PIVOT TALK BUSINESS
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2025年5月25日

救急車の利用が年々増加する中、現場は限界に達しつつある。救急車の有料化により問題は解決できるのか?有料化した国や病院ではどんな効果があったのか?国際医療福祉大学の志賀隆氏と産業医の大室正志氏に聞いた。 <ゲスト> 志賀隆|国際医療福祉大学教授 2001年千葉大学卒業。米国メイヨー・クリニックで研修...
高齢化が進む日本で、救急車の出動件数は年々増加している。その中で「タクシー代わり」に救急車を使う人もいるという実態もあり、救急車の有料化が議論されている。三重県松阪市では「軽症」と判断された場合に7700円を徴収する取り組みも始まった。救急車は本当に有料化すべきなのか?医療経済の観点から考察する。

救急車の出動件数は年々増加している。令和5年中の救急出動件数は763万7967件、搬送人員は663万9959人に達している。この数字は、日本人の約20人に1人が年間で救急車に乗っていることを意味する。
増加の主な理由は高齢化だ。高齢者は体調不良になったとき、若い人なら自力で病院に行けるケースでも、動けないために救急車を呼ばざるを得ないことが多い。また、家族構成の変化や核家族化により、体調不良時に頼れる人がいない高齢者も増えている。
消防隊員の出動に対する救急車の割合は10倍から20倍にも達する。現在は火災よりも救急搬送の方が圧倒的に多く、消防署長も救命士出身の人が増えているほどだ。
救急車が無料であることには、利点と欠点がある。利点は、経済状況に関わらず誰でもプロのケアを受けられることだ。特に夜間や休日に病院に電話しても断られるケースが多い中、119番を鳴らせば病院に連れて行ってもらえる。
一方で欠点もある。「カジュアル利用」や「タクシー代わり」として使われることがある。実際、受診予約があるからという理由で救急車を呼ぶ人や、酔って動けなくなった学生が救急車を呼ぶケースもある。このような不適切な利用により、本当に緊急を要する人への対応が遅れるリスクがある。
救急搬送時間も年々延びており、これは死亡率の上昇にもつながりかねない。ポスターなどで啓発活動を行っているが、効果は限定的だ。
アメリカのニューヨークでは、2023年の救急車料金は基礎的な救命技術(BLS)で1,385ドル、高度な救命技術(ALS)で1,680ドルとなっている。日本円に換算すると15万円から20万円程度だ。アメリカでは保険でカバーされる部分もあり、実際の支払いは後日請求される形となっている。
イギリスやアイルランド、台湾では日本と同様に原則無料だが、イギリスでは電話での症状聴取によって緊急度をカテゴリー分けし、優先順位をつける取り組みを始めている。
オーストラリアでは有料制を採用しており、医療経済学の観点からも参考になる制度を持っている。例えば、救急隊員が現場で「この人は救急車ではなく自力で病院に行った方がいい」と判断できる権限が与えられている国もある。

三重県松阪市では2023年6月から、救急車で運ばれても入院に至らなかった「軽症」と判断された場合に7700円を徴収する取り組みを始めた。茨城県でも同様の制度が導入されている。
この制度では、以下のケースは支払い対象外となる:
- 紹介状を持っている人
- 入院した人(重症だった)
- 生活保護などの公的負担医療制度を受けている人
- 災害や労災、交通事故の被害者
- 医師が支払い対象外と判断した人
3ヶ月間の運用結果では、帰宅した患者の13.5%が支払い対象となった。年代別に見ると、若年層と高齢者では入院率に大きな差があり、高齢者(65歳以上)の入院率は55.4%に達した。
医師の判断で支払い対象外となったケースは57%を占めた。これは「医師に判断させる」という制度設計に課題があることを示している。医師は患者と顔を合わせる関係上、支払いを求めにくい立場にあるためだ。
経済学の「ゼロ効果」によれば、たとえ200円という少額でも、無料と有料の間には大きな心理的ハードルがある。日本の高齢者医療費の研究では、200円の負担があるだけで外来受診が減少したというデータがある。ただし、元々健康状態が良くない人の受診率は変わらなかった。つまり、本当に必要な人は少額の負担があっても受診するが、比較的健康な人の「気軽な受診」は抑制されるということだ。
また「モラルハザード」の観点からは、補助金や保険によって負担が軽減されると、必要以上のサービス利用が増える可能性がある。日本の小児医療費の研究では、高所得層が多い地域では補助金により不必要な検査入院が増加した一方、低所得層では適切な外来受診が増え、緊急入院が減少したという結果が出ている。
これらの研究から、一律に無料化するのではなく、経済状況に応じた負担設計が望ましいと考えられる。
メリットとしては、不必要な利用の抑制、救急搬送時間の短縮、医療資源の効率的な配分などが挙げられる。有料化により、病院側も救急患者受け入れへの経済的インセンティブが生まれる可能性もある。
デメリットとしては、低所得者層の受診抑制、必要な時に躊躇してしまうリスク、「お金を払えば呼んでもいい」という新たなモラルハザードの発生などが考えられる。特に高齢者や重症の可能性がある患者が経済的理由で救急車の利用を控え、重症化するリスクは看過できない。
また、医師が「この人からお金を取るべきか」を判断する立場に置かれることの倫理的問題もある。三重県の例では、医師判断による支払い免除が多かったことが報告されている。

専門家は「まず取った方がいい」との見解を示している。7700円程度の一律料金から始め、データを収集・分析しながら制度を改善していくアプローチが推奨されている。重要なのは「相互扶助と応能負担」の原則を忘れないことだ。
今後の課題としては、高齢者の扱い、低所得者への配慮、地域による料金設定の違いなどが挙げられる。また、救急隊員の労働環境改善や、病院側の受け入れ体制強化も必要だ。
イギリスのようなカテゴリー分類システムの導入や、オーストラリアのような救急隊員の判断権限強化なども検討に値する。単に有料化するだけでなく、救急医療システム全体の最適化が求められている。
なお、救急車出動1回あたりのコストは4万円から10万円と推定されており、仮に全国で有料化して1万5000円を徴収すれば、年間約1000億円の収入になる計算だ。しかし、金額設定は慎重に行う必要があり、5万円のような高額では、本当に必要な人まで利用を控えてしまう可能性がある。
※こちらは生成AIによるまとめ記事です。