ECONOMICS101
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2024年11月5日

11/5 投開票が行われる米国大統領選挙。米国経済に詳しいエコノミストの小野亮氏と永濱利廣氏に、米国大統領選挙の基礎知識と米国経済の強さの秘訣を聞いた。 <ゲスト> 小野 亮|エコノミスト 東京大学工学部卒、現みずほリサーチ&テクノロジーズ入社。1998年10月から2002年2月までニューヨーク事...
アメリカ大統領選挙の行方が注目される中、経済への影響について専門家が分析しています。トランプ氏優勢の背景には何があるのか、そして次期大統領が直面する経済課題とは。

アメリカでは頻繁に世論調査が行われていますが、現状ではハリス氏のリードが0.9ポイント程度と非常に僅差になっています。特に10月に入ってからトランプ氏の全国ベースの支持率が急速に上昇しており、ハリス氏は苦しい状況に追い込まれています。
当初、民主党の岩盤支持層であるはずの黒人有権者、特に男性からの支持率が低迷していることに対して、オバマ前大統領が強い懸念を示すほどの事態となっています。これに対応するためハリス陣営は黒人男性向けの優遇策を打ち出しましたが、これが逆に他の属性を持つ有権者からの反発を招いています。
選挙を左右するとされる7つの激戦区での支持率においても、ハリス氏は支持を失っている状況です。トランプ氏が優位に立っている背景には、ハリス氏自身が支持率を落としていることが大きな要因となっています。
2016年の選挙では、世論調査でトランプ氏が劣勢だったにもかかわらず最終的に勝利しました。これには「隠れトランプ支持者」の存在が指摘されていました。今回も同様の現象が起きる可能性があり、トランプ氏の実際の支持率は調査結果よりも高いのではないかとの見方があります。
いわゆる「トランプ2.0」の可能性は相当高まっているといえます。ハリス氏は夏場の勢いを維持したかったものの、アメリカ国民の間には強い閉塞感があります。トランプ氏が「問題がある」と認識されながらも、現状を打破する可能性に期待が集まっている側面があります。
また、ハリス氏はバイデン政権の副大統領という立場上、現政権の政策を批判したり大きく方針転換を図ったりすることができないという制約があります。バイデン大統領の支持率が低迷していることも、ハリス氏にとって不利に働いています。
ハリス氏の基本的な思想は機会平等と公平な社会の構築です。具体的な政策としては、大企業や富裕層への増税、中間層への減税を掲げています。また、バイデン政権の方針を踏襲し、環境政策や移民政策などにおいても現状維持の姿勢を示しています。
一方、トランプ氏は経済的利益を外交や様々な取引を通じて獲得する姿勢を持ち、成長志向・企業志向が強いのが特徴です。前政権時に導入したトランプ減税の恒久化、レストラン従業員のチップや残業代への非課税化などを提案しています。規制緩和や規制撤廃を進め、アメリカ国民の利益を最優先する「アメリカ・ファースト」の姿勢を貫く方針です。
現在円安が進行していますが、その背景にはトランプ氏の当選可能性の高まりがあると考えられます。トランプ氏が中国に60%、日本を含む他国にも10〜20%の輸入関税を課すと公言していることから、輸入品価格の上昇によるインフレ懸念が強まっています。
これにより金利上昇が予想され、日米の金利差からドル高・円安方向に市場が動くという「トランプトレード」が発生しています。一方で、トランプ政権になれば化石燃料の利用が促進される可能性があり、ガソリン価格は下がるかもしれないという側面もあります。
アメリカでは政策によって大統領単独で決定できるものと、議会の承認が必要なものがあります。外交政策は基本的に大統領権限ですが、財政・税制などは法律を通す必要があるため、議会の構成が重要になります。
上院と下院のどちらを共和党と民主党のどちらが制するかで政策の実現可能性が大きく変わります。同一政党が大統領職と議会の両方を押さえる「レッドウェーブ」(共和党)または「ブルーウェーブ」(民主党)の状態になると、政策実行が容易になります。
一方、上院と下院で多数党が異なる「ねじれ」状態になると、与野党の対立により政策が進まなくなります。現在の予測では共和党が上院で勝利する可能性が高まっており、もしトランプ氏が当選すれば、彼の掲げる政策の多くが実現する可能性があります。
マクロモデルによる試算では、10年後のアメリカ経済はハリス氏よりもトランプ氏の方が成長率が高いという結果が出ています。ただし、どちらの候補が選ばれても、何も政策変更がない場合と比べるとマイナス成長になる可能性があります。
これはハリス氏の場合は増税により投資が抑制される懸念があり、トランプ氏の場合は関税引き上げにより短期的に経済が低迷するためです。しかし、減税政策は経済成長を促進するという経済学の原則から、マイナス幅が小さいのはトランプ氏となっています。
日本ではほとんど議論されていませんが、アメリカの年金制度は2034年に枯渇する危機に直面しています。アメリカの年金は基金から給付金が支払われていますが、高齢者の増加と給与税収入の不足により、現行制度では34年時点で給付額が約3割カットされる仕組みになっています。
更に問題なのは、トランプ氏が大統領になると枯渇時期が3年早まり、2031年になる点です。これはトランプ氏が社会保障給付の維持を約束する一方で、給与税の減税、移民抑制、残業代やチップへの非課税化などを進めるため、財源が大幅に減少するからです。
トランプ氏の2期目は4年で終わりますが、その直後にアメリカは深刻な年金危機に直面することになります。この「時限爆弾」は次の次の大統領が対処することになり、アメリカ国内だけでなく国際市場にも大きな影響を与える可能性があります。
シリコンバレーバンクをはじめとした銀行の破綻があり、適切な対応がなければ金融危機になっていた可能性もあります。また、暗号資産市場もピーク時の3兆ドルから1兆ドル程度まで縮小し、内部崩壊に近い状態になりました。
これらの問題にもかかわらず、アメリカ経済は依然として強さを維持していますが、長期的には年金問題をはじめとした構造的課題に直面しています。次期大統領の政策選択がアメリカ経済の将来を左右することになるでしょう。