
2025年 5大経済ニュース(前編)
2025年のトランプ政権が日本経済に与える影響とは?【エコノミスト解説】
新年早々、世界経済に大きな影響を与えるトランプ次期大統領の就任が近づいている。彼の政策は日本経済やマーケットにどのような影響を与えるのか?エコノミストの永濱利廣氏が2025年の経済見通しを語った。

Q. 2025年の最大の経済ニュースは何だと思いますか?
何と言ってもトランプ大統領の就任です。彼はさまざまな経済政策を打ち出そうとしています。どのタイミングでどの政策が実行されるかによって、経済への影響も大きく変わってくるでしょう。

Q. トランプ氏が打ち出している主な経済政策を教えてください
大きく6つのポイントがあります。まず1つ目は「トランプ減税」です。トランプ前政権1期目では就任2年目の頭頃に法人税減税が決まりました。同様に考えれば、2025年はこのトランプ減税への期待がマーケットにポジティブに作用する可能性があります。
ただし厄介なのが「関税の強化」です。トランプ前政権1期目では具体的な関税強化は2年目の3月から始まったため、1年目はそれほど影響がありませんでした。しかし今回は2期目なので、より早く関税政策を打ち出してくる可能性があります。これがいつ出てくるかが重要なポイントです。

Q. これらの政策は為替や株価にどのような影響を与えるのでしょうか?
一般的には、トランプ減税は景気を良くするためインフレを上げてドル高に、関税強化は輸入品の価格上昇による悪い意味でのインフレでドル高になると言われています。
しかし、私は関税強化についてはやや懐疑的です。関税強化はアメリカ経済の悪化を連想させるものなので、本当にドル高になるのか疑問です。実際に前回のトランプ政権時代の為替動向を見ると、就任前が最もドル高で、就任以降は緩やかに円高方向に進みました。
現在も選挙後の「トランプラリー」でドル高が進んでいますが、足元では若干ピークアウトの兆しも見えています。私は2025年はそれほどドル高が進まないと見ています。
Q. トランプ政権下ではインフレが加速するという見方もありますが、実際はどうでしょうか?
興味深いことに、前回のトランプ政権1年目はむしろインフレ率が下がりました。彼の政策には減税や移民排除などインフレを上げる要素がある一方で、見落とされがちなのが「脱グリーン政策」によるシェールガス増産です。これは原油価格を下げる方向に作用します。
原油価格はインフレに大きな影響を与えるため、前回のトランプ政権1年目は原油安もあって経済成長が加速しました。アメリカの経済成長率は1年目に大きく上昇しています。これは原油価格下落の恩恵と株高による資産効果などが要因と考えられます。
Q. アメリカと中国の貿易摩擦が激化した場合、日本経済への影響はどうなりますか?
日本にとって最大の貿易相手国は中国、2番目がアメリカです。この二大国が貿易摩擦で対立すれば、「アメリカと中国がくしゃみをしたら日本は風邪を引く」状況になります。両国の影響を同時に受けてしまうため、トランプ政権の4年間のどこかで日本経済が景気後退局面に入る可能性は覚悟しておいたほうがよいでしょう。
前回のトランプ政権時代を振り返ると、米中貿易摩擦が本格化した2年目以降、アメリカ株は「踊り場」状態になり、日本株はむしろ下落しました。日経平均株価は輸出関連銘柄のウェイトが高いため、追加関税が打ち出されると厳しい展開になる可能性があります。
Q. 2025年内に追加関税が大幅に実施された場合、アメリカ株と日本株はどうなると予想されますか?
仮に前回のトランプ政権時代と全く同じ変化率で動いた場合、日経平均は4万3000円台、ダウ平均は4万7000〜8000ドル程度まで上昇する計算になります。ただしこれは追加関税が1年目に打ち出されないという条件付きの予測です。
関税政策の実行時期が早まれば、この予測は大きく変わる可能性があります。私は追加関税の実行時期が最大のポイントだと考えています。

Q. 2025年の日本経済の見通しはいかがでしょうか?
実は2024年の日本経済はマイナス成長になる可能性もあります。国際機関の日本経済見通しでは2024年暦年でマイナス成長との予測もあります。最大の足を引っ張っているのが個人消費で、実質賃金がマイナスだったため、値上げに購買力が追いつかない状況が続いてきました。
2025年については部分的に明るい兆しもあります。2024年は「春闘」で33年ぶりの高い賃上げになったにもかかわらず、物価上昇に賃金上昇が追いつかず実質賃金がマイナスでした。2025年は賃金上昇率が上がるというより、インフレ率が下がってくることが期待されます。
企業はこれまでのペースで値上げができなくなってきており、インフレ率はピークアウトしています。一方で賃金は着実に上がってきているため、実質賃金が安定的にプラスになる可能性があります。この点では2024年よりも状況が改善するでしょう。
Q. 実質賃金がプラスになった場合、日銀の金融政策はどうなりますか?
実質賃金がプラスになると、日銀が追加利上げをしやすくなります。日銀はある程度ターゲットとなる金利水準を考えており、「中立金利」の最低水準は1%程度と言われています。2025年にかけて政策金利を1%程度まで引き上げたいと考えているでしょう。
アメリカ経済が大きく悪化しない限り、遅くとも2025年中には政策金利を1%程度まで引き上げる可能性があります。これは円高圧力になるため、輸入品の価格上昇に苦しんできた一般の人々には恩恵があるかもしれません。一方で、輸出関連企業の業績には逆風となり、日本株にはマイナス要因となるでしょう。
結論としては、2025年は日本株よりもアメリカ株の方が相対的なパフォーマンスが良くなる可能性が高いと予想しています。
