日本再興ラストチャンス
インフレ時代の外食産業サバイバルプラン
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2025年4月23日

<外食産業の構造的な課題> ・外食産業のインフレ率と対策 ・飲食業界の競争と協調の両立 価格高騰時代の生存戦略とは? AIを活用したこれからの外食産業は? コメ価格の高騰に対する見解は? 有識者と共に、具体的なアクションを議論した。
価格高騰時代の外食産業生存戦略 - 利益率低下と舵取りの難しさ
物価上昇が続く現在、外食産業は厳しい局面を迎えている。原材料費の高騰、人件費の上昇、さらにエネルギーコストの増加と、あらゆる面でコスト増に直面する業界はどのように生き残りを図るのか。ロイヤルホールディングス会長の菊地唯夫氏とワンダーテーブル代表取締役の秋元巳智雄氏に、インフレ時代の外食産業の生存戦略について聞いた。


「値上げしても利益率は減っている」 - 2割上がっても追いつかないコスト増
Q: 外食業界で体感するインフレ率はどれくらいですか?
現在の外食業界では、原材料費、人件費、エネルギーコストなど、あらゆるコストが上昇している。秋元氏によれば、お客さんの体感では約2割程度の価格上昇と感じられているという。「昔に比べてモンブラザーズやバルバックスはこんなに高いのか」という印象をお客さんが持っている。しかし、値上げをしても利益率は減少している状況だ。
Q: なぜ値上げしても利益率が下がるのですか?
菊地氏は「原材料価格とエネルギー価格の分だけ価格を上げても、それは付加価値が増えない。そのため分配原資が不足して人件費に回せなくなる」と説明する。つまり、単なるコスト転嫁だけでは企業の持続的な成長は難しい状況になっている。
「付加価値を高める戦略とテクノロジーの活用が鍵」
Q: どのような生存戦略を取るべきですか?
菊地氏は「生存戦略は1つではない。各社がどのような価値創造プロセスを持っているかを考え、テクノロジーを必ず活用していく必要がある」と話す。さらに「価値を圧縮するだけでは付加価値は上がらない。例えばサービスを良くするなど、きちんと価値を上げた上で値上げしていかなければどこかで行き詰まる」と指摘する。
生存戦略の軸として挙げられたのは以下の2点だ:
1. サービスの付加価値を高める
2. テクノロジーを賢く活用する
秋元氏も「値上げをしつつ、それがお客さんのターゲットと合わせて価値を埋めることが重要」と述べ、「ある程度ターゲットを明確にして、ある層に対して引っかかるようなブランド戦略やマーケティングを一生懸命やっている」と具体的な取り組みを説明した。

「小規模店舗は競争と協調の両立が必要に」
Q: 中小の飲食店はこの状況をどう乗り切ればいいですか?
菊地氏は「競争領域と協調領域を分けて考える必要がある」と指摘する。特に地方では人手不足が深刻化しており、物流や購買など競争領域ではない部分で連携していく動きが今後必要になるだろうと語る。
中村氏は「近隣の小規模飲食店舗で共同調達をするなど、経営上の効率化を図ることが重要な課題になる」と提案する。菊地氏もこれに同意しつつ、「経済価値の統合は難しいが、社会価値のために連携する動きは出ている」と補足。例として食品ロス削減のための「持って帰ろう」プロジェクトなど、社会的課題の解決を目的とした業界連携の事例を挙げた。
「チェーン店と個人店、2極化する業界構造」
Q: 多様性のある個人店が減り、チェーン店ばかりになっていくという指摘がありますが?
菊地氏は意外な見解を示す。「チェーンはこれから逆に厳しくなるかもしれない。供給制約の時代になると、大きいほど苦労する。逆に価値をつけられるのは地方に1点しかない名店など、規模が小さい方が付加価値をつけやすい」
そのため「高くもなく安くもない普通の個人店は、どこに付加価値を持っているのかを考え、それに見合った価格をつけていくことが大事」と指摘する。
秋元氏は世代交代の視点から「親の世代の70〜80代の経営者では難しいかもしれないが、子供の世代が引き継いでいる場合は、新たな思考で個人店を成功させる事例がたくさん出ている」と語る。キャッシュレスやモバイルオーダーなどのテクノロジー導入により、少人数でも効率的に営業できる個人店も増えているという。
Q: 後継者問題はどうなっていますか?
秋元氏は「個人店は後継ぎが少ないので、うまくいっている人もいるが全体的には少ない。親の世代で終わってしまい、個人店が潰れてチェーン店が増える構造になっている」と現状を説明。「継がないのは大変すぎるから」と理由を分析した。
「外食産業の社会的地位向上が不可欠」
Q: 外食産業の未来についてどう考えていますか?
菊地氏は「外食産業はこれからすごく大事だと思っている」と強調する。特にインバウンド消費を「サービスの輸出」と位置づけ、「インバウンド消費が8兆円と言われる中、外食産業が海外の方に評価され、国内の人にとっても大事なインフラだと認識させるために、社会的地位や魅力を高めていく必要がある」と述べた。
外食産業の魅力として菊地氏は「感情労働」の重要性を挙げる。「肉体労働はロボットに、頭脳労働はAIに代替されていく中で、感情労働は人が働く上で本質的なものになっていく。この産業で働くことが感情労働を価値に結びつける」と将来性を語った。
秋元氏も「製造業の時代からサービス業の時代になっている今、外食の役割は大きい」とし、「日本独特の食のオペレーションの上手さ、美味しいものを出す技術、ホスピタリティのレベルの高さが日本の特徴。これを若手に引き継ぎ、世界中の人に美味しい料理やホスピタリティで喜ばせることができる、世界を舞台に戦える人材が集まる業界になってほしい」と展望を語った。
「米価格高騰は構造問題」
Q: 米価格の高騰はこれからも続くのでしょうか?
菊地氏は「根本的には供給の問題。農家さんも高齢化が進み辞める方が増えて供給が細る中、異常気象などの問題が複合的に起き、ついに問題が表面化した。一時的な問題ではない」と分析する。

中村氏は日本の計画経済的な仕組みも指摘。「既存産業を守るため、食料安全保障などの理由から計画経済的な仕組みになっている。塩、米、お酒など様々な分野でそうなっているが、計画経済的な話は最後はうまくいかない。もう少し市場に任せるという方向性があってもいいのではないか」と提言した。
一方、菊地氏は「今の価格だと農家に後継者が出てくる面もある」と指摘。「今上がったのはやむを得ない。その代わり供給量をしっかり増やせるように、市場経済的に安定した米生産ができる農業にしていく必要がある」と述べた。