PIVOT TALK BUSINESS
歩く5つの効果。脳のサイズが大きくなる
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2025年2月12日

歩くことは本当に体にいいのか?座りすぎはなぜ「新しい喫煙」と呼ばれるのか?本当に体にいいシューズとは何か?「歩く」をテーマに徹底リサーチした、NewsPicksの池田光史氏に話を聞いた。 <ゲスト> 池田光史|経済ジャーナリスト 1983年鹿児島生まれ。東京大学経済学部卒業後、ダイヤモンド社入社。...
歩く都市、歩く人間:創造性と健康を取り戻すライフスタイルの再発見
歩くことは我々の健康や創造性にとって、想像以上に重要な行為だった。現代人のライフスタイルが「座りすぎ」という危険な方向に進む中、人類本来の姿に立ち返る必要があるのかもしれない。NewsPicksのチーフメディアオフィサー池田光史氏が「歩く」をテーマにした著書を出版。その背景にある研究結果や人類の歴史的視点から、歩くことの重要性を語った。

Q: なぜ「歩く」というテーマにこれほど大きな興味を持ったのですか?
人類を人類たらしめた本質的な特徴は直立二足歩行です。しかし現代人はテクノロジーの発展により、移動しなくてもできることが増え、歩かなくなっています。私自身、取材で外に出る仕事から、家でオンライン会議をする仕事に変わっていく中で、人間の本質的な活動である「歩く」ことができなくなっていることに気づきました。
また子育ての視点からも、都会で育った自分が子どもをコンクリートジャングルで育てる自信がなく、山に連れて行って歩かせるなど試行錯誤していました。子どもが「サイズの大きい靴なのに足の小指側が痛い」と言うので、足の形に合った自然な形の靴を履かせたところ、上の子(小学2年生)が1日20km弱も余裕で歩けるようになったのです。

Q: 座っていることは本当に体に悪いのでしょうか?
調査によれば、座りすぎは体に極めて悪影響を及ぼします。長時間座り続けると体内で様々な変化が起き、それは運動では取り返せない悪影響をもたらします。これについては多くの研究論文が存在します。
人々は平均して1日約9時間座っており、これは平均睡眠時間より長いのです。子どもたちも学校で長時間座らされている状況です。大学の授業で90分座らせているのも、実は身体に良くないかもしれません。
AppleWatchのスタンド機能は1時間に1回立ち上がるよう促しますが、これは理にかなっています。1時間以上座り続けることは避けるべきです。人類の体は座り続けることを前提に設計されていません。20万年前から人体の設計は大きく変わっておらず、当時は常に歩き回って食べ物を求めていたため、座り続ける生活は人体の設計に合っていないのです。

Q: 歩くことは具体的にどのように体に良いのですか?
歩くことには主に5つの効果があります:
1. 血糖値や血圧が下がる
2. 長生きする
3. がんや心疾患のリスクが下がる
4. 不眠が改善し、ストレスも減る
5. 脳卒中リスクが下がる
特に注目すべきは、クリエイティビティ(創造性)が向上するという研究結果です。スタンフォード大学の研究によると、座っている人と歩いた後でクリエイティビティテストを受けた人を比較すると、歩いた人の方が圧倒的に好成績でした。
さらに驚くべきことに、歩くと脳のサイズが大きくなります。通常、海馬という脳の領域は年齢とともに年に1~2%自然と縮小していきますが、週に3回、1回40分程度のウォーキングをすると、縮小するどころか1年で2%大きくなるというエビデンスがあります。
これらの効果は、単に「歩くとこんなに良いこと」があるという話ではなく、人間が本来持っている機能を取り戻すという意味合いが強いのです。現代人は歩かなくなったことで様々な不具合が生じており、歩くことでマイナスを0に戻す効果があると考えられます。

Q: 自然の中を歩くことと都市部を歩くことには違いがありますか?
自律神経失調やストレスホルモン(コルチゾール)のレベルを下げる効果は、都市部を歩くよりも自然の中を歩いた方が高いという研究結果があります。この研究は千葉大学のチームが約15年にわたって行っています。その結果、「森林浴」(Forest Bathing)という言葉は英語でも通じる国際的な用語になっています。
室内よりも室外、都市部よりも自然の中を歩く方が、心身ともに大きな効果が得られるようです。
Q: 日本は世界的に見て歩きやすい国なのでしょうか?
世界の1日あたりの平均歩数で比較すると、日本は上位5カ国の4位に入っています。歩いていない国の特徴としては、暑い気候、治安の悪さ、交通事情(歩道にバイクが乗り上げるなど)が挙げられます。
最も歩いている香港は、日常生活のほとんどを公共交通機関で移動し、そこからの「ラストワンマイル」を歩くライフスタイルが定着しています。
日本は歴史的にも「歩く先進国」でした。特に江戸時代は旅文化が盛んで、わらじという優れた履物を使って多くの人々が歩いて旅をしていました。松尾芭蕉もわらじに並々ならぬこだわりを持っていたという記録も残っています。
現在の日本には、全国に長距離自然歩道が整備されていますが、あまり知られていません。例えば高尾山は東海自然歩道の起点で、大阪の箕面まで全て整備されているのです。
Q: 歩けない国・歩ける国の違いは何ですか?
アメリカは「歩けない国」と言われていますが、これは治安の問題もありますが、主に自動車中心の都市設計にあります。ニューヨークのタイムズスクエアは歩行者天国になっていますが、それ以外の場所は基本的に車がなければ移動が難しい設計になっています。
一方、世界の歩きやすい街ランキングではヨーロッパの都市が上位を占めています。東京も評価が高く、特にウォーキングコースの数が評価されています。高尾山は年間登山者数でギネス世界記録を持っており、奥多摩は日本一の巨木の本数を誇ります。
Q: 未来の都市はどのように変わっていくと思いますか?
未来の都市は歩きやすさを重視したデザインになっていくでしょう。現在、世界中の車のうち約7割は駐車されたままの状態です。自動運転技術が進むと、都市から駐車場がなくなり、その場所に緑や公園を作ることができます。
例えばテスラのイーロン・マスクは、自動運転技術を使って都市を再設計する可能性を示唆しています。彼の真の関心は「車を所有すること」ではなく、モビリティの再定義かもしれません。人間の本質的なモビリティである「歩く」を中心に据えた都市設計が、未来には実現するかもしれないのです。
Q: 本日のテーマのまとめをお願いします
歩くことは人類を定義する本質的な行為です。現代社会では座りすぎや歩かなさすぎが問題となっており、これが健康やクリエイティビティに悪影響を及ぼしています。
歩くことには血圧や血糖値の低下、がんや心疾患リスクの減少、不眠やストレスの改善、脳卒中リスクの低下など様々な健康効果があります。さらに創造性の向上や脳の海馬を大きくする効果も科学的に証明されています。
日本は歩きやすい国として世界的に評価が高く、歴史的にも「歩く先進国」でした。東京は特にウォーキングコースが充実しており、世界的に見ても歩きやすい都市です。
未来の都市設計では、歩くことを中心に据えた設計が重要になってくるでしょう。自動運転技術の発展により、駐車場のスペースが緑地や公園に変わり、より歩きやすい環境が整うかもしれません。
人間本来の姿に立ち返り、もっと歩くことで、健康で創造的な生活を取り戻せるのです。