
2030年代の日経平均10万円が夢ではない理由
投資のプロが語る「日本株の魅力と企業評価」河北博光氏インタビュー
バブル崩壊後の長いデフレからようやく抜け出した日本株市場。今後の見通しとさらなる飛躍のための課題とは?グローバルな視点で日本企業の現状と可能性について、投資のプロである河北博光氏に話を聞きました。

Q. アベノミクス以降の日本経済の流れをどう見ていますか?今後も続くと思いますか?
バブル崩壊後の長いデフレ期間は既に終わっていると考えています。これからは賃金も上昇し、適度なインフレも続くでしょう。そのような環境下で日本株は魅力的です。特に他国と比較すると、日本はまだ「バブっていない」状態であり、投資タイミングとして良いポジションにあります。
投資において重要なのは、バブル状態になっている国への投資は避けるべきということです。日本は現在、特別に良いところがあるわけではないかもしれませんが、特に悪いところもない「普通の状態」です。そのような状態では、株式は年間7-8%程度成長するのが通常で、このペースが続けば2030年代には日経平均10万円も夢ではありません。
Q. 世界的に見て日本株の評価はまだ低いのでしょうか?
アメリカと比較すると、アメリカ経済は現在非常に好調であり、全体としてはバブルとは言えませんが、一部の株に関してはバブル的な要素が混在しています。そういった銘柄には手を出さないほうが賢明です。
日本株の評価が上がるためには、利益の拡大が今後も続くかどうかが重要です。投資家は資本利益率(ROI)、つまりどれだけの投資に対してどれだけのリターンが上がっているかを見ています。日本企業はこの指標を大きく改善させてきましたが、最近は頭打ち傾向にあります。
さらに高い水準を維持するには、投資が活発に行われ、資産が成長していくことが必要です。単なる売上成長よりも、投下資本利益率が高い状態で資産が増えていくことが重要です。
Q. 日本企業はどうすればさらに評価が高まるのでしょうか?
日本企業の評価向上には、成長分野をしっかり作り、そこに投資することが重要です。キャピタルアロケーション(資本配分)をうまく行い、成長している分野に適切に資源を振り向け、そうでない部分を思い切って切り捨てる必要があります。韓国企業を例にすると、AI関連など成長分野には、たとえ現在は赤字であっても積極的に投資し、他を切り捨てるという大胆な戦略を取っています。
また、CFO(最高財務責任者)の役割強化も重要です。外国人投資家が日本企業を見て最も失望するのがCFOの機能の弱さです。日本のCFOは財務の専門家として数字に詳しくても、経営戦略への関与が限定的なケースが多いのです。通常、財務戦略と経営戦略は密接にリンクしているべきですが、日本企業ではその連携が弱く、正しいキャピタルアロケーションができていません。
ソニーのケースは好例で、吉田CFOが就任したことで会社の評価が大きく上がりました。彼は単なる財務の専門家ではなく、経営戦略も含めた優れたCFOだったのです。
Q. 外国人投資家の日本企業に対する見方はどうでしょうか?
投資家とのコミュニケーションを正確に理解することが重要です。特に外国人投資家との対話では、時間軸の違いや説明方法のギャップがあります。外国人投資家は資本利益率に強くこだわり、個々のプロジェクトがどれだけ収益を生むのかを理解したいと考えています。
しかし、日本企業の説明は「今年の設備投資額」「減価償却費」「利益」といった当期の数字に集中しがちです。投資家が知りたいのは、その投資がなぜ行われ、将来どのようなリターンを生み出すのかという点です。日本企業も考えてはいるのですが、説明の仕方がマッチしていないケースが多いのです。
また、海外における日本の認識も課題です。多くの外国人は日本について十分な知識を持っておらず、バブル崩壊後の長期不況のイメージが強く残っています。以前は日本株担当のファンドマネージャーも多かったのですが、現在は激減しています。日本が安全で安定した国であるという基本的な認識すら共有されていないケースもあり、この認識ギャップを埋めることが重要です。
Q. 日本企業が外国人投資家から注目されるためには何が必要ですか?
投資家は「何かユニークなもの」を求めています。単に「日本でシェアナンバーワン」という説明だけでは不十分です。世界の中で独自のビジネスモデルを持ち、異なる収益源を持っていることを明確に説明できれば、たとえ企業規模が大きくなくても、成長率が特別高くなくても投資対象になる可能性があります。
また、その説明は複雑であってはならず、シンプルに一言で「これだ」と理解できるものである必要があります。東証プライム市場でも、時価総額上位500社程度でなければ外国人投資家のユニバースに入ってこない現状があります。それ以外の企業は何か特徴的な要素で目立つ必要があるのです。
Q. 個人投資家にとって日本株はどのような投資対象でしょうか?
日本株は過小評価されており、個人投資家にとって魅力的な投資対象です。日本人は日常的に日本企業の商品やサービスに触れる機会が多く、「これはいいな」と思う企業に投資することで金融リテラシーを高めることができます。海外株と比べて情報量も多いため、投資初心者が学びながら投資するには最適な市場です。
個人投資家として投資する際は、「守り」と「攻め」を分けて考えることが重要です。特にNISA(少額投資非課税制度)は「守り」の役割を担うものであり、長期的な視点で運用すべきです。NISAで高分配金の投資信託を選ぶのではなく、分配金が0で低コストの商品を選ぶべきです。
一方、個別株などの「攻め」の投資は、NISA以外の口座で行うことをお勧めします。これは、NISAが長期間(最大で40年程度)にわたる資産形成の場であり、途中で売買を繰り返すことは制度のメリットを活かせないからです。
投資配分を決める際は、将来必要な金額から逆算して「守り」の部分をまず確保し、残りを「攻め」に回すという考え方が有効です。例えば、60歳の時に1億円必要と考えた場合、現在の資産からどれだけを「守り」で積み上げれば目標に到達するかを計算し、残りを「攻め」の投資に充てるのです。
