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トランプ関税ショックが与える不動産への影響。庶民にとってはポジティブ
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2025年4月11日

トランプ関税ショックは不動産マーケットの追い風となるのか?J-REITはどう動くのか?庶民への影響は? リーマンショックをJ-REITのトップとして経験した牧野知弘氏に聞いた。 <ゲスト> 牧野知弘|オラガ総研 代表 1959年アメリカ生まれ。東京大学卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)、BCGを...
「5年は我慢」不動産市場への関税ショックの影響とは?
米中貿易摩擦による関税引き上げの影響は、日本の不動産市場にも波及している。投資マネーの動向から不動産価格の調整、J-REITへの影響まで、専門家・牧野知弘氏が解説する。底値で買いを入れるチャンスが来るかもしれないが、その時期を見極めるのはプロでも難しいという。

「ブランド力のある物件は下げ止まりが早い」
Q: 関税の引き上げは不動産市場にどのような影響を与えますか?
タワーマンションなど外国人投資家が中心となって買っていた物件は、大きな影響を受ける可能性がある。特に外国人が引き上げることにより、資金が流出し価格が下落する動きが出てくるだろう。
中国では、個人が持っている資産の約7割を不動産が占めている。彼らが持っていたアメリカの不動産を売却して資金を確保しようとすると、アメリカの不動産市場が下落する。そして、アメリカの不動産を手放して得た資金が日本に向かうとは限らない。
Q: タワーマンション以外の場所はどうですか?
投資需要によって左右されていなかった地域は、いわば「高みの見物」の状態だ。不動産全体が下がり目に入る時は買いのチャンスで、特に狙い目は「ブランドリッチ」な物件。価格が下がっても下げ止まりが早い傾向がある。
例えば、湾岸エリアは大きな価格変動が起こる可能性があるが、青山や麻布のマンションは、外見的に価格が少し下がった時が逆にチャンスとなる。そういった場所を持っている人は大きく価格が落ちることはないので、焦って売る必要はない。

「不動産は株と違う、5年は我慢の時期」
Q: 不動産価格の調整はどのくらいの期間続きますか?
不動産価格の調整期間は通常5年、長ければ10年かかることもある。不動産は株と違って1年や2年で元に戻ることはない。金融市場の動向にも影響されるため、金融環境が改善して資金調達環境が良くなれば、不動産市場も回復する。
リーマンショック時を振り返ると、2008年の危機から5年後の2013年にアベノミクスが始まり、不動産価格が上昇し始めたものの、本格的な上昇を実感したのはその5年後の2017〜18年頃。約10年かかったことになる。
Q: 関税引き上げが資材コストに与える影響は?
意外にも、アメリカへの関税が高くなると、資材が日本に流れてくる可能性がある。アメリカへの資材輸出に関税がかかると、メーカーは他国への供給を増やす。日本はまだ建設ブームがあるため、資材の調達コストが下がる可能性がある。
また、エネルギーコストの低下や投資の減少で運搬費も安くなれば、建設費が下がる可能性もある。さらに円高になると資材輸入にはプラスに働く。
「仲介業には追い風、売り注文が増加する」
Q: 不動産市場の調整局面で儲かるのはどんな業種ですか?
不動産仲介業は、市場の調整局面でも収益を上げられる業種だ。特に売り側の仲介に入るのが有利で、焦っている売り手につくビジネスが成立する。買い側は「まだ下がる」と値踏みをするため難しいが、売り側は焦っているため仲介が成立しやすい。
Q: 賃貸市場への影響はありますか?
賃貸市場は難しい状況になる可能性がある。日本の対米輸出の約4割は自動車関連産業によるもので、自動車産業は裾野が広い。この産業全体に影響が及ぶと、企業の賃上げが控えられたり、社宅などの福利厚生費が削減される可能性がある。
その結果、不動産賃料の上昇が予想よりも緩やかになる可能性がある。不動産投資の観点では分母(不動産価格)も分子(賃料)も下がる状況となり、下落局面を迎えるきっかけとなりかねない。
「J-REITは『小さすぎる池』に大きな魚が泳げない」

Q: J-REITへの影響はどうですか?
J-REITは過去10年間ほぼ横ばいで推移し、リーマンショック後の大幅な下落からまだ完全に回復していない。今後、オフィス需要の低下や賃料の伸び悩みが起これば、さらに厳しい状況になる可能性がある。
J-REITが低迷している理由の一つは、市場規模の小ささだ。日本のJ-REIT市場は約15兆円、57銘柄程度で、時価総額1兆円を超えるのは日本ビルファンドだけ。投資家のほとんどは個人と地方銀行や新興金融機関などの中小金融機関に限られている。
アメリカのREIT市場は100兆円を超え、大手機関投資家が多額の資金を投入している。一方、日本のJ-REIT市場は「小さすぎる池」に大きな機関投資家という「錦鯉」が泳げない状態で、流動性の問題が解決されていない。

Q: 個人投資家はJ-REITを購入すべきですか?
現在のJ-REITはすでに「暴落状態」ともいえる水準にあり、さらなる下落は限定的かもしれない。5〜6%の利回りを目的に、半年から1年程度の一時避難先としてJ-REITを利用するのは悪くない選択だ。
特にホテルなどを保有するREITは配当が伸びる可能性があり、銘柄選択次第では魅力的な投資先になり得る。
「景気後退時は焦らないことが大切」
Q: 不動産不況に備えるために個人は何をすべきですか?
景気後退時には個人の努力ではどうにもならないことが多い。リーマンショック時はJ-REITの代表としてあらゆる対策を検討したが、物件を売れば資産価値が下がり、賃料を上げれば解約が増える。実質的に「打つ手がない」状態になることもある。
過度なレバレッジを使っていなければ、焦って行動せず冷静に状況を見極めることが重要だ。むしろ価格下落は自分の投資ポートフォリオを見直すチャンスになる。
どの物件が弱く、どの物件が持ちこたえているか、自分の投資の強みと弱みが明確になるので、将来マーケットが回復した際に手放すべき資産や継続して保有すべき資産を判断するための「神様がくれた時間」として活用するとよい。
バブル期に素人が多く参入した市場では、このような調整局面で撤退していくことも大切だ。投資家でない一般の人は、マーケットを見ずに本業に集中することも正解かもしれない。