントや栄養補助食品の中で最も肝障害を起こした食材とされています。
ウコンには鉄分が多く含まれており、肝炎のある人が摂取すると症状が悪化する恐れがあります。また、ウコンが肝臓に良いという科学的な根拠を示す論文はなく、ウコンを原料とした医薬品もありません。
二日酔いになった場合は、薬で吐き気などの症状を抑えることはできますが、アルコールの分解を早める効果的な方法はなく、時間が経つのを待つしかありません。
Q. 筋トレ後のビールは「ご褒美」になる?
筋トレ直後にアルコールを摂取すると、筋肉の合成率が約30%減少することが研究で示されています。「筋トレ後のビールはうまい」と感じても、筋肉づくりの効果を最大限に得るためには、トレーニング後しばらくはアルコールを避けるべきです。
Q. アルコール依存症の治療法は?
アルコール依存症の治療薬として、現在4種類が保険適用されています。特に2019年に登場した「セリンクロ」は画期的な薬です。
従来の治療では「断酒」が基本でしたが、現在は「減酒」を目指す方向に変わってきています。セリンクロは、アルコールの味や飲酒行為自体は変えずに、体内のモルヒネ様受容体をブロックして、飲酒による快感を感じにくくする薬です。
この薬を服用した人は、平均して飲酒量が57%減少したというデータがあります。毎日服用する必要はなく、「今日は飲まないぞ」と決めた日だけ服用することも可能です。肝臓の専門医に相談すれば処方してもらえます。
Q. お酒は百薬の長?
かつて「酒は百薬の長」と言われていましたが、現代の医学ではその説は否定されています。アルコールの摂取量に応じて疾患リスクは確実に増加します。

ただし、尾形先生は「0にして生きるのはなかなか難しい」と述べています。大切なのは、長く楽しめるように、ダメージを最小限に抑える飲み方を知ることです。自分に合ったお酒の飲み方を身につければ、20代の頃の肝臓を取り戻すことも可能かもしれません。
肝臓は再生能力が高い臓器です。正しく付き合えば、長く健康を保ちながらお酒を楽しむことができるでしょう。
