
海外投資家の「日本買い」は続くか?条件はROE二桁
ウォールストリートのプロが語る「なぜ海外投資家は日本に投資するのか」
海外投資家の目から見た日本市場の魅力とは何か。投資歴41年のウォールストリートの最前線で活躍するワイズマン廣田綾子氏に、日本企業の課題と可能性について聞いた。

「今の日本市場は1980年代の米国市場と似ている」
Q: 日本市場と米国市場の共通点について教えてください。
日本市場は1980年代の米国市場と非常に似ている点があります。1980年代の米国では金融の支配権市場が活発化し、ジャンクボンドの新たな活用方法によって企業買収の動きが出てきました。現在の日本でも同様の状況が別の理由で起きつつあります。
1980年代米国では「パックマン・ディフェンス」のような企業間の敵対的買収が始まりました。当初は驚きをもって受け止められましたが、10年後にはそれが普通になりました。日本でも同じようなことが起こる可能性があります。

最大の変化要因は「政策株」の減少です。私が投資を始めた1980年代、日本企業の株式の約2/3は政策株でしたが、現在は約11%まで下がっています。これは経営者が安心できない状況になりつつあることを意味します。
かつて経営者は政策株主が絶対にマネジメントをサポートしてくれる状況でしたが、今はそうではありません。セブン&アイの事例のように、企業が企業を買収する新たな動きも出てきています。この「企業の支配権マーケット」の形成が米国と日本の共通点です。
Q: 日本企業がROEを向上させるには何が必要ですか?
日本の企業がROEを2桁に引き上げるには、デュポン分析の観点から考えると、収益性、効率性、安全性の改善が必要です。
収益性の面では、日本の同じ産業内に多数の企業が存在することが問題です。同業他社が7、8社もあるため、十分な利益マージンが確保できていません。
効率性の面では、日本企業は「物を持たない経営」ができていません。米国企業は工場を手放して製造をアウトソースするなど、自社の強みに集中する判断を素早く行います。日本でも日立やレゾナックのような成功例が出てきていますが、まだまだ少数派です。
Q: 日本市場の可能性をどう見ていますか?
日本の市場はまだ手をつけていない部分が多く、アップサイドは大きいです。例えば半導体産業では、世界的に見て規模が小さすぎるため、もっと集約して競争力を高める余地があります。
コングロマリット(複合企業)も多く、これを分解して再構築すれば、世界市場で競争力のある企業が生まれる可能性があります。効率化と収益性の向上が進めば、大きな変化が起こるでしょう。
「経営改革の鍵は失敗からの撤退スピード」
Q: 経営改革を進める上で最も重要なのは何ですか?
経営改革で最も重要なのは、「間違った時の撤退スピード」です。成功に注目しがちですが、実は失敗からの撤退を迅速に行うことこそ重要なのです。
創業者が経営する企業が優れているのは、判断のスピードが早いからです。特に自分が犯した間違いに対して責任を持って迅速に切り替えることができます。一方、大企業では前の経営陣の判断を覆すことが難しく、決断ができない状況に陥りがちです。
失敗したらやめるという合理的な判断ができないのは残念なことです。失敗を続けると経営者の時間が無駄になり、将来の成長にマイナスです。切ることで本業に集中できるようになります。
Q: ワイズマン社のホライゾン創業者インデックスについて教えてください。
創業者インデックスは、創業者が経営している日本企業約120〜150社を対象としたインデックスです。このインデックスとTOPIXを比較すると、創業者企業のパフォーマンスが著しく高いことがわかります。
私は2000年まで米国株を担当し、その後日本株に移りましたが、その時の驚きは表現できないほどでした。米国の経営者はきちんと経営していますが、日本企業を訪問すると「経営をしていない」と感じることが多かったのです。

特に業績が悪くなった時や企業買収の際に、根本的な改革が行われなかったり、説明が不十分だったりする点が目立ちました。そこで「どういう会社がちゃんと経営しているのか」を検証するために創業者インデックスを作りました。
創業者は自分が作った「子供」のように会社を大事にし、間違いがあれば自己責任ですぐに修正します。日本でもこうした姿勢を持つ経営者が増えることが重要です。
「日本の投資家と経営者の両方が変わるべき」
Q: 日本企業の改革を進めるために必要なものは何ですか?
日本企業の改革には、強いリーダーシップと優れたチームが必要です。特に重要なのはCFO(最高財務責任者)の存在です。財務上の戦略を社長と共に考え、実行できる人材が必要ですが、日本ではそうした人材が不足しています。
日本の大企業でも社外取締役は数パーセントにとどまり、取締役会で「NO」と言える人が少ないのが現状です。また、社外取締役が過半数に達しなければ、実質的な変化は難しいでしょう。
理想的なのは、経営者が自ら気づいて変革を進め、長期投資家がそれをサポートすることです。日立やレゾナック以外にも、そうした企業が10社、20社と増えれば、改革のモメンタムがつくでしょう。
Q: CFOの人材不足はなぜ起きているのでしょうか?
日本ではファイナンスに関する教育が不十分です。経営者の中には転換社債を「金利が0だから」と考え、株式転換が最も高価な資金調達方法であることを理解していない人もいます。
大学でのファイナンス教育の強化やMBAのようなプログラムの普及が必要です。特に企業買収の対象になりそうな企業では、社内でそうした分析ができる人材が不可欠です。
Q: 日本の投資家はどのように変わるべきですか?
日本の機関投資家にもっと積極的になってほしいと思います。外国人投資家が言っても聞いてもらえませんが、日本の生命保険会社などから言われれば企業は耳を傾けるでしょう。
エリサ法のような法律を導入し、アセットマネジメント業がリターンを追求することを義務付けるのも一案です。また、企業買収の際の「その他」の考慮事項を減らし、価格を重視する方向に制度を変えることも必要です。

投資家を専門職として確立することも重要です。現在は多くの場合、ローテーションの一部として位置づけられており、職業として確立されていません。また、投資判断に対して親会社からの干渉があるケースもあります。
日本の経営者と投資家の両方が変わることで、日本市場はさらに魅力的になるでしょう。
バフェット氏の日本株投資は、通常の彼のスタイルとは異なるものでした。彼は特定の1社を大量に買うのではなく、同じ業種の5社を均等に買いました。当初は経営陣との面談もなく、単に世界で最も割安な資源株として買ったと考えられます。
興味深いのは、最近になってその5社のうち2社がROEなどを意識した経営を始めており、残りの3社も変化の兆しが見えてきていることです。バフェット氏の投資が影響を与えている可能性があります。
今後、日本企業がAIなどの新しい分野でも競争力を高めていくには、企業の再編を進め、得意分野に特化することが重要です。例えば充電技術など、日本企業が強みを持つ分野で世界的な競争力を持つ企業が生まれる可能性があります。
※こちらは生成AIによるまとめ記事です。
