
データとランキングで見る「定年後の仕事図鑑」
定年後、どんな仕事を選ぶべき?専門家が明かす高齢期の働き方指南
定年退職後の仕事選びは、これまでの働き方とは大きく異なるアプローチが必要となる。高齢期の仕事は思いのほか豊富な選択肢があり、自分に合った働き方を見つけることが可能だ。リクルートワークス研究所の坂本貴志アナリストに、定年後の仕事の選び方についてうかがった。

Q: 高齢期の仕事はこれまでと何が違うのでしょうか?
中高年期までの仕事は、転職を挟みながらもこれまでやってきた仕事の延長線上で働くことがほとんどです。例えば営業の仕事をしてきた人は営業で、経理や財務、人事の仕事をしてきた人はそれぞれの分野でパフォーマンスを出し続けるという働き方が一般的です。
しかし高齢期以降の仕事は、これまでの働き方とガラッと変わる人が多いのが特徴です。定年後の高齢期には本当にいろいろな仕事があり、その中から自分に合う仕事を選んでいくという考え方が良いでしょう。
Q: 収入面で見ると、どのような仕事が稼げるのでしょうか?
就業構造基本調査から65歳以上の方に絞って分析したデータによると、収入水準が高いのは営業の仕事や事務の仕事です。特に営業の仕事は非常に高い収入が得られます。つまり、稼げる仕事は営業でしっかり利益を出すような働き方だと言えます。
ただし、営業の仕事で70歳や75歳までパフォーマンスを出し続けられるかというと、それは非常に厳しいでしょう。営業には個人にノルマのような目標もあり、そのようなストレスを抱えながら仕事を続けるのは難しい面もあります。もう少し無理なく働きたいという場合は、他のいろいろな仕事も選択肢として考えていくと良いでしょう。
Q: 体を使う仕事は高齢者には厳しいのではないですか?
シニアの方が多く就く仕事には、確かに体を使う仕事も多いです。例えば運転手、警備員、販売員など、いわゆるエッセンシャルワーカーと呼ばれる働き方をしている方が非常に多いです。
ただ、それが非常にきつい仕事かというと、シニアの方の話を聞くとそこまできつい仕事をしている方は少ないようです。その理由としては、労働時間が短い、労働日数が少ない、あるいはきつければやめてしまうという選択肢もあるからでしょう。こうした中で自分に合った仕事を探されているのが実際のところです。
Q: シニアの方に人気の仕事にはどのようなものがありますか?
65歳以上の方が多い仕事のランキングを見ると、農業がシニアの方に非常に人気です。また、施設管理の仕事も多くのシニアの方が従事しています。
施設管理の仕事とは、ビルやマンションの管理、駐車場や自転車の管理、公園や公共施設の管理などを行う仕事です。この仕事がシニアの方に多い理由は、時間が短いことが挙げられます。平均勤務時間ランキングを見ると、シニアの方が多く従事している仕事は労働時間が短い傾向にあります。
清掃の仕事もシニアの方に人気で、平均で週20.6時間と労働時間が非常に短いのが特徴です。求職者側からすると、短い時間で働きたいと思ったときに目につく仕事と言えるでしょう。
Q: ホワイトカラーからエッセンシャルワーカーへの転身は難しくないですか?
ホワイトカラーとして働き続けてきた方がエッセンシャルワーカーのような仕事に就く際、確かに抵抗感はあるでしょう。ただ、実際にそういった形で仕事を変えられた方の話を聞くと、皆さん非常に生き生きと働いていることが多いです。現役世代の方が思われているイメージとは実態は少し違うようです。
仕事を通じて体を動かして健康になれることが良い、定期的に仕事があることで生活にリズムがつくことが良い、朝何時に起きて夜は何時に寝るというリズムがつきやすくなるといった声が聞かれます。また、販売員の仕事などでは、顧客とのやり取りや店内での交流など、人とゆるくつながれる機会があることが生活の張りになっているという声も多いです。
Q: 運転手の仕事はシニアにとって良い選択肢ですか?
運転手の仕事としては、トラック運転手やタクシードライバーが多いです。特にタクシー業界は現在非常に人手不足が深刻で、シニアの方を積極的に採用したいという企業が増えています。言ってみれば「引く手あまた」の状態です。
タクシーはしっかり働けば稼げる仕事です。会社によっては、自分が働きたい時間だけ働けるような柔軟な勤務形態を認めているところも多いので、シニアの方にとっては快適に働ける環境があります。また、運転が好きな人にとっては面白い仕事でしょう。
運転手の中には、介護施設の送迎ドライバーや幼稚園・保育園の送迎ドライバーという選択肢もあります。これらは比較的普通の車に近い大きさであれば普通免許で運転できるものも多く、ハードルはそれほど高くありません。
Q: 介護の仕事はシニアにとって厳しくないですか?
介護や保健医療サービスの分野でも、シニアの方は意外と多く活躍しています。例えばホームヘルパーとして自宅を訪問して家事に近いようなことをする方や、介護や医療業界の助手としての仕事もあります。
介護というとすごく大変なイメージがあり、実際に現役世代の方で大変な思いをして働いている方もいますが、シニアの方のデータを見ると意外と短時間で働いている方も多いです。介護だからと先入観を持って考えるのではなく、介護の分野にどのような仕事があるのか見てみることをおすすめします。
Q: 定年後の就職活動はどのように行えばよいですか?
定年後の仕事探しに特別な方法はあまりありません。多くの方の話やデータを見ると、ハローワークでの紹介、求人広告(紙や新聞のチラシ)、民間の求人広告サービス、市町村の広報紙などを通じて仕事を見つけることが多いようです。
シニア特化の求人サイトもありますし、一般の求人サイトでも「シニア歓迎」などのタグ付けをした求人も多くあります。そういった検索方法で探すと、多くの求人が見つかるでしょう。
Q: 最低賃金の引き上げはシニアの働き方にどう影響しますか?
最低賃金引き上げの影響が直接的に現れるのはシニアの方だと考えられます。シニアの方の就業率は賃金水準と関係します。例えば時給700円の仕事しかなければ働きたいとは思わないでしょうが、時給1500円もらえるとなれば「働いてもいいかな」と思う人は増えるはずです。
人手不足になれば需給が逼迫して賃金は上がり、賃金が上がれば労働参加率の上昇が起きます。こうした経路で人手不足が修正されていくのが市場メカニズムです。理論的にも考えられるところであり、今後確実にそのような展開になっていくでしょう。


Q: シニアの方にとって、定年後の仕事選びで大切なことは何ですか?
シニアの方は比較的自由に仕事を選べる立場にあります。長年ホワイトカラーで大きな企業で働いてきた方にとっては知らない世界かもしれませんが、視野を広げて先入観にとらわれずに仕事を考えることが大切です。
また、社会全体の考え方も変わってほしいと思います。シニアの方々が働いてくれることで、日本の社会で暮らす人々が快適な生活を送れていますし、社会保障制度も支えられています。現役世代の負担も考えると、シニアで一生懸命働いている方がいるからこそ年金や医療の財政も持続可能なものになっているのです。そうした働き方を社会全体で応援していくことが重要です。

