
世界標準の資産運用。スイス人はなぜ金持ちなのか?
世界標準の資産運用法とは?プロが教える長期投資成功の秘訣
日本では「投資」という言葉に抵抗を感じる人もまだ多いが、世界的に見れば投資は一般的な資産形成手段だ。特にスイスやアメリカでは、個人の金融資産に占める現金比率が日本より低く、株式や投資信託などの割合が高い。なぜ彼らは資産を上手に増やせるのか?その秘訣を30年以上のキャリアを持つ投資のプロに聞いた。

Q. スイス人やアメリカ人はなぜお金持ちなのですか?
スイスは国際分散投資をしていることが大きな理由です。スイスを含むヨーロッパの国々は歴史的に国が消滅したり征服されたりした経験があるため、資産を一か所に置くことを避け、世界中に分散させる文化が根付いています。
アメリカの場合は株式投資が盛んです。GoogleやAmazonといった成長企業に投資することで富を増やしてきました。
両国とも特別な知識や専門性があるわけではなく、分散投資することの重要性を基本的な知識として持っているのです。これは特別に株式投資が上手いというよりも、資産を減らさないよう最悪の事態を避けるという発想に基づいています。
Q. 日本人の現金保有率は高すぎるのでしょうか?
日本の家計の現金保有率はOECD諸国の中でも突出して高いです。これは長年のデフレが原因と考えられます。デフレ時代には現金を貯めることは必ずしも悪いことではありませんでしたが、インフレ環境では現金の価値が目減りしてしまいます。
アメリカの財団などでは30年前は現金や債券の比率が日本と同じくらい高かったものの、現在は15〜20%程度まで下がっています。日本もこれから現金比率が下がっていくと予想されます。
Q. 長期・分散・積立投資は本当に効果的なのでしょうか?
長期・分散・積立は投資の基本ですが、ただ漠然と「長期で持っていれば安全」というわけではありません。例えば、バブル期の高値で日本株を買って20年以上持っていても損失が続いたケースもあります。
大切なのは、長期的に上昇が見込めるものを選んで投資することです。全世界株式インデックス(オールカントリー)に投資する場合でも、その中身を理解することが重要です。オールカントリーは名前とは裏腹に約半分がアメリカ株で、新興国の比率は非常に低いのが実情です。世界経済全体の成長に投資したいなら、インドなどの成長国にも個別に投資する必要があります。
Q. 分散投資と集中投資、どちらが正しいのですか?
両方とも必要です。資産を守るための分散投資と、利益を狙うための集中投資を使い分けることが世界標準の考え方です。
大きく儲けた投資家は皆、集中投資で成功しています。しかし、相場の世界では最後に無一文になる人も少なくありません。利益を得た後にそれを守るための分散投資が必要なのです。
例えば伝説の投資家リバモアは、儲けたお金を宝石に変えて資産を守り、破産した時にはそれを売って再起しました。これは極端な例ですが、利益を分散して保管する場所が必要だという教訓です。
Q. 個人投資家はどうやって投資の得意分野を見つければよいですか?
若い人はまず少額で株を買ってみることから始めるのがよいでしょう。失敗しても勉強代と考えれば問題ありません。
30代以上になると、自分が共感できる会社に投資することをお勧めします。自分が「良い会社だな」と思う企業を買ってみて、その後の値動きから学ぶのです。高値で買って損をすることもあるでしょうが、それも「高い値段で買ってはいけない」という教訓になります。
プロの投資家は「認識ギャップ」を探しています。これは他の人が気づいていない価値や、市場が間違った思い込みをしている部分を見つけることです。例えば、かつて「ホンダの株価は3000円を超えることはない」と言われていましたが、そのような根拠のない思い込みに逆らって投資すると大きなリターンが得られることがあります。
市場のコンセンサスを知るには、証券会社のレポートを読むのが手っ取り早いでしょう。ただし、レポートを信じるのではなく、市場が何を見ているかを理解するための材料として活用するのがコツです。
Q. オルタナティブ投資は個人でも取り入れるべきですか?
オルタナティブ投資(株式や債券以外の投資対象)は、世界の大学基金などでは資産の3割程度を占めるケースもあります。ただし、日本ではまだ個人向けの商品が少ないのが現状です。
今後は個人にもアクセス可能なオルタナティブ投資商品が増えてくるでしょう。その際には特定の分野だけに集中するのではなく、複数のオルタナティブ投資に分散させることが重要です。海外の財団などは80種類ほどの投資先に分散させているケースもあります。
Q. 投資信託を選ぶ際のポイントは何ですか?
新商品にすぐ飛びつくのではなく、運用実績を確認してからの方が安心です。特に海外ファンドは実際にやってみないと手数料などの詳細が分からないケースも多いため、運用報告書で総費用を確認してから投資するのがよいでしょう。
また、パフォーマンスが一時的に悪くなっているファンドに投資するのが効果的な場合があります。ただし、パフォーマンスが悪くなっていても、運用スタイルを変えずに踏ん張っているファンドを選ぶことが重要です。スタイルを変えてしまうファンドは、その後も中途半端な結果になりがちで避けた方がよいでしょう。
Q. 資産運用における「アメフト型」とはどういう意味ですか?
守るものと攻めるものをしっかり分けて考えるという意味です。ラグビーは全員が守りと攻めを切り替えますが、アメフトは役割が明確に分かれています。
投資においても、目的別に資産を分けて考えることが大切です。買った理由がなくなったら売却する決断力も必要です。「成長株として買ったけど下がったから割安株として持ち続ける」というように理由をすり替えるのは避けるべきです。
資産運用では間違いも多く、完璧を目指すのではなく、致命傷を避けながら前に進むことが重要です。
Q. 為替リスクはどう考えるべきですか?
日本は資源を輸入に頼る国なので、円安になると様々なコストが上昇します。そのため、資産を日本円だけで持つのではなく、ある程度は海外の通貨にリンクした資産を持つことが重要です。
円高になれば為替部分では損をするかもしれませんが、物の価格も下がるので生活防衛になります。最も避けたいのは、物価が上昇しているのに資産が目減りして生活ができなくなることです。
日本の債券については、金利が極めて低い現状では、あえて投資する必要はないかもしれません。現金と債券なら、むしろ現金の方が株価下落時や円高時に再投資できる柔軟性があります。
