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サムスンの終わりの始まり?稼ぐ力が衰えてきた
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2025年4月28日

韓国の雄として半導体とスマホで高シェアを誇るサムスン。ただ、近年は稼ぐ力が衰えている。サムスンに今、何が起きているのか?財務分析のプロである田中慎一氏に分析してもらった。 <ゲスト> 田中慎一|財務戦略アドバイザー・インテグリティ代表 1972年東京都生まれ。 慶應義塾大学経済学部卒業後、監査法人...
サムスンが「終わりの始まり」の兆候?日本企業がたどった道と酷似する転落の影が見え始めた
かつては日本の電機メーカーにとって青雲の志を抱かせる存在だったサムスン。しかし近年、その勢いに陰りが見え始めている。財務分析のプロである田中慎一氏が、サムスンの現状と課題を鋭く分析する。

サムスンの冷え込む業績、終わりの始まりか
Q: サムスンというと、どのようなイメージを持ちますか?
半導体と携帯電話でしっかりと稼ぐ企業というイメージが強い。かつてはその2本柱で定期的に大きな利益を上げてきた企業だ。
2018年の営業利益は約6兆円という驚異的な数字を記録。日本企業で言えばトヨタ自動車くらいしか到達できない領域だ。さらに、現預金残高が借入金を大きく上回る「キャッシュの塊」のような会社でもある。直近でも3兆円以上のネットキャッシュ(借入金を上回る現預金)を持つ。
しかし、最近は以前ほどの勢いがなく、「普通の会社」になってきた印象がある。利益率も2018年の24%という最高値から、現在は10.9%程度まで下落している。
20年変わらない事業ポートフォリオがアキレス腱に
Q: サムスンは昔から変わらない事業構造なのですか?
興味深いことに、サムスンの事業ポートフォリオは過去20年間、ほとんど変わっていない。スマートフォンと半導体を中心とした事業構造を維持し、それで大きく成長してきた。
強みに集中した戦略は成功をもたらしたが、それが逆にアキレス腱にもなっている。新しい領域へのチャレンジができず、課題が顕在化してきたのだ。
実は2013年頃はスマートフォン事業が最も利益を出していたが、2018年には半導体事業が中心となり、半導体だけで営業利益率50%という驚異的な数字を記録していた。しかし、その両事業とも現在はピークアウトの気配を見せている。

半導体業界でのAI革命に乗り遅れた
Q: 半導体事業で苦戦している原因は何ですか?
2023年、サムスンの半導体事業は赤字に転落した。この背景には、コロナ特需の反動だけでなく、先端半導体分野での遅れという構造的な問題がある。
具体的には、AI時代に必須となる次世代メモリー「HBM」(High Bandwidth Memory)の開発で競合他社に大きく遅れをとった。サムスンは2010年代にHBMを開発していたが、途中で中止してしまった。一方、同じ韓国企業のSKハイニックスはコツコツと開発を続け、今やNVIDIAのAIチップを支える重要パートナーになっている。
SKハイニックスの売上高はサムスンの半分程度だが、営業利益ではすでにサムスンを超えている。この逆転現象は、「大成功することで失敗を恐れる文化」がイノベーションを阻害した結果と言えるだろう。
スマートフォン市場でもAppleに首位を奪われる
Q: スマートフォン事業の現状はどうですか?
サムスンのスマートフォン事業も苦戦している。長年グローバルシェア1位だったが、2023年にAppleに抜かれてしまった。現在のシェアはAppleが28%、サムスンが23%となっている。
さらに売上高で見ると、Appleは約30兆円に対し、サムスンは約12兆円と大きな差がついている。この差の背景には、Apple特有のビジネスモデルがある。
Appleはハードウェアだけでなく、サービス事業も展開。プロダクトからの収益が75%、サービスからの収益が25%という構成だ。特にサービス部門の利益率は74%と非常に高い。一方、サムスンは依然として「デバイスを売って終わり」という従来型のビジネスモデルにとどまっている。

中国企業との価格競争でも苦戦
Q: ディスプレイ事業ではどうですか?
サムスンは有機ELディスプレイなど、革新的な技術を持っているにもかかわらず、中国のBOEなどの新興企業に押され気味だ。BOEは成長スピードが圧倒的で、すでにAppleにもパネルを供給している。
中国企業は国内の巨大市場を背景に、圧倒的な物量と低コストで世界市場を席巻している。これは太陽光パネルやEV(電気自動車)でも同様の現象が起きており、いわば「殺到する経済」の様相を呈している。

PBR1倍割れの難題は日本よりも深刻
Q: サムスンの株価はどのような状況ですか?
意外かもしれないが、サムスンの株価収益率(PBR)は1倍を割っている。これは日本企業が直面している「PBR1倍割れ問題」と同様の課題だが、韓国企業の方がより深刻だ。
原因は日本と似ており、株式の持ち合いや複雑な所有構造によるコーポレートガバナンスの問題がある。余計な政策株式を多く持っているため、資産効率が低下している。韓国のシンクタンクも日本の東証が発表した「株価や資本コストを意識した経営の実現に向けて」という指針を研究し、対策を模索している段階だ。
日本の電機メーカーと同じ轍を踏むのか
Q: サムスンの今後の展望はどうですか?
サムスンは今、日本の電機メーカーがかつて経験した「キャッチアップ型モデル」の限界に直面している。かつては日本企業を追い抜いたサムスンだが、今度は中国企業に追われる立場となった。
大器用病から逃れられず、失敗を恐れる企業文化が新規事業の創出を阻んでいる。現在の収益構造に安住し、新たなチャレンジができなければ、日本の電機メーカーと同じ道をたどる可能性が高い。
しかし、サムスンには膨大なキャッシュと技術力がある。この資産を活かして大胆な事業転換ができれば、再び成長軌道に乗る可能性もある。今後のサムスンの動向は、日本企業にとっても大いに参考になるだろう。