PIVOT TALK BUSINESS
ダルトン取締役候補が語る「フジテレビ再建・メディア大再編」
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2025年6月18日

6月25日に株主総会を迎えるフジメディア・ホールディングス。フジ側の提案が通る公算大だが、今の計画で実際に再建できるのか?今後、メディア業界はどう再編されるのか?ダルトン取締役候補でワーナーミュージック・ジャパン会長の北谷賢司氏に聞いた。 <ゲスト> 北谷賢司|ワーナーミュージック・ジャパン会長/...
北谷会長に聞く!「フジテレビ再建への道筋」~権力と金脈が交差するメディア業界の未来図
フジテレビはどうすれば再建できるのか?

Q. 北谷さんは今回、ダルトン側の取締役候補に名前を連ねました。ダルトンはなぜ北谷さんに声をかけたのでしょうか?
元々アメリカで放送ジャーナリズムを勉強し、放送法について博士論文を書くなど、放送にまつわることを45年間プロとして取り組んできた。日米を中心に、欧州の放送会社で取締役を務めた時期もある。そういった知見を活かして、フジメディアホールディングスに正しい提言ができればと考え、ダルトンからの要請を受けた。
Q. ジェイミン・ローゼンワールドCEOとはどういう関係だったのですか?
10年以上前、ソニーの元社員が生体認証技術を持って独立した際、その方のファンディングにジェイミンが投資したことがきっかけで知り合った。ジェイミンは日本国内でメディアエンタメ産業に投資をしたいと考えており、私の意見を聞きたいということだった。
Q. 取締役候補のリストには、北尾さんや近藤さんも含まれていますが、皆さんは一枚岩なのでしょうか?
全く一枚岩ではない。私とスタートエンターテイメントの福田社長、テレビ解説者で元4サイト編集長の堤さん、ソニーピクチャーズエンターテイメントでホーム部長や沖縄先端技術大学院のホーム部長をした松島弁護士の4名は、私が教授を務める金沢工業大学の虎ノ門大学院MBA課程の客員教授陣である。私たちはダルトンから「メディアのことを理解している社外取締役候補をまとめてほしい」という要請を受けて参加した。
一方、その他の方々はダルトン東京オフィスのパートナーなどが自身のネットワークで集めた人たちだ。最後の最後で北尾さんが登場し、近藤さんもセットで入るという条件だったと聞いた。我々はそのことについて事前に説明を受けていなかった。
フジテレビの経営改革はどうあるべきか?
Q. 清水時期社長が出した改革アクションプランについてはどう評価していますか?
基本的な方針として記載されているものは合理性があり、間違っているとは思わない。ただ、具体的に方策が記載されていないのが問題だ。

フジテレビという会社とその周辺にある子会社がどのようにしたら経営が改善できるのかという具体策が示されていない。マクロの話はあるがマイクロの話がない。時期社長を目指している方であれば、より具体的な経営改善策を開示すべきだ。
Q. 具体的にはどのような改革が必要だと考えていますか?
まず編成強化のために、現在かなりの枠を占めているバラエティの数を絞り込み、本来フジテレビが非常に強かったドラマシリーズを再構築すべきだ。ドラマシリーズはIPとして長期間保持する価値のある資産だが、バラエティは一過性のものが多く、再放送時の価値がドラマとは全く異なる。
2年以上前、フジテレビは早期退職者を募り、重要なテレビドラマのプロデューサーを務められる能力を持った人材がかなり流出したと言われている。これがドラマ制作の弱体化につながったと思われる。脚本家へのアクセスや視聴率を高く取れるタレントの事務所との強い関係を持つプロデューサーが必要だが、そういった人材を呼び戻す方法を具体的に示すべきだ。
Q. スポーツコンテンツの活用についてはどうですか?
スポーツライツの購入はしているが、グループ全体でどうお金に変えていくかという仕組みができていない。例えばF1の放映権を購入しているのであれば、様々な層に分けて活用し、新規事業も開発できるはずだが、その部分においてフジテレビのスポーツ部門は非常に消極的だ。
ヤクルト球団も株主であるが、日本テレビとジャイアンツのように十分に活用できていない。また、事業局の単独判断でコンサートのリスク出資をしているが、テレビの事業とうまく連動できていないのが問題だ。
Q. 動画配信サービスについてはどうでしょうか?
今後の成長基軸として考えられるのはブロードバンドのOTTサービスだ。FODというサービスが存在するが、現状ではNetflix、Amazon、UNEXTと比べると再開程度の有料視聴者しかいない。これを急速に拡大すると言っているが、具体的にどうやって拡大するのかの実行案が何も示されていない。
このようなサービスを強化するにはキラーコンテンツが必要で、それを購入するには相応の経済的負担が必要になる。FODを強化するために具体的にどのライツを追いかけ、それを地上波のフジテレビやBSフジでも利用するといった多層的な展開の具体案がなければ理解できない。
フジテレビの構造改革
Q. 不動産事業については分離すべきでしょうか?
考え方は2つある。日本テレビやTBSのように不動産を所有して経営の保全をする方法もある。ただ現状は、不動産で収益を上げている部分とメディア事業で赤字になっている部分の差があまりにも激しい。産経ビルやグランビスタがいくら稼いでも、その利益は全てメディア事業の穴埋めに使われている。
社員の意識にも影響があるだろう。一生懸命働いて利益を上げている産経ビルの社員からすれば、自分たちが稼いだお金が全部フジテレビグループの補填に使われているとなれば不満も出るだろう。この場合は分離するのが正しいと思う。
ダルトンは昔からこの分離をかなり強く進言していたはずだが、それに対して回答がなかったと聞いている。そこが今回の株主提案の根源にあると思う。ところが北尾さんたちが入ってきて、いつの間にか日枝さんへの個人攻撃が中心になり、話の基軸がずれてしまった。
Q. 子会社の経営改善も必要ですか?
様々な子会社においても経営改善が必要だ。例えば音楽出版会社のフジパシフィックミュージックや、コンテンツ会社のポニーキャニオンがある。類似企業と比較すると、利益率が低かったり、従業員数が多かったりする問題がある。

これらの会社は「カタログ会社」と言って、IPを資産としてそれで収益を立てる業態だが、本来赤字になったり利益率が低いということは考えられない業種だ。子会社を全部レビューして、明らかにアンダーパフォームしている会社は経営改善を図るべきだ。
Q. 広告収入の回復は見込めますか?
即時に広告収入が一気に戻ってくることは考えづらい。フジテレビは歴史的にスポット広告が強く、タイムスポンサーが少なかった。これが今回スポンサーが一斉に抜けた理由の一つだと思う。タイムスポンサーとテレビ局の間には長年の信頼関係があり、危機の際も支えてくれる可能性が高いが、フジテレビの場合はそういったタイムスポンサーの存在が希薄だった。
スポンサーの信用を回復し、社会的にもフジテレビへの出稿が問題ない行為だと認識されるようにしなければ、広告代理店もスポットを購入しづらい。そのためのスポンサーアピール、代理店アピールについて具体的な改善策が示されていない。
メディア業界の未来と課題
Q. 地上波広告モデルの将来性についてはどう見ていますか?
日本は特殊なマーケットで、大手広告代理店が既存メディアを下支えしている。代理店が営業保証をして、ある程度の収益がテレビ局に回るように操作しているのが日本モデルだ。
一方、海外ではデータ主義で、どれだけの視聴者を獲得しているかだけでなく、どのデモグラフィックがどの番組をどのタイミングで見て、どれだけ滞留しているかまで分析した上でメディアの価値を判断している。日本でも広告の50%はデジタルになってきており、スポンサーからより詳細なデータを求められるようになるだろう。

フジテレビに出稿を止めた企業の中には、「フジテレビのスポットを止めたことで売上に影響がなかった」と発言している企業もある。これはテレビ出稿が購買に直結しないことを逆に証明してしまった。このネガティブスパイラルを止めるには、デジタルメディアと地上波を組み合わせた新しい媒体商品を開発し、積極的に営業すべきだ。
Q. 日本のメディア再編はどう進むべきだと思いますか?
監督官庁である総務省がもっと明確な示唆をすべきだ。このまま放置すれば地上波はどんどん弱体化し、特に地方局の経営は厳しくなる。キー局の経営が悪化すれば、キー局から保証されている利益が回ってこなくなり、地方局の経営はさらに厳しくなる。
アメリカでは、特定の市場で複数の放送局が存在していても経営が統合されている例がある。例えばハワイのホノルルではローカルニュースはNBC系もABC系も同じものが流れている。ローカル局がそれぞれ個別にニュース制作すると非常にコストがかかるからだ。
日本もメディアの集中排除原則を見直し、統合を認めないと全てのローカル局の経営維持は難しい。日本テレビが系列局を統合したホールディングスを作ったのは、営業拠点の効率化やバックオフィスの統合によるコスト削減が目的だろう。