PIVOT TALK BUSINESS
財務のプロが分析。フジテレビの実態
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2025年2月10日

スポンサーの広告出稿激減により、業績の下方修正を発表したフジテレビ。財務のプロから見た、フジテレビの課題とは何か?ファンドの要求は正しいのか?今後、資金繰りは持つのか?財務戦略アドバイザーの田中慎一氏に分析してもらった。
フジテレビの財務分析から見える日本企業の課題 - ROEと生産性の日米格差を解説
テレビ局をはじめとする日本のメディア企業は不動産事業で稼ぎ、本業の利益率は低い。アメリカのメディア企業と比較すると資本効率の差は歴然としている。なぜこれほどの差が生まれるのか?財務戦略アドバイザーの田中慎一氏がデータに基づいて解説する。

Q. フジテレビの業績はどのような推移をしているのか?
フジテレビの売上高は10年間であまり伸びていません。営業利益と最終利益も長期的なトレンドで見ると大きく伸びていないのが現状です。ただし急落もしていないため、そこまで危機感を持たれていない面もあります。
最終利益については保有株の売却によってかさ上げされている部分があります。これはフジテレビだけでなく、テレビ・メディア各社や日本企業全体に見られる傾向です。純粋なビジネスの実力を見るなら営業利益を見る必要があります。
営業利益率の推移を見ると、フジテレビは直近で6%程度。日本の上場企業全体の平均が6.9%程度なので、平均並みかそれを少し下回る水準です。しかし、フジテレビが属する「情報・通信」業界の平均は11.3%なので、業界内では収益性に課題があると言えます。

Q. ROE(自己資本利益率)とROA(総資産利益率)はどうなっているのか?
資本効率を示すROEとROAを見ると、フジテレビのROAは2%台、ROEは4%台と低い状況です。日本の上場企業の平均がROAで5%、ROEで10%弱なので、かなり見劣りします。投資家が会社に期待するのは、投下した資本をいかに効率的に使ってくれるかという点です。この面でフジテレビは厳しく見られています。
こうした状況を考えると、アクティビストファンドが参入してくるのは必然の流れと言えます。アクティビストファンドは過小評価されている企業、つまり本来の実力より株価が低く、伸びしろがある企業をターゲットにします。

Q. フジテレビの収益構造はどうなっているのか?
売上高の構成を見ると、伝統的なメディアコンテンツ事業で売上の約75%を獲得しています。しかし営業利益で見ると、実は半分以上が不動産事業から生まれています。
日本のメディア企業が不動産で稼いでいるのは特徴的です。純粋にメディアだけでビジネスをしている企業は世界的に見ても少なく、多角化すること自体は問題ではありません。しかし、アクティビスト投資家からすると「不動産があるから安心してメディア事業に力を入れていない」と見られる可能性があります。
不動産事業で儲けているなら、その収益をさらに不動産に再投資すべきという考え方もあります。しかし実際には、不動産で稼いだお金がメディア事業に使われている可能性があり、投資家はこうした資金の流れを嫌います。
Q. 日本のメディア企業とアメリカのメディア企業の差はどこにあるのか?
株価純資産倍率(PBR)を見ると、日本のメディア企業はみな1倍割れしていますが、アメリカの大手メディア企業は1.7~2倍程度あります。
PBRは株価収益率(PER)とROEに分解できます。PERは企業の成長性を示す指標で、日本もアメリカも「オールドメディア」は成長性があまり期待されていないため、どちらも低い傾向にあります。
しかし決定的な差はROEにあります。日本の民放各社が5%前後なのに対し、アメリカのメディア企業は15~27%と圧倒的に高い水準です。

Q. なぜアメリカ企業のROEは高いのか?
ROEは①利益率、②資産回転率、③財務レバレッジの3つに分解できます。
まず利益率で見ると、日本企業は営業利益率が低い傾向にあります。アメリカの主要メディア企業の利益率は15~20%と高く、収益に対する意識の違いが表れています。
資産回転率はそれほど大きな差はありません。アメリカの大手企業も買収を繰り返して成長するため、バランスシートが膨らみやすく、資産回転率が低くなる傾向があります。
最後の財務レバレッジでは、アメリカ企業の方が借入金を効果的に活用しています。借入金は株式よりもコストが安いため、安定した事業であれば積極的に借入を使った方が良いのです。アメリカ企業はこの点で非常にアグレッシブです。
日本企業の場合、ソフトバンクグループの孫正義氏のような戦略を取る企業もありますが、多くの企業は借入を効果的に使いこなせていません。
Q. 労働生産性の面でも日米に差があるのか?
一人当たりの営業利益を見ると、フジメディアホールディングスは430万円弱で、日本の上場企業の平均(100~200万円)と比べると高い方です。しかしアメリカのコムキャストは約2,000万円と、圧倒的な差があります。
この差は業界を問わず、日米企業の比較で共通して見られます。単純な能力や地頭の差とは考えにくく、デジタル技術の活用方法や働き方の違いが関係していると考えられます。
例えばデンマークの企業では、多くの社員が17時には帰宅するにもかかわらず、高い生産性を実現しています。無駄を徹底的に省き、使えるツールは何でも活用するなど、効率性を重視する文化があります。
日本企業が資本効率や労働生産性を向上させるには、こうした点から学ぶべきことが多いでしょう。