BODY SKILL SET
休むこと=寝ることではありません。
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2024年12月18日

ビジネスパーソンのための体・心の鍛え方を一流の専門家から学ぶ。年末年始に疲れをとりたい人はご覧ください。 <ゲスト> 片野秀樹/医学博士 日本リカバリー協会代表理事 東海大学大学院医学研究科、東海大学健康科学部研究員、日本体育大学体育学部研究員、特定国立研究開発法人理化学研究所客員研究員を経て、現...
休むことは寝ることだけじゃない!医学博士が教える最高の休養を取る方法
私たちは休養について学校で教わったことがありません。運動は体育で、栄養は家庭科で学びましたが、休養だけは学ぶ機会がなかったのです。だから多くの人は「疲れたら寝る」という幼い頃の経験に頼って生きています。しかし、現代社会では、それだけでは不十分なのです。

Q. 疲労と疲労感の違いは何ですか?
疲労とは「過度な肉体的・精神的活動の後に伴う不快感と活動能力が低下している状態」です。これは日本疲労学会が定義している状態を指します。一方、疲労感とは「活動能力が下がった時に出てくる不快感」です。
私たちが日常的に「疲れが溜まった」と表現するのは、正確には疲労感のことです。疲労は状態であり、溜まるものではありません。この違いを理解することが重要です。
動物は疲労感を感じると安全な場所で動かなくなります。これは活動能力が下がっている状態で動き続けると、捕食されるリスクがあるからです。人間も動物ですから、本来は同じように反応するべきですが、人間の脳は発達しているため、疲労感だけをマスキングすることができてしまいます。
責任感や報酬の喜び、栄養ドリンクなどで疲労感をマスキングしてしまうと、活動能力が低い状態なのに活動を続けてしまいます。これは危険な状態です。

Q. 体から出る危険信号にはどのようなものがありますか?
体から出る危険信号は主に3つあります:
1. 発熱
2. 痛み
3. 疲労感
この中で最も見落としがちなのが疲労感です。初期症状としては、肩こり、目の疲れ、便秘などが現れます。これらは体からの警告サインなので、無視してはいけません。

Q. 持続可能な生活サイクルとは何ですか?
多くの人は「活動→疲れ→休み→活動」という三角形のサイクルで生活していますが、この状態では8割の人が常に疲れた状態で活動していることになります。これは電池に例えると、充電されずに消耗しながら生活している状態です。
持続可能なサイクルは「活動→疲労→休養→活力→活動」という4つの要素からなります。辞書で調べると、活動の対義語は休養、疲労の対義語は活力です。休養だけでなく、活力を蓄えてから活動に戻ることが大切なのです。
Q. 疲れの原因となるストレッサーにはどのようなものがありますか?
ストレッサー(ストレスの原因)には5つの種類があります:
1. 物理的ストレッサー
2. 化学的ストレッサー
3. 心理的ストレッサー
4. 生物学的ストレッサー
5. 社会的ストレッサー
これらは避けて通ることができず、同時並行的に起こります。例えば、騒音が激しいオフィス(物理的)で、人間関係に問題がある(社会的)状況で、タバコの煙を吸う(化学的)環境にいる場合、ストレスは複合的に積み重なります。
Q. 疲労が蓄積するとどうなりますか?
疲労が蓄積すると、まず自律神経に変化が現れます。交感神経(興奮の神経)が高まり、副交感神経(リラックスの神経)が抑制されて、下疳症の状態になります。
その後、ホメオスタシス(体のバランスを保つ仕組み)に変調が生じます。ホメオスタシスには神経系、免疫系、内分泌系の3つがあり、疲れていると風邪をひきやすくなるのは免疫力が下がっているためです。
これが続くと病気のリスクが高まります。クリニックでの検査で「正常値の範囲内だが、様子を見てください」と言われる状態から、「異常値なので治療が必要」という診断に進む可能性があるのです。
Q. 自分の疲労状態をどのように客観的に把握できますか?
日本疲労学会が提供する「疲労のビジュアルアナログスケール」というツールを使用できます。A3サイズでプリントアウトすると、10cmの横棒があり、左端が「疲れを全く感じていない最良の感覚」、右端が「何もできないほど疲れきって最悪の感覚」を表します。
自分がどの位置にいるかをバツ印で付け、左端からの距離を物差しで測ることで、主観的な感覚を数値化できます。これを朝起きた時に行い、前日の行動と合わせて記録します。その日のパフォーマンスも記録することで、どのような休養を取れば朝の状態が良く、パフォーマンスも高いかというパターンが見えてきます。
これを1年続けると365枚、10年で3650枚のデータが集まり、自分に最適な休養パターンが分かるようになります。
Q. 体内時計と疲労の関係は?
私たちの体には、朝起きて昼間活動し、夕方になると休む「サーカディアンリズム」があります。このリズムに合わせて、朝は「コルチゾール」という物質が出て体を動かす準備をし、夜は「メラトニン」が出て眠りに誘います。
年齢によってこれらの物質の分泌量やタイミングは変化します。思春期は夜のメラトニン分泌が遅くなるため夜更かしをしがちで、成人期になると前倒しになり早く寝られるようになります。老年期になるとコルチゾールの分泌が減り、メリハリがなくなってくるのです。
Q. リズムを正しく保つにはどうすればいいですか?
リズムを正しく保つために最も大切なのは、朝に目に光を入れることです。朝日を浴びたりカーテンを開けたりすると、脳の視交叉上核が光を感知し、体のリズムをリセットします。これにより1日のリズムが整います。
プロのアスリートはオフファーストの考え方で休養を取ります。例えばクリスティアーノ・ロナウド選手は1日に何回かに分けて睡眠を取り、特に最初の90分のサイクル(最も深い睡眠が得られる時間)を大切にしています。
Q. 「オフファースト」の考え方とは何ですか?
「オフファースト」とは、休養を第一優先に考えるという考え方です。現代社会では、テクノロジーの発達により24時間いつでも仕事ができる環境になっていますが、それに対応して休養の取り方もアップデートする必要があります。
過去には「一生懸命働いている」と思いながらも、実は移動時間などに余白があったのですが、現代では意図的に余白を作る必要があります。その余白の中で質の高い休養を取り、活力を蓄えることが重要なのです。
意図的に余白を作り、オフを第一優先に考えることで、持続可能なサイクルを維持し、最高のパフォーマンスを発揮できるようになります。
