PIVOT TALK BUSINESS
「未婚化と孤独化」への警鐘
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2025年3月7日

出生率が下がり続けるなか、キャリアと結婚の両立は現代の大きなテーマだ。『罰ゲーム化する管理職』の小林祐児氏に最新の結婚事情を聞いた。 <ゲスト> 小林祐児|パーソル総合研究所上席主任研究員 上智大学大学院博士前期課程修了。世論調査機関に勤務後、総合マーケティングリサーチファームを経て、現職。専門分...
「関係構築の無限ループ」 未婚化に潜む選びすぎの罠とは
職場でも家庭でも人間関係が希薄化する現代社会。未婚率の上昇にも影響する「選択肢の罠」と「非選択的関係」の重要性について、『罰ゲーム化する管理職』著者の小林祐児氏が解説します。マッチングアプリが期待されながらも人間関係構築の根本的な解決にならない理由とは。社会関係資本を増やすためにできることについて考えます。

マッチングアプリは出会いの救世主になり得るのか?
Q: 未婚化が進む現代社会で、マッチングアプリは出会いの場として期待されていますが、実際にはどうなのでしょうか?
人々の出会いの場として機能していた職場や結婚といった従来のコミュニティが弱体化している現代社会では、その代替としてマッチングアプリが期待されています。インターネット空間では無限の出会いと選択肢が提供されているように見えます。
しかし、実際には「選べない」という問題が生じています。その理由は単純で、無限に選択肢があるからこそ「この人ではなく、次の人がいるかもしれない」という思考が続いてしまうのです。
マッチングアプリを使用していると、早い段階で関係を確定させないと、「次の人がいるかもしれない」という考えがずるずると続き、結局アプリ疲れを起こしてしまいます。これは人間関係が相互選択の構造を持つからこそ生じる問題です。自分が相手に求める条件があるように、相手も選択肢を持っています。その両者の選択が噛み合うことは、想像以上に難しいのです。

「純粋な関係性」と「非選択的要素」の重要性
Q: 人間関係において「非選択的要素」が必要だとおっしゃいましたが、それはどういう意味ですか?
人間関係を構築する上で実は「ある種の非選択的な要素」が必要です。社会学では「純粋な関係性」と呼ばれるものですが、例えば会社の同期や学校のクラスメイト、家族など、自分が選んでいないメンバーであるからこそ、ある種の絆が生まれやすいのです。
私はこれを「腐れ縁」と呼んでいますが、「自分は選んでいないけれど、なんだかんだ兄弟だから」「なんだかんだ同期だから」という関係性です。嫌な部分もあり、トラブルに巻き込まれることもありますが、何かあったら助け合えると信頼できる関係は、お互いに選び合う関係では生まれにくいのです。
これがマッチングアプリやインターネットが、人の絆や結婚を含めた深い関係性を代替できない理由の一つです。開かれすぎているがゆえに、かえって関係構築が難しくなるというパラドックスがあるのです。

未婚化が社会に与える影響とは
Q: 未婚率の増加は、社会全体にどのような影響を与えるのでしょうか?
未婚化の影響は主に二つあります。一つは、結婚したいのにできない人が増えることで、そうした人々が人生設計において不満を感じることです。
もう一つは、日本社会の特徴として「社員」という立場が強く、それ以外の立場が弱いという問題があります。家族というパートナーシップが得られなくなる中で、他に人との繋がりを作るリソースが見当たらないのです。このため、結婚しないことが孤独化に直結しやすい社会構造になっています。
ただ、「結婚しろ」と言い続けるのも現実的ではなくなってきた今、重要になるのが「社会関係資本」です。これは、人と人が信頼し合い、コミュニケーションが取れる相手との繋がりを指します。SNSで何千人とつながっていても、本当に信頼できる相手は何人いるかが重要なのです。
社会関係資本を増やすために企業ができること
Q: 社会関係資本を増やすために、企業はどのような取り組みができるでしょうか?
企業は社会関係資本を構築するための貴重な場になり得ます。特に「学び」を通じて社員同士の関係を復活させることが重要です。研修や選抜クラス、勉強会などは、自分では選んでいないメンバーと出会う機会を提供します。
しかし、よくある失敗は「研修して、はい、さようなら」で終わってしまうことです。せっかく集まった人たちなのに、次に会うのが何年も先というケースが多いのです。研修後に懇親会を設けたり、数ヶ月後に再会の機会を作ったりすることで、関係性を継続させる工夫が必要です。
多くの企業で社員同士の横のつながりが薄くなっていると言われますが、単純に「コミュニケーションを取りましょう」という施策は、コミュニケーションが苦手な人やそもそもしたくない人を排除してしまいます。むしろ、コミュニケーションを直接的な目的にするのではなく、学びや悩み相談会など、別の目的を立てた上で、そこに集まった人たちの関係性が続く機会を提供する方が効果的です。

個人が社会関係資本を増やすためにできること
Q: 個人が社会関係資本を増やすために、日常生活でできることはありますか?
企業の外、つまり地域やプライベートな生活においては、個人の努力が重要になります。例えば、NPO活動に参加したり、地域のお祭りの神輿担ぎに参加したりするのも一つの方法です。より身近なところでは、近所の居酒屋やカフェで常連になり、そこにいる人たちと徐々に関係を築いていくことも有効です。
地域活動は「開かれつつある程度閉じている」特性を持っています。一度参加すれば、中には合わない人もいるかもしれませんが、長年関わることで何かあった時に助け合える人間関係が形成されていきます。
「選択肢があることがいい」と思いがちですが、選択肢が多すぎると選べなくなります。むしろ、ある種の「腐れ縁」的なコミュニティを見つけたり、自ら作ったりしていくことが、未婚化や孤独化が進む社会において重要なのです。
私たちは「出会いがない」と嘆く前に、自分からコミュニティに飛び込む勇気を持つことが必要なのかもしれません。