EDUCATION SKILL SET
スタンフォード式「才能を潰さない教育」
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2025年1月29日

全米トップ校・スタンフォードが中高生に教えていることは何なのか?日本のオンライン校の今後はどうなるのか?校長の星友啓氏に聞く。 <ゲスト> 星友啓/スタンフォードオンラインハイスクール校長・哲学博士 2008年Stanford大学哲学博士修了後、同大学哲学部講師として論理学で教鞭をとりながら、St...
スタンフォードオンラインハイスクールが教えること - 世界最先端の教育とテクノロジーの融合
スタンフォード大学のオンラインハイスクールで校長を務める星友啓氏が語る、最先端の教育手法とエドテックの可能性。伝統的な「学年」の概念を取り払い、生徒一人ひとりの才能と情熱に合わせた学びを提供する新しい教育の形を探ります。

Q. スタンフォードオンラインハイスクールとはどのような学校ですか?
スタンフォードオンラインハイスクールは2006年に設立された中高一貫のオンライン学校です。今年で19年目を迎えます。設立当初はZoomのようなビデオ会議ツールはありませんでしたが、それに似たツールが出始めた時期で、生徒と教師をつなぐことが可能になってきた時代背景があります。
この学校は「教育とテクノロジー」と「ギフテッド教育」という2つの流れが合わさって誕生しました。スタンフォード大学では1960年代から教育とテクノロジーを結びつける取り組みを行っており、また「ギフテッド教育」という才能ある子どもたちに適した教育を行う考え方も持っていました。

Q. なぜオンライン教育に取り組み始めたのですか?
世界的に教育需要が爆発的に増加しています。現在、世界には約2.5億人の大学生がいますが、2040年頃には5億人から6億人に増加すると言われています。この需要に対応しようとすると、スタンフォード大学規模の大学を毎日2校ずつ世界のどこかに建設していかなければならないほどです。
そのような状況で、教育とテクノロジーを組み合わせた「エドテック」の必要性が高まっています。しかし、2000年代初頭はオンライン教育に対して悲観的な見方が多く、効果が低いという研究結果も出ていました。
「大人でもオンライン教育が難しいのに、子どもたちにできるのか」「社会性や感情のコントロールを学ぶ時期にオンラインで対応できるのか」という疑問がありました。それでも「トップレベルの教育がオンラインでも可能だと示せれば市場は変わるのではないか」という考えから、まず高いレベルの教育からスタートしました。
Q. スタンフォードオンラインハイスクールのカリキュラムはどのようになっていますか?
従来の「学年」という概念をほぼ取り払い、生徒が自分で学びをデザインできる「デザイン・ユア・ラーニング」の考え方を採用しています。例えば、数学が得意な生徒は中学1年生でも大学レベルの数学を学ぶことができます。
必修科目は「哲学」のみで、それ以外は生徒が自分の取りたい科目を選択できます。哲学を必修にしている理由は、中学・高校で学ぶ内容が専門化していく中で、その分野の「当たり前」に縛られないよう、柔軟な思考を養うためです。
授業では「反転授業」の手法を採用しています。講義部分は事前に動画などで学び、実際の授業時間では他の生徒と議論したりグループワークをしたりします。オンラインでは人と接触しないで過ごすこともできますが、意図的に他の生徒と関わらなければならない教え方をしています。

Q. 生徒の社会性や感情の発達はどのように支援していますか?
「ソーシャル・エモーショナル・ラーニング(SEL)」という、社会性や感情のコントロール方法を学ぶ教育を重視しています。この考え方は1980年代からアメリカの教育トレンドになっており、社会性と感情をサポートすると学力も上がるという研究結果が出ています。
具体的には、ディベートの授業で自分の意見と反対の立場を擁護させたり、心理学やストレスマネジメントのテクニックを教えたりしています。マインドフルネスのエクササイズや瞑想なども取り入れています。
また、完全オンラインだけでは不十分と考え、地域ごとに生徒が実際に会えるイベントも開催しています。卒業式前夜のダンスパーティー(プロム)など、アメリカの学校文化も取り入れています。

Q. 一人の生徒に対してどのようなサポート体制を整えていますか?
生徒一人に対して3人の大人がサポートする体制を整えています:
1. 心や生活リズムをサポートするカウンセラー
2. 履修科目のアドバイスをするアカデミックアドバイザー
3. 進路指導を行うカレッジカウンセラー
通常のアメリカの学校では、この3つの役割を1人のガイダンスカウンセラーが担当していますが、オンラインでは生徒が「隠れてしまう」リスクがあるため、3人体制にしています。これにより、一人と相性が合わなくても、他の大人に相談できるようになっています。
Q. 実際の生徒の時間割はどのように組まれているのですか?
生徒の目的や能力、居住地のタイムゾーン、個人的なスケジュールに合わせて最適化した時間割を作成します。例えば、プロのバレエダンサーを目指す生徒は、午前11時から午後2時までバレエの稽古をし、その前後で授業を受けるといった時間割になります。
同じ学年の生徒でも、スペイン語が得意な生徒は大学レベルのスペイン語を履修し、数学が得意な生徒は大学レベルの数学を履修するなど、それぞれの強みや関心に合わせた科目選択が可能です。
授業は一日中みっちりというわけではなく、メリハリをつけて自分の習い事や他の活動に取り組む時間も確保されています。
Q. どのような生徒がこの学校で成功しますか?
家庭での生活にメリハリをつけられる生徒、または親がそのサポートをしてくれる生徒が成功しやすい傾向があります。また、学校以外にも、空手やバイオリンなど自分のコミュニティを持っている生徒も上手くいくことが多いです。
脳の様々な領域を発達させることで認知能力も高まるため、バレエや他の芸術活動と学業を両立させることは、むしろ学力向上にもつながります。従来の「勉強か芸術か」という二択ではなく、両方を追求できる環境を提供しています。
Q. 教育とテクノロジーの最新トレンドは何ですか?
最新のエドテックトレンドには以下のようなものがあります:
1. 個別適応型学習 - 生徒の反応に基づいて教育方法を調整する
2. ゲーミフィケーション - 学びをゲーム化することで意欲を高める
3. AIを活用した家庭教師システム - 目標達成を支援する
4. プログラミング的思考 - 論理的な思考力を養う
特に先進AIの登場により、教育の重要性がさらに高まっています。AIが普及する前の教育の重要性と、AIが超えた後の才能や専門性の重要性、両方が強調されています。