
ダ・ヴィンチと会計の数奇な運命【田中靖浩】
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2025年5月19日
EXIT・りんたろー。と国山ハセンが株・保険・住宅など資産運用にまつわるスキルセットを学ぶ。今回は会計書としては異例のベストセラーとなった「会計の世界史」著者・田中靖浩氏がレオナルド・ダ・ヴィンチと簿記の関係などについて解説
数字なしでも楽しい!会計の世界をロマン溢れる歴史旅行で学ぶ

「簿記って面白くない」そんなイメージを持っていませんか?実は、会計の世界は人類の歴史とともに発展してきた壮大なドラマが隠されています。今回は、ベストセラー「会計の世界史」著者で公認会計士の田中靖浩氏を迎え、数字を使わずに会計の面白さを伝える異色の対談をお届けします。
なぜ会計はつまらなく感じる?その答えは「数字」にあった
Q: 会計はなぜつまらないと思われがちなのでしょうか?
「会計はつまらない」というイメージがありますよね。多くの人が簿記の勉強に挫折してしまう理由は、数字ばかりに目が行ってしまうから。数字を使わずに会計の本質を理解できれば、会計はとても面白いものになります。
Q: 数字なしで会計を理解するとはどういうことですか?
会計を図形やストーリーで理解するのです。例えば、バランスシートは「調達したお金をどう投資して運用するか」という物語として捉えれば、数字がなくても理解できます。今回は、歴史上の名画を通じて会計の世界史を巡る旅をします。
会計の発祥地はイタリア!泥棒と銀行の意外な関係

Q: 会計はいつ、どこで生まれたのですか?
会計は中世のイタリアで生まれました。約500〜700年前、イタリアは東方貿易の窓口として経済的に栄えていました。中国からのお茶や香辛料をヨーロッパに持ち込む貿易の中心地だったのです。
当時のイタリアは国家ではなく、都市国家の集まりでした。それぞれの都市が独立していて、その間を移動するのは非常に危険なことでした。
Q: イタリアで会計が生まれたことを示す絵画はありますか?
ヴェロッキオという画家(レオナルド・ダ・ヴィンチの師匠)が描いた「トビアスと天使」という絵があります。この絵は当時のイタリアで大流行しました。
絵の中には、赤いタイツを履いた少年(トビアス)と天使が描かれています。この少年は商売をしている盲目の父親の代わりに、お客さんから代金を回収しに行く途中なのです。天使は彼を守っています。
Q: その絵がなぜ会計の誕生と関係しているのですか?
当時の道は整備されておらず、お金を持って移動するのは非常に危険でした。追い剥ぎや泥棒が多かったのです。この絵は、「少年が無事にお金を持ち帰れますように」という願いを込めたお守りのような存在でした。
しかし、お守りだけでは現実の危険は解決しません。そこで生まれたのが「為替手形」というキャッシュレスのシステムです。現金を持ち歩く代わりに紙の手形を使うようになりました。これを発行するサービスを提供する人たちが登場し、それが銀行の元祖になりました。
Q: 銀行という言葉の由来は何ですか?
銀行の元祖は「バンコ」と呼ばれていました。これはイタリア語で「机」を意味します。最初の銀行業者は一つの机を置いて、お客と向かい合って両替や為替手形の発行などの手数料サービスを提供していたのです。バンコからバンク(銀行)という言葉が生まれました。
Q: 簿記はどのように発展したのですか?
メディチ家という有名な家系が銀行業を発展させました。彼らはイタリア国内だけでなく、パリなど各地に支店を持つようになりました。そうなると単なる家計簿では足りなくなります。各支店のお金の出入りを管理するために、全体を統括する帳簿が必要になり、ここから複式簿記が発展しました。
複雑に思える会計は、実は複数の拠点のお金の流れを一元管理するために発展したものなのです。
図で理解するバランスシート:数字なしでも会計は面白い!

Q: 数字なしで会計を理解するとはどういうことですか?
会計を図形で理解する方法があります。例えば、バランスシートは図形で表現できます。
まず、商売を始めるにはお金が必要です。そのお金は自分の資本(自己資本)と借りたお金(負債)から成ります。これを「調達」と言います。
調達したお金は投資します。この投資したものが「資産」になります。そして投資したものを運用していきます。うまくいけば資産は増え、うまくいかなければ減ります。増えた部分は「積立金」となり、減った部分は「欠損」となります。
この全体の流れを図形で理解することで、数字を見なくても会計の本質を理解できるのです。
Q: 会計を勉強する上で重要なことは何ですか?
会計には「作る」と「読む」の2つの側面があります。日本の教育では「作る」方から始めることが多く、簿記検定などもそうなっていますが、今は「読む」方が重要です。
なぜなら、会計書類を作るのは専門家や会計ソフトの仕事になっていますが、その結果を読み取って経営判断に生かすのは経営者やビジネスパーソンの仕事だからです。
簿記の勉強でつまずいて会計嫌いになるのはもったいないこと。会計は、図形やストーリーで理解すれば、ずっと面白くなります。
Q: 会計に表れない重要な資産はありますか?
人的資本(人材)はバランスシートに載りません。なぜなら、人の価値は測定が難しく、一定ではないため金銭評価に向かないからです。
しかし、優秀な人材がいるかどうかが企業の価値を大きく左右することは明らかです。近年は、決算書分析と合わせて、その会社の人的資本を確認することが投資の世界でも注目されています。
会計を学ぶべき理由:投資家とストーリーテリング

Q: 起業家にとって会計知識はなぜ重要ですか?
起業した際に一流の人物から「ファイナンスを学んだ方がいい」というアドバイスをもらうことがあります。これは単なる応援ではなく、「財務を理解しなければビジネスで成功できない」という真摯なメッセージです。
お金の出入りを理解し、投資家に対して説明責任を果たせることは、資金調達の上でも重要です。メディチ家のボスであるコジモは、経営自体は部下に任せていましたが、月に一度は必ず帳簿を持ってこさせて結果だけは管理していたといいます。これこそまさに「会計(あって、測る)」の本質です。
Q: 会計の歴史はなぜ面白いのですか?
会計の歴史を学ぶことで、数字だけでは見えてこない人間ドラマが見えてきます。例えば、ダヴィンチの「最後の晩餐」という絵には、当時の遠近法の技術が詰め込まれています。絵の中に空間の奥行きがあり、窓からは遠くの風景まで見えるという3Dの表現がされています。
このように、会計の歴史も人間の知恵と創意工夫の物語として捉えると、数字の羅列ではなく人間ドラマとして面白く感じられるのです。
世界最古の職業の一つと言われる会計士。メソポタミア文明の粘土板にも、既に会計記録の名残があるといいます。それだけ古くから、人間は数字を記録して管理することの重要性を認識していたのです。
会計は確かに大事だけれど退屈と思われがちな分野です。しかし、数字を除いて本質的な部分を図やストーリーで理解すれば、会計は壮大な人類の歴史ドラマとして、とても魅力的なものになるでしょう。
