
日本株の長期上昇シナリオ/木野内栄治×大川智宏
【インフレで日本株は上がる?】7月にピークアウトする可能性と超長期相場展望
トランプ関税で大きく下落した株価は現在回復基調にあります。しかし、このまま上昇を続けるのでしょうか?大和証券チーフテクニカルアナリストの木野内栄治氏と智剣・OskarグループCEO兼主席ストラテジストの大川智宏氏が解説します。

Q: 現在の市場はどのような状況ですか?
4月2日のアメリカの相互関税の発表と中国の報復措置の発表を受け、株式市場は急激に下落しましたが、9日には90日間の一部相互関税の停止が発表され、世界的に株価は回復に転じています。
木野内氏は「日経平均は5つも窓が空いたが、そのうち4つ目の窓を埋めるという前回の予想通りに今回なりました。現在は2つ目を埋めようとしている状況で、上がっていく方向が明確になってきました」と説明します。
Q: このまま上昇トレンドは続くのでしょうか?
「上昇トレンドと考えて良いでしょう」と木野内氏。その根拠として、ゴールデンウィーク中にニューヨークダウが9連騰したことを挙げています。「通常は5連騰ぐらいで上昇が止まると考えるべきですが、9連騰するのは上昇に勢いがついていて、良い状況です。これは下落後に出るサインで、上昇トレンドが始まったと言えます」
また投資対象の広がりを示す指標「投落レシオ」も超加熱状態になりつつある点も指摘。「普通は120%ぐらいで加熱と言われますが、今週中に140%台後半に乗る可能性があります。この水準まで行くと勢いがついて、1ヶ月ぐらい株価は上がるというサインになります」
Q: いつまで上昇が続くと予想されますか?
「6月半ばぐらいまでは上がりそうです。6月の終わりには配当の再投資があります。個人投資家は配当をもらって終わりですが、ファンドマネージャーは資金が返ってくると再投資しなければなりません」と木野内氏。
トピックスの過去のチャートを見ると、去年は7月11日が高値、一昨年は7月3日が高値だったことから、「7月の初めぐらいに高値が見えてきたと感じます。2ヶ月程度は良い状況が続くでしょう」と予想しています。
Q: 7月にピークアウトする理由は何ですか?
7月になると、アメリカとの相互関税の上乗せの猶予期間が終わってきます。木野内氏は「交渉を妥結するまでが花で、妥結してしまうと材料出尽くしになります。イギリスなど交渉が妥結した国の株は上値が重くなっています」と説明します。
日本も含め、アメリカに貿易黒字を抱えている国々との交渉期限は7月8日。「それまでは期待が残るため、7月頭くらいまでは世界的に株高気味になりやすい」としています。
大川氏も「今の現状の水準は戻りが少し早いと感じますが、そこまで過熱感もないです。とはいえ、関税問題は何が起こるか分かりません。いろんな番組の資料を用意していても、トランプ氏の一言で全てがひっくり返るということが起きています」と警戒感を示しています。
Q: トランプ関税による景気不安への対応はどうなりますか?
木野内氏は「トランプ氏が何か言ってマーケットが下がっても、トランプ氏自身がどう動くかは予測困難です。むしろ景気が悪くなりそうだと判断されれば、中央銀行や財政当局などがきちんと政策を打ち出してくれるでしょう」と説明。
過去を振り返ると、2015年の人民元安ショックや2018年の貿易戦争の際も、G20などで金融政策・財政政策の総動員が表明され、市場は回復しました。「今回も世界的な景気不安があるので、政策総動員がない限り底は打たないでしょう」と述べています。
現時点で日本銀行は利上げを先送りする姿勢を示していますが、「FRBも動いておらず、日本の財政出動も不透明な状況です。ただし、それほど状況は悪くないので、ひとまず強気で見ていきましょう」と木野内氏は語ります。

Q: 長期的な視点から見た市場の行方は?
木野内氏は、約50年周期で訪れる「コンドラチェフの波」という長期的な景気循環理論を紹介。「過去の流れを見ると、デフレからインフレへの移行期に入っています。これから20~30年はインフレが続く可能性があります」と説明します。
インフレの背景には社会インフラの再構築があります。「首都高速道路や電力鉄塔など、高度経済成長期に建設されたインフラが老朽化し、更新時期を迎えています。鉄筋コンクリートは約50年で中の鉄筋が錆び、コンクリートにひび割れが生じます」
電力鉄塔の更新には5年間で7兆円程度が必要となり、各家庭の電気料金にも月額900円程度の負担増が生じる見込みです。「様々な社会インフラの再構築コストによって、今後もインフレは続く可能性が高い」としています。
Q: インフレは株式市場にどのような影響を与えますか?
「インフレは日本株にとってプラスに働きます」と木野内氏。その理由として、「インフレは物不足の状態。物不足になると企業は研究開発投資を増やし、それがイノベーションを生み、生産性向上につながります」と説明します。
特に日本はデフレ体質の国であるため、「少し暖かくなる程度のインフレはちょうど良い」と言います。一方、アメリカなど欧米の株式市場はインフレに弱い傾向があります。「アメリカはインフレが急伸すると引き締めに動くため、株価は下落しやすい」と大川氏も解説します。
木野内氏によれば、過去のチャートを見ると、デフレ脱却局面で日本株は300~400倍に上昇した事例があります。「このサイクルが始まっていると考えると、2052年頃には日経平均が現在の数百倍になっていても不思議ではない」と長期的な強気見通しを示しています。

Q: インフレ時代の個人投資家の戦略はどうあるべきですか?
「インフレに連動する資産を持たなければいけません」と木野内氏。「例えば食料品の値段が上がって困るなら、食品企業の株を買えばいい。値上げで困る会社の株を持てば、インフレをヘッジできます」とアドバイスしています。
不動産投資については「都内のマンションはすでに1億円が普通になっています」とし、今後は「ドーナツ現象で、中心部から外側へと価格上昇が広がっていく可能性がある」と言及。また「建設資材の値上がりで上物(建物)の価格が高騰しているため、地価や一戸建ての価値も上がっていくだろう」と予想しています。
暗号資産については両氏とも「元となる資産が何なのか分からないものに投資するのは難しい」との慎重な見方を示し、金(ゴールド)については「長期的にはまだ良いだろうが、米中関係改善の局面では一時的に下落する可能性もある」と分析しています。
インフレが進む今後の日本経済において、株式投資は資産防衛の重要な手段になりそうです。
