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就職氷河期世代は割を食ったのか?:永濱利廣vs.海老原嗣生
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2025年2月26日

就職氷河期世代に関する議論が盛り上がっている。この世代は本当に割を食ったのか?予算をつけて支援策を打ち出す必要はあるのか?エコノミストの永濱利廣氏と、雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏に議論してもらった。 <ゲスト> 永濱利廣|第一生命経済研究所 首席エコノミスト 早稲田大学卒業、東京大学大学院経済...
就職氷河期世代は本当に「割りを食った」のか? 識者が語るデータから見える現実
「就職氷河期世代は割りを食った」という言説はどこまで正しいのか。大和生命経済研究所シニアエコノミストの永濱利廣氏と雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏が、データを基に真相に迫る。


Q: 就職氷河期世代とは何ですか?
一般的に1990年代後半から2000年代前半に就職活動をした世代を指す。バブル崩壊後の景気低迷期に社会人としてのスタートを切ることになり、新卒採用の大幅縮小や雇用環境の悪化により、正社員になれない若者が多く発生した時期だ。
この世代の就職難は社会問題として認識され、現在まで政府による支援策が続いている。しかし、実際にどれほど「割りを食った」のか、そしてそれは一律の現象だったのかについては議論がある。
Q: 就職氷河期世代は本当に「割りを食った」のでしょうか?
データから見ると、就職氷河期世代は確かに一定の不利益を被っていることが分かる。
永濱氏によると、正社員比率に関しては政府の対策などもあり改善がみられるものの、賃金カーブは下降している点が問題だ。就職氷河期以降の世代は、それ以前の世代と比較して賃金の伸びが鈍く、その影響で金融資産の形成も遅れている。
例えば、40代で見ると就職氷河期世代は100万円未満の金融資産しか持っていない割合が高く、新人類世代やバブル世代と比べて資産形成が遅れている。また、将来の年金受給額においても、1959年度生まれの平均年金月額が12万1000円であるのに対し、就職氷河期世代は11万9000円と若干低い数字になっている。
Q: しかし、「割りを食った」という認識は誇張されているのでしょうか?
海老原氏は、就職氷河期世代の問題が過度に強調されていると指摘する。データを詳細に分析すると、全員が均一に大きな不利益を被ったわけではなく、「グラデーション」で捉えるべき問題だというのだ。
海老原氏は重要な観点として、学歴と性別で大きな差があることを強調する。特に高卒者と女性の非正規雇用率が高く、問題の本質は製造業の空洞化や農林水産業の衰退、公共事業の縮小による高卒向け雇用の減少にあるという。
「大卒男性の中で正社員になれなかった人の割合は5%程度。これに大量の予算を投じ続けるのは疑問です」と海老原氏は指摘する。
Q: 就職氷河期世代の採用状況はどうだったのですか?
海老原氏によると、2000年から2003年頃が最も厳しい時期で、卒業生の約27%が無業状態だった。ただし、決して全員が就職できなかったわけではない。
大企業(1000人以上)への就職に関しては、25年間の平均が約10.7万人であるのに対し、最も厳しい時期でも8.7万人が大企業に就職している。これは確かに2万人ほど少ないが、「誰も彼もが就職できなかった」という極端な状況ではなかった。
また重要なのは、就職時に正社員になれなかった人々もその後正社員になっていったという事実だ。2000年卒業者のその後を追跡したデータによると、卒業後1年以上経って正社員になった人が11万1000人以上いることが分かっている。
「日本は既卒からの採用がかなり多い国です。新卒時点で正社員になれなかった人も、その後10年程度の期間で吸収されていきました」と海老原氏は説明する。

Q: 賃金カーブの低下は就職氷河期世代特有の問題ですか?
実は、40〜50代の年収低下は就職氷河期だけの問題ではなく、別の構造的変化が影響している。
海老原氏によれば、2000年から2010年の間に定年が60歳から65歳に延長されたことで、企業は人件費を調整するため40代から50代の賃金を下げる施策を導入した。つまり、これは就職氷河期だけでなくバブル世代も影響を受けている全世代的な現象だ。
「60歳で退職していた人たちは50歳分の給与しかなかった。今は65歳まで働けるので、総額としては同等以上になる可能性もあります」と海老原氏は指摘する。
Q: 政府の就職氷河期対策はどうだったのですか?
海老原氏によれば、2003年から様々な支援策が実施され、数千億円の予算が投じられてきた。
2003年には「ヤングジョブスポット」が設置され、2004年には526億円の予算でジョブカフェやトライアル雇用制度が導入された。特にトライアル雇用は効果的で、企業は助成金を受けながら正社員候補を試用できるようになった。
その後も若者サポートステーションや新卒ハローワーク、ジョブサポーターの配置、ジョブカード制度など多様な支援策が実施されてきた。
しかし海老原氏は「これだけ対策をしてきて、30代の時点でほとんど問題は解消しているのに、いまだに『就職氷河期世代対策』として予算が割かれ続けています」と疑問を呈している。

Q: 今後の雇用政策はどうあるべきでしょうか?
両氏は「就職氷河期世代」としてひとくくりにするのではなく、本当に支援が必要な層に焦点を当てるべきだと主張する。
永濱氏は「就職氷河期世代をターゲットにした政策には反対です。世代関係なく苦しい人を救う方向で進めるべきです」と語る。
海老原氏も「就職氷河期世代の非正規の内訳を見ると、大卒男性は8万人程度で少数。主婦が104万人、女性独身者が40万人、非大卒男性も多数います。性別や学歴による格差の方が大きな問題です」と指摘する。
また近年は大学進学率の上昇によって大卒者が増える一方、企業の受け入れ能力が追いついておらず、大卒者のブルーカラー化が進んでいる点も懸念材料だ。
両氏は「世代間格差」という枠組みよりも、性別や学歴による格差、そして産業構造の変化に対応した職業訓練や教育の充実が重要だと結論づけている。