PIVOT TALK BUSINESS
結婚できない男・結婚しない女
(231)
1.2万回視聴
2025年3月6日

出生率が下がり続けるなか、キャリアと結婚の両立は現代の大きなテーマだ。『罰ゲーム化する管理職』の小林祐児氏に最新の結婚事情を聞いた。 <ゲスト> 小林祐児|パーソル総合研究所上席主任研究員 上智大学大学院博士前期課程修了。世論調査機関に勤務後、総合マーケティングリサーチファームを経て、現職。専門分...
結婚できない男性、結婚しない女性のリアル:その原因は職場環境と昇進システムにあった
近年、日本では未婚率の上昇が続いており、「男性の4人に1人は生涯未婚」とも言われるようになりました。この現象の背後には、企業の職場文化や昇進の仕組みに根本的な要因があるようです。『罰ゲーム化する管理職』の著者である小林祐児氏が、日本社会における未婚化の実態と原因を解説します。

職場が結婚の出会いの場ではなくなった理由とは?
Q: 日本企業の職場文化と昇進の仕組みが結婚の動向にどう影響しているのですか?
日本は国際比較でも職場や仕事の関係からの出会いが最も多い国でした。かつては「職場結婚」が一般的で、会社が人と人をつなぐ媒介として大きな役割を果たしていました。しかし、1970年代以降、未婚率が徐々に上昇。その原因の約5割がお見合い結婚の減少、そして約4割が職場結婚の減少によってもたらされたと分析されています。
つまり、職場での男女の出会い方が変化したことが、日本全体の未婚率上昇と強く関連しているのです。

ハラスメント防止が「おせっかい力」を弱めた
Q: なぜ職場での出会いが減少したのでしょうか?
「職場のおせっかい力」と呼ばれる文化の衰退が大きな要因です。かつては上司が「あの人がいいんじゃないか」と部下を紹介したり、飲み会の席で縁をつないだりする文化がありました。しかし、80年代後半からセクハラという概念が登場し、「未婚の人に結婚について触れるのはマリッジハラスメント」という認識が広がりました。
さらに、コロナ禍でテレワークが普及し、職場の飲み会や懇親会が減少。これらが重なり、会社を通じた出会いの機会は大きく縮小しました。上司は「ハラスメントになるかもしれない」と考え、コミュニケーションそのものを形式化・最小化する傾向が強まっています。

女性の活躍と上方婚志向が未婚化を加速?
Q: 女性の社会進出は未婚化とどのように関連していますか?
女性の社会進出と「上方婚志向」(自分より年収が高い相手と結婚したいという願望)の組み合わせが未婚化を加速させています。男女雇用機会均等法以降、女性の地位や年収が徐々に上がってきましたが、上方婚志向は消えず、むしろ強まっているデータもあります。
結果として、①年収の低い男性が結婚できなくなる、②年収の高い女性も自分より収入の高い男性が少ないため結婚しにくくなる、という状況が生まれています。数字で見ると、男性の未婚率は年収と強く関連し、低収入層ほど未婚率が高い傾向があります。女性も高収入層では未婚率が上昇しています。

日本型昇進システムが男女双方を苦しめる理由
Q: 日本企業の昇進システムはどのように結婚に影響していますか?
日本企業の昇進システムは「平等主義的競争主義」とも呼べる特徴を持っています。新卒者は原則として全員が管理職候補とされ、「オプトアウト方式」(自ら辞退しない限り選抜レースに残り続ける)を採用しています。
この制度の問題点は:
1. 昇進までの時間が非常に長い(課長・部長への昇進が40代とか20年近く働いてから)
2. 女性は出産・育児のタイミングで「私なんて」と自ら辞退する形でキャリアトラックから外れやすい
3. 男性は特に何もしなくても「管理職候補」であり続けるため、優遇されている感覚がなく、結果的に「下駄を履かされる」
このシステムでは、結婚のタイミング(平均27〜28歳)が、自分が出世できるかどうかわかる前に来るため、女性は「稼げる男性」を求め、自らは家庭を優先する選択をしやすくなります。男性は収入を上げないと結婚できない圧力を感じる構図になっています。
未婚化対策には昇進システムの改革が必要?
Q: この状況を改善するためにどのような対策が考えられますか?
小林氏は、日本の昇進レースを短くし、女性に早い段階で手厚い育成機会を与えることが重要だと指摘します。具体的には:
1. 入社5年程度(25〜26歳まで)で経験を積ませた後、早めに管理職候補を選抜する
2. 女性に手厚くリーダーシップの経験を与え、「期待されている」という意識を持たせる
3. リーダー育成コースなど特別選抜プログラムを設け、女性が「私なんて」と思わないようにする
しかし、平等を重んじる日本の企業文化では、こうした「エリート化」への抵抗感が強く、改革が進みにくいのが現状です。

結婚そのものに対する意識も変化している
Q: 未婚化は希望の変化も影響していますか?
最近では結婚自体を望まない人も増加傾向にあります。「一生結婚するつもりはない」と答える人の割合が2021年頃から上昇し、特に女性では「結婚せず仕事を続ける」ライフコースを理想とする人が5%から約12%に、予想する人が21%から33%に増加しています。
これは結婚が「選択肢の一つ」になり、必ずしも必要ではないという価値観の変化を示しています。また、結婚できる見込みが少ないと感じて、願望を下げる心理的適応も起きているかもしれません。
インターネットは出会いの代替になるか?
Q: マッチングアプリなどのオンラインの出会いは解決策になりませんか?
インターネットは無限の出会いの可能性を提供しますが、選択肢が多すぎることで「この人ではない、次の人がもっといいかも」という思考に陥りやすくなります。人間関係の形成には「ある程度閉じた環境」が重要で、選択肢の無限さはかえって関係形成を難しくするという面があります。
未来に向けては、個人がどれだけコミュニティを持ち、作れるかが重要になってくるでしょう。
----
現代の未婚化問題は、単なる個人の選択ではなく、日本社会の構造的な問題が背景にあります。職場環境、昇進システム、ジェンダー規範の変化など複合的な要因が絡み合い、今日の状況を生み出しています。これらへの対応なくして、未婚化の流れを変えることは難しいかもしれません。