
安倍外交の中心人物に聞く、日本の防衛戦略
安倍外交の中心人物・兼原信克が語る日本の防衛戦略と国際情勢
日本の防衛力強化や国際情勢の変化に対応するため、どのような戦略が必要なのか。安倍外交の中心人物として知られる兼原信克氏に、日本の防衛政策や米中関係、台湾情勢などについて詳しく聞いた。
Q: 日本の防衛力をどのように強化すべきでしょうか?
兼原信克(以下、兼原): 防衛力強化のために予算を増やしていく必要がある。岸田首相は2027年までGDP比1%を目標としているが、これでは不十分だ。アメリカは約135兆円、中国は公称で約35兆円(実際は70兆円程度とも言われる)の防衛費を投じている。日本の12兆円では話にならない。
日本の経済規模を考えると、GDP比3%程度まで引き上げることを真剣に検討すべきだ。増税は避けられないだろうが、実際に戦争が始まった場合のコストを考えれば、平時の防衛費増額は安いものだと言える。

Q: 防衛費増額のための財源をどのように確保すべきでしょうか?
兼原: 財源には主に4つの選択肢がある。所得税、法人税、消費税、国債だ。しかし、国債発行には問題がある。現在の世代が使うお金を将来世代に負担させることになるからだ。親として、子供たちに借金を残すのは倫理的に問題がある。
所得税と法人税の増税にも難しさがある。所得税はサラリーマンへの負担が大きくなり、法人税は企業の国外流出を招く恐れがある。結局のところ、消費税の増税が最も現実的な選択肢だと考える。
ヨーロッパ諸国の消費税率は20%程度だ。日本も同程度まで引き上げる必要があるだろう。これにより約20兆円の増収が見込める。この増税を国民に納得してもらえるかどうかが、政治家の力量を問われるところだ。
Q: 民間防衛の強化について、どのようにお考えですか?
兼原: 民間防衛の強化は急務だ。例えば台湾は人口2300万人に対して4000万人分の防空壕がある。一方、日本はほとんど対策ができていない。
ようやく最近になって、台湾有事の際に南西諸島の住民を避難させる計画が検討され始めた程度だ。ミサイル攻撃を受けた場合、多くの国民が犠牲になる可能性がある。日本は長年、民間防衛を無視してきたと言っても過言ではない。
Q: 日本の防衛産業育成についてはどうお考えですか?
兼原: 日本の防衛産業は長年にわたり軍事関連の研究開発を制限されてきた。そのため、技術力が枯渇している面がある。一方、アメリカでは国防総省の予算から多額の研究開発費が民間企業に投じられている。これがAppleやModernaのような革新的な企業を生み出す土壌となっている。
日本も安全保障関連の技術開発に政府が積極的に投資し、その成果を自衛隊が調達するという好循環を作り出す必要がある。経済産業省と防衛省の連携を強化し、民間の技術力を防衛分野に活用する仕組みを構築すべきだ。
Q: 台湾情勢について、日本はどのような対応をすべきでしょうか?
兼原: 台湾有事は日本にとって極めて深刻な問題だ。仮に台湾海峡で戦争が起これば、日本経済に甚大な影響が及ぶ。円の暴落、インフレの加速、海上交通路の遮断などが予想される。
こうした事態を防ぐためには、まず外交的に同盟国を増やし、台湾海峡の平和と安定の重要性について国際的な合意を形成する必要がある。同時に、有事の際に実際に戦闘に参加できる国々との連携を強化することも重要だ。具体的には、日本、アメリカ、フィリピン、オーストラリア、イギリスなどが考えられる。
ただし、最終的に最も重要なのは中国共産党の出方だ。台湾に軍事侵攻しても簡単には勝てないと認識させることが抑止力となる。そのためにも、日本の防衛力強化は欠かせない。

Q: 核抑止力について、日本はどのような方針を取るべきでしょうか?
兼原: 日本は非核三原則を掲げているが、「持ち込ませず」の部分は実態と乖離している。安全保障環境の変化を踏まえ、アメリカの核兵器の日本への持ち込みを容認する方向で議論を進めるべきだ。
例えば、離島の自衛隊基地が攻撃された場合に「やり返す」と言えるだけの抑止力が必要だ。そのためには、アメリカの核兵器を日本に配備するか、少なくとも即時に展開できる態勢を整えておく必要がある。
ただし、日本は広島、長崎、そして福島第一原発事故という三つの核関連の悲劇を経験しており、国民感情として核兵器に対する強い反発がある。政府は国民を説得し、理解を得る努力をしなければならない。

Q: 最後に、日本の防衛政策全般について、どのような課題があるとお考えですか?
兼原: 日本は戦後80年近く、本格的な安全保障議論を避けてきた。しかし、国際情勢の変化を考えれば、もはやそのような態度は許されない。アメリカに頼るだけでなく、日本自身が責任を持って防衛力を強化し、同盟国との協力を深めていく必要がある。
2025年は戦後80年の節目となる。それまでに日本は自立した防衛政策を確立し、国際社会における役割を明確にしなければならない。そのためには、政府と国民が一体となって議論を重ね、具体的な行動につなげていくことが不可欠だ。
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