
人を動かすための「問いかけ」と「伝え方」
効果的な問いかけと明確な伝え方 - ビジネスリーダーのための言語化スキル
ビジネスシーンでの問いかけや伝え方に悩んでいるリーダーは多い。言語化コンサルタントの木暮太一氏に、効果的な問いかけの方法や伝わる言語化のコツについて聞いた。

Q: ビジネスにおいて問いかけの言語化が必要なシチュエーションはどのような時ですか?
役職や立場によって異なりますが、基本的に問いかけるということは、相手と自分の間に不明確な点があり、それを質問によって互いに明らかにしようという意図があるはずです。ただ、この点を意識していない人が多いのが現状です。
問いかける前に「何を明らかにすればお互いにクリアになるか」という観点から考えることが重要です。例えば営業担当者がクライアントにプレゼンをした後、相手の反応が曖昧な場合、何を問いかければ良いかは「何を明らかにすれば良いか」に直結します。相手が納得していないポイントなのか、価格面での懸念なのか、何が不明確なのかを特定することが先決なのです。
リーダーが部下に問いかける際のポイント
Q: リーダーが部下に仕事の進捗を確認する際、効果的な問いかけ方はありますか?
問いかけの前提として「明確な指示をしていたか」という点が非常に重要です。曖昧な指示をしておいて進捗を確認しても、相手は何を答えて良いか分からないでしょう。
まず、お互いにタスクリストとして整理できているかを確認します。10個のタスクがあるなら、そのうち何個完了しているかといった具体的な確認が可能になります。
また、「何か困っていることがあれば何でも言ってね」というのは実は非常に答えにくい問いかけです。上司が忙しそうに見えたり、緊張感のある雰囲気だったりすると、部下は「大丈夫です」としか答えられないことが多いのです。

言いづらいことを引き出す「例出し」の技術
Q: 部下が本音を言えないときに、どうやって真意を引き出せばいいのでしょうか?
リーダーが問いかける時には必ず「例」を出すことが効果的です。「例えば進捗は50%くらい?」のように具体的な数字を示すと、「いえ、50%はいっていなくて、30%程度です」といった形で状況が明らかになり、次の問いかけができるようになります。
部下が言いづらそうにしているときは、こちらから予想される状況を提示するのも有効です。「全然進んでいなくて、明日の締め切りに間に合わないのでは?」と思い切った仮説を投げると、「そこまでではないんですが、AとBとCのどれを優先すべきか迷っています」といった本音が出やすくなります。
ポイントは「そうじゃなくて、こうなんです」と部下に言わせることです。あまり的確に当てすぎると単なる否定で終わってしまうので、あえて外れた仮説を投げることで相手の本音を引き出せます。

簡単に実践できる「数から伝える」テクニック
Q: 分かりやすく伝えたつもりでも伝わらなかった場合、どう解決すればよいですか?
伝わる言語化のために極めて効果的なのが「数から考える」方法です。人に伝える時に「数」から伝えていくのです。例えば「これには2つの方向性があって」「大きく分けると3種類になります」のように数から答えることで、自分と相手の頭の中で共通認識を持てるようになります。
数で整理することで、分かっていないところが区分けされ、相手も「2番目がよく分からなかったのですが」と質問しやすくなります。これによって「伝えたつもりでも伝わっていなかった」という事態の検証ができるのです。
ただし、これはビジネスの場での話です。プライベートで「今日の夕食は3つありまして」などと言ったら関係性が崩れる可能性があるので注意してください。

なぜ「分かる」は気持ちいいのか
Q: 言語化がうまくいくと、なぜこんなに気持ちが良いのでしょうか?
「分かる」という感覚は人間にとって深く根ざした喜びです。以前、経済ニュースの解説本を出した際、自称キャバクラ嬢の31歳の方から「先生すごいよ。分かるって楽しいね」というメールをもらったことがあります。おそらく経済の話に触れる機会が少なかった方が、分かりやすい解説に触れて喜びを感じたのでしょう。
誰かに理解してもらえること、また何かを理解できることは、それだけで人生の質を高めてくれます。自分が何をしているのか分からない状態よりも、明確に理解できている状態の方が毎日が楽しいものです。
同様に、「この人が何を考えているか分からない」よりも「この人はこう考えているんだ」と理解できる方が、信頼関係も築きやすくなります。適切な言語化によって組織内の関係性も良くなり、働く意欲や生産性にも本当の意味で繋がっていくのです。
