
テレビCMはYouTube広告に食われるのか?
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2025年3月4日
急速に視聴者数を伸ばすYouTube。今後、YouTubeはテレビCMのマーケットを食っていくのか?マーケターはテレビCMとYouTubeをどう組み合わせていくべきなのか?テレビCMの効果分析などを行うREVISIOの郡谷康士CEOに最新事情を聞いた。 <ゲスト> 郡谷康士|REVISIO CEO...
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テレビCM VS. YouTube、マーケティングの新時代が始まっている
テレビとデジタルメディアの境界線が急速に曖昧になりつつある今、マーケティング担当者たちは大きな転換点に立たされている。日本のテレビ視聴環境は過去数年で劇的に変化し、特にコネクテッドTV(CTV)の普及率は急上昇中だ。このような変化の中、従来のテレビCMとYouTubeなどのデジタル動画広告の関係性はどうなっているのか? REVISIOのCEO郡谷康士氏に最新動向を聞いた。

テレビ広告とYouTube、対立ではなく「かける」関係に
Q: 最近のテレビとデジタルメディアの視聴傾向に変化はありますか?
テレビの視聴環境は急速に変化しています。特に注目すべきは、コネクテッドTV(CTV)と呼ばれるYouTubeやNetflixなどをテレビで視聴する時間が、わずか2年で倍増していることです。テレビ画面での視聴時間全体のうち、従来の地上波テレビ視聴は減少傾向にある一方、CTVの視聴時間は24%にまで増加しました。

Q: アメリカではどのような状況ですか?
アメリカではCTVの割合がすでに40%近くに達しています。また広告費の面でも、テレビに出している広告費の約2割がCTV向けに流れています。一方、日本ではCTV向け広告費はまだ4%程度と、視聴時間とのギャップが大きい状況です。
Q: 昨年からの変化として特筆すべき点はありますか?
大きな変化として、YouTubeの視聴率が日本のテレビ局を初めて上回りました。以前は日本テレビが1位でしたが、ついにYouTubeが首位に立ちました。ただし、これは地上波テレビの視聴率が急激に落ちているわけではなく、YouTubeの視聴率が着実に伸びてきた結果です。

Q: フジテレビのCM停止問題は視聴者や広告主にどのような影響を与えていますか?
視聴者側から見ると、実際にはあまり変化を感じていないようです。REVISIOのデータによると、フジテレビの視聴率は会見があった前後でも特に変化はなく横ばいを維持しています。
一方、広告主側は「出す場所がない」という問題に直面しています。日本の主要5局のうち1局に広告を出せなくなったことで、他の放送局やデジタルメディアに予算を振り替えようとしていますが、特に春休みシーズンは他の局も混雑しており枠が空いていません。YouTubeなどのデジタル媒体も値上がりしています。

マーケティングの複雑化とテレビの価値
Q: なぜテレビ広告は減少せず維持されているのでしょうか?
テレビはいまだに「手っ取り早くマスに届く方法」として重宝されています。デジタル広告は効率的にターゲットを絞れる一方で、「自分に興味がない人にも知ってもらう」という点では相対的に苦手です。日用品や飲料など大量生産品を販売するマーケターにとって、興味が薄い層にも届けることは非常に重要で、その点でテレビはまだ強みを持っています。
面白いことに、最先端企業でさえこの価値を認識しています。例えば、OpenAI(ChatGPT)は今年アメリカのスーパーボウルでCMを出稿しました。テクノロジー企業の代表格でさえ、さらなる成長のためにはテレビCMの力を活用しているのです。
Q: これからのマーケティングはどう変わっていくのでしょうか?
従来の「マス一辺倒」「テレビ一辺倒」の時代は終わりつつあり、マーケティングはより複雑化していきます。日本ではテレビというマスメディアが非常に強かったため、マーケティングをシンプルに行うことができました。しかし今後は、視聴環境の変化に合わせて広告戦略も多様化していく必要があります。
アメリカの事例を見ると、従来のリニアTV(地上波)からCTVへの移行が進む一方で、デジタル広告の予算内でも配分が変化し、大画面のテレビでの動画広告への投資が増えています。これは単にテレビからデジタルへの移行ではなく、デジタルの中でも動画、特に大画面での視聴体験を重視する流れです。
データとデバイス特性から見るマーケティングの未来
Q: マーケターが直面している課題は何ですか?
最大の課題はデータの分断です。YouTubeのデータは非常に詳細ですが、その視聴者が地上波テレビや他のストリーミングサービスをどれだけ視聴しているかは分かりません。マーケターは様々なプラットフォームに広告を出す必要がありますが、横断的なデータがないため最適な配分が難しいのが現状です。
Q: デバイスによって広告の効果は違いますか?
デバイスの特性に合わせたフォーマットが重要になっています。スマートフォンでは縦型動画が主流となり、TikTokのように短い動画が好まれる傾向にあります。一方で長尺コンテンツは大画面のテレビで視聴する方が適しています。
同じ1インプレッションでも、大画面のテレビで見る広告の方が小さなスマホ画面で見るものより効果が高いという研究結果もあります。そのため、デジタル広告費の中でもテレビ画面向けの予算が増加傾向にあります。
Q: 日本のCTV視聴率はこれからどうなると予測されますか?
現在24%のCTV視聴率は成長途上で、アメリカの42%に向けてまだ伸びる余地があります。過去数年の傾向を見ると、日本でも毎年5-6%ずつ増加しており、このペースが続けば2026年頃には40%に達する可能性もあります。
Q: 今後のマーケティングで重要なポイントは何ですか?
テレビとYouTubeは「VS(対立)」ではなく、「かける(掛け合わせる)」関係になっていくでしょう。単に予算をテレビからデジタルに移すのではなく、それぞれの特性を理解し、複数のプラットフォームにまたがる統合的な戦略が求められます。
広告費の配分だけでなく、データインフラをどう構築し、テレビとYouTube、TVerなどを一緒に見ていく土台作りが大きなチャレンジです。マーケターはこれまでのようにテレビに予算を「ドカン」と投入するだけでは不十分で、より複合的な視点が必要になっています。
同時に、メディア環境の変化は「共通認識」の形成にも影響を与えます。多様なチャンネルを個々人が選択する時代においては、社会全体での共通体験が減少し、常識や共同認識が生まれにくくなる可能性もあります。この点はマーケティングを超えた社会的な課題として考える必要があるでしょう。
