
テスラの業績は悪化する。トヨタの真のライバルは?
イーロンマスクのロボタクシー構想とは?テスラの未来戦略と自動車業界の激変を解説

イーロンマスクが政界に足を踏み入れた理由とは?テスラの将来性についての見方やロボタクシー事業の可能性、さらには自動車業界全体の再編について、フォーインの安藤久史アナリストが詳細に解説します。トランプ政権下でのアメリカ自動車市場の行方と、日系メーカーの今後の戦略にも注目です。
イーロンマスクは「次世代社会インフラの構築」を目指している
Q: イーロンマスクが政界に入った理由は何だと考えていますか?

「次世代社会のインフラ基盤の構築をイーロンマスクはしたいと思って政界に入ったのではないかと考えています」
イーロンマスクが政界に足を踏み入れた理由は、次世代社会のインフラ基盤を構築したいという思いがあるからだと考えられます。元々テスラで事業を展開していましたが、アメリカは州ごとに法律が異なるため、自動運転の機能を活用したくても州によって規制が異なり、ビジネス展開がしにくい状況がありました。
連邦レベルで規制を緩和し、自動運転を推進したいという意図があるのでしょう。特にロボタクシー事業に力を入れたいと考えており、これは次世代社会の重要な要素になる可能性があります。
ロボタクシーが変える未来の車の価値
Q: ロボタクシーとはどのような事業構想ですか?
ロボタクシー構想は、車を単なる移動手段ではなく、新たな価値を持つものとして位置づけ直すものです。例えば会社員が週末しか乗らない車は、平日は家に置いてあるだけです。しかし、その時間に車が自動で走って客を乗せてお金を稼いでくれれば、社会の姿は大きく変わります。
使っていない時間に車が自分で走って収入を得ることで、車の価格設定や所有の形態も変化します。例えば300〜400万円の車が500〜600万円になったとしても、車自体が稼いでくれるので高額でも問題ありません。また、サブスクリプションモデルのように月額料金を支払い、必要な時だけ自宅に車があり、それ以外の時間は自動運転タクシーとして走らせることも可能になります。
このように、車を移動手段以外の価値を持つものとして位置づけることで、ビジネスモデルも大きく変わってくるでしょう。
テスラの事業戦略とイーロンマスクの本当の目的
Q: テスラ自体の今後の業績はどうなると思いますか?

「おそらくイーロンマスクからするとテスラは儲けなくていいと見ていると思います」
テスラ単独の自動車メーカーとして見ると、業績は悪化していく可能性が非常に高いでしょう。その要因として新しいモデルが少ないことが挙げられます。テスラのモデルは外観は同じで中身だけが更新されていく形態のため、外見が変わらないと新車を購入する動機につながりにくいのです。
GMやトヨタ、ホンダなどの既存の自動車メーカーが新しいデザインの車を市場に投入する一方で、テスラの車は内部は高性能でも外観が何年も同じままでは魅力が薄れてしまいます。
しかし、イーロンマスクはテスラだけを見ているわけではなく、自動車メーカーを持つメリットを重視しています。AIを搭載した自動運転車を自社で保有し、その機能や情報を把握できることは大きな強みです。最近の充電システムもテスラ方式に切り替えている例があり、電力情報も収集できます。
イーロンマスクにとってテスラは利益を出すための会社ではなく、社会全体の大きな構想の中の一部門という位置づけなのかもしれません。
アメリカの電気自動車市場の今後
Q: アメリカ市場での電気自動車の普及はどうなりそうですか?
アメリカでの電気自動車の普及は遅れる可能性が高いです。トランプ政権下では、バイデン政権下で実施されていた電気自動車の普及策や補助金が凍結または停止される傾向があります。州レベルでも補助金が支給されなくなっているケースがあり、日本と同様に電気自動車の普及が遅れる国になるかもしれません。
また、アメリカでは長距離移動が多く、電気自動車は不便な面もあります。トランプ政権は電気自動車の高価格を問題視しており、環境に優しいという目標を達成するなら、新しい車に古い車を置き換えていく方が効率的だという考え方をしています。価格が安ければ買い替えが進み、古い車が市場から消えていくというロジックです。
この観点から、ハイブリッド車中心のマーケットがアメリカではしばらく続く可能性があります。GMも戦略を変更し、現代自動車のハイブリッド技術を活用してピックアップトラックなどにハイブリッドモデルを投入する方針を打ち出しています。
日系メーカーの米国戦略と世界市場での再編
Q: 日系メーカーはアメリカ市場でどのような戦略を取るべきですか?
トランプ政権による関税政策により、日本の自動車産業は戦略の見直しを迫られています。日本国内からの米国向け輸出は減少する見通しですが、国内の雇用も守る必要があります。そのため、アメリカ以外の市場開拓が重要になってきます。
世界全体でみると、日系メーカーは28%のシェアでトップですが、中国系メーカーも18.9%と急成長しています。中国市場では中国系メーカーが圧倒的に強く、ASEAN市場でも日系は守勢に立たされています。北米市場は日系が強いものの、今後シェアが下がる可能性もあります。
そのような状況の中、今後注目すべき市場として中南米が挙げられます。例えばブラジルでは日系メーカーのシェアは15%に対し、中国系はまだ1.4%にとどまっています。アルゼンチンでも日系が26%、中国系は0.5%です。
一方、チリでは中国系が2019年の15%から2023年には28%に拡大し、ペルーでも13%から23%に増加しています。中国系メーカーは小型の安価な内燃機関車で攻勢をかけていますが、日系メーカーにとっても拡大の余地がある市場だと言えるでしょう。
自動車業界の再編と今後の展望
Q: 自動車メーカーはどのような形で再編されていくと思いますか?
世界の自動車メーカーは、今後1000万台規模の販売台数が必要になってくると見られています。日本で言えば「トヨタ連合」と「ホンダ連合」のような2極化が進まないと、世界市場で競争していくのは厳しくなるでしょう。
トヨタグループにはすでにスバル、スズキ、マツダなどが資本関係などで組み込まれています。仮にホンダと日産が統合すれば、2023年時点で約800万台、2019年基準では1000万台を超える規模になります。同様に、GMと現代自動車が連携を強化すれば1000万台を超える規模になります。
GMと現代自動車の連携は複数の理由があります。現代自動車はアメリカで収益を上げていますが、現地生産比率が日系メーカーより低く輸入依存度が高いため、GMとの連携で政府対策も可能になります。GMにとっても、中南米などの市場攻略には小型車が必要で、以前は中国の上海汽車と提携していましたが、米中関係悪化の中で現代自動車の小型車プラットフォームを活用するメリットがあります。
また、中国のBYDは急成長しており、5〜10年以内にトヨタやフォルクスワーゲンなどのトップグループに追いつく可能性があります。特に東南アジア市場での成長が予想されており、アメリカ市場がなくても急成長する可能性があります。
日系メーカーの今後の展望

Q: 日系メーカーの今後はどうなりそうですか?
アメリカ市場においては、トヨタとホンダはシェアを比較的維持できる見通しです。スバルはやや不透明、日産、三菱、マツダは厳しい状況になる可能性があります。
次世代社会インフラの構築という観点では、日本はかなり開発が遅れています。しかし、最近トヨタとウェイモ(Google系の自動運転企業)の提携が発表されましたが、これは大きなニュースです。トヨタはこれまで単独開発志向が強かったものの、他社と協力する必要性を認識したことを示しています。
次世代社会のインフラ構築に関しては、日系メーカーの開発は進んでいませんが、アメリカやヨーロッパのスタートアップ企業は多数あります。これらの技術を活用しながらビジネスモデルを構築していくことが重要になるでしょう。
自動車業界は今後、メーカー間の再編が進み、サプライヤーにとっても厳しい時代が到来することが予想されます。特に自動車メーカー間の関係が密接になるほど、同じ業務を行っているサプライヤーは厳しい状況に陥る可能性があります。
