コミュニケーションSS
語彙力ゼロでも感動を伝えるコツ
(192)
1.4万回視聴
2024年11月9日

職場の人間関係、伝える力、聴く技術などコミュニケーションスキルを学ぶ。文芸評論家の三宅氏から言語化するコツを学びます。 <ゲスト> 三宅香帆|文芸評論家/京都市立芸術大学非常勤講師 1994年、徳島県生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了。 小説、古典文学、 エンタメなど、幅広い...
好きを魅力的に言語化する方法!クリシェを避けて言葉に光を宿す技術
SNSの時代、自分の感想や好きなものを魅力的に伝えるスキルがますます重要になっています。「めっちゃ面白い」「神回」といったありきたりな表現ではなく、どうすれば心に刺さる言葉で自分の感動を伝えられるのでしょうか?

Q. なぜ今、「好きを言語化する技術」が必要なのですか?
今はSNSの時代で、誰もが自分の感想を発信する機会が増えています。映画やドラマの感想、本の紹介、お店の評価など、日常的に「言語化」する場面が多くなりました。特にここ5年ほどで配信ドラマなどのコンテンツが増え、それに対する感想を表現する機会も増加しています。
かつては芸能人などの影響力のある人の発言が重視されていましたが、今では一般の人がSNSで投稿した感想が大きな反響を呼ぶこともあります。まさに「一億総評論家時代」と言えるでしょう。
Q. 「クリシェ」とは何ですか?言語化にどう影響するのですか?
クリシェとはフランス語で「よくある表現」という意味です。例えば「やばい」「泣けた」「面白い」「神回」といった、誰もが使うありきたりな言葉のことを指します。
これらの表現を使うと、それっぽく見えるかもしれませんが、実際には何も伝わっていません。例えば「神回です」と言っても、何が神なのかが伝わらないのです。
ビジネスのプレゼンや商品紹介でも、クリシェに頼ると内容が薄く感じられます。ブログの最後に「いかがでしたか?」と書くのも典型的なクリシェで、何の情報も付加していません。
Q. 言葉に「光」を宿らせるにはどうすればいいのですか?
言葉に光を宿らせるには、クリシェを避け、自分だけの表現を見つけることが重要です。例えば、あるビジネス書の前書きには「考えていない人間はいない。あなたは本来考える力がある。必要なのは話す前に立ち止まる勇気だ」と書かれています。
これを「あなたは考えているかもしれない。しかしそれを言葉にしなくては伝わらない。必要なのは気持ちを伝える勇気だ」と書き換えると、内容はほぼ同じなのに、伝わる力が大きく違います。
なぜ前者の方が光を放つのかというと、「伝える勇気が大事」といったよく聞く表現ではなく、「話す前に立ち止まることこそが大事」という、あまり聞かない視点を提示しているからです。みんなが言いそうなことを避け、独自の視点を提示することで言葉は輝きます。
Q. 自分だけの言葉を見つけるコツはありますか?
自分だけの言葉を見つけるには、以下のステップが効果的です:
1. SNSを一旦見ない: 何かを体験した直後、まずは他人の感想を見ないようにしましょう。先に他人の意見を見ると、自分の本来の感想が薄れてしまいます。
2. 最初の印象を大切に: 初めて見た時の感想ほど尊いものはありません。特に初心者の視点は貴重です。自信を持って自分の第一印象を記録しましょう。
3. 妄想力を鍛える: 感想に「正解」はありません。「このドラマは〇〇に似ている」「この表現は時代を反映している」など、妄想でもいいので自分なりの解釈を試みましょう。
4. 言い切る勇気を持つ: 「〜かもしれない」「〜と思う」などの曖昧表現を避け、自分の感想を堂々と言い切りましょう。必要なら後から調整できます。
5. 人の感想を参考にする: 自分の感想をまとめた後で、他の人の意見を見て視野を広げるのは良いことです。
Q. 具体的に感想を魅力的に表現するテクニックはありますか?
言語化のテクニックとして「細分化」が非常に重要です。例えば、有名な「諦めたらそこで試合終了ですよ」というスラムダンクの名言が心に残るのは、「諦める=試合終了」という抽象的な概念を「そこで」という具体的な場所と結びつけて細分化しているからです。
また、興味を引くタイトルや書き出しを考えることも大切です。「なぜ株を買うのは10月だと思った方は見てほしい」といったタイトルは、「10月=クレヨンしんちゃん」という連想を利用した言葉遊びで注目を集めます。
言語化のスキルは、語彙力というよりも「細分化する力」だと言えます。抽象的な感想を具体的に分解して表現できると、伝わる力が格段に上がります。
Q. 映画やドラマの感想を魅力的に伝えるコツはありますか?
作品の感想を魅力的に伝えるには、単に「面白かった」と言うのではなく、作品の特徴を他の作品と比較したり、社会的文脈の中で位置づけたりすると効果的です。
例えば、人気ドラマ「地面師たち」の魅力を「現代日本版パラサイトである」と表現することで、韓国映画「パラサイト」と同様に格差社会を描いた作品であることが伝わります。さらに「エログロバイバイオレンスでありながらそれでいて格差の物語である」と補足すれば、作品の多面性も伝わります。
また、特定のキャラクターや象徴的なシーンに言及することで、作品の特徴をより具体的に伝えることができます。
Q. SNSでの発信で注意すべき点はありますか?
SNSで発信する際には、以下の点に注意すると良いでしょう:
1. 書き出しを工夫する: 最初の一文で読者の興味を引くことが重要です。
2. 読者を意識する: 誰に向けて書くのかを明確にすると、内容が絞られて伝わりやすくなります。
3. 自信を持つ: 「偉そうに見られるかも」と恐れず、自分の感想に自信を持ちましょう。
4. 過度な謙遜を避ける: 「素人の意見ですが」などと必要以上に自分を下げる表現は避けましょう。
5. クリシェを組み合わせる: 「神回」などのクリシェも、独自の視点と組み合わせることで新鮮な表現になります。
Q. 「好きを言語化する技術」は日常生活でどう役立ちますか?
この技術は、SNSでの発信だけでなく、仕事のプレゼンテーション、友人との会話、恋愛における気持ちの伝達など、様々な場面で役立ちます。
例えば、飲食店で美味しい料理を食べた後、単に「美味しかった」と言うのではなく、どの要素が特に印象的だったか、どんな記憶を呼び起こしたかなど、具体的に表現することで、相手により深く伝わります。
また、自分の気持ちを言語化するプロセスは、自己理解にもつながります。「なぜこれが好きなのか」を考えることで、自分自身の価値観や嗜好についての理解が深まります。
結局、言語化のスキルは「自分だけの言葉」を持つことで、他者との深いコミュニケーションを可能にし、人間関係をより豊かにする技術だと言えるでしょう。