
エンジニア採用必勝法・これだけでわかるDevRel入門
DevRelとは?エンジニア採用のためのコミュニケーション戦略を解説
「デブレルは単なる採用活動ではなく、エンジニア一人ひとりが価値を最大限に発揮できる体験や環境を作るための活動全般を示しています」- エンジニア組織づくりの専門家が語る、これからの技術組織と採用の関係性について解説します。

Q. DevRelとは何ですか?
DevRelはDeveloper Relationsの略で、直訳すると「開発者との関係」を意味します。より具体的には、企業や組織が外部の開発者と相互に利益のある関係を築くための戦略的なコミュニケーションのプロセスです。
従来のDevRelは、Google、Apple、Amazonなどの開発者向け製品を提供する企業が、既存または将来的なユーザーになり得る外部の開発者に向けて、自社製品の接点や認知、理解を獲得し、導入・利用を促進するマーケティング活動でした。
最近では、技術広報や採用広報を担当する人もDevRelと名乗るケースが増えています。これは、これらの職種とDevRelの活動が一部重なる領域を持っているからです。技術広報は企業・製品の技術的な面での認知度、理解度、信頼性を獲得するための情報発信活動で、採用広報は採用活動の一環として企業の魅力や特徴を候補者に伝えることを目的としています。
Q. なぜ今DevRelが注目されているのですか?
IT業界ではDevRelの重要性が急速に高まっています。多くの企業が技術革新を通じてビジネスを拡大しようとする中、エンジニアの需要が増加しています。しかし、エンジニアの供給はそれに追いついておらず、特に優秀なエンジニアの確保が大きな課題となっています。
エンジニアが売り手市場にある中、多くの企業がエンジニア採用に苦労しています。エンジニアの人口は限られているため、需要が供給を上回り、優秀なエンジニアをめぐる争奪戦が起きています。
このような状況で、企業の魅力を外部に発信し、エンジニアとのコミュニケーションを取って働きやすい環境を整えるDevRelの役割が重要視されるようになっています。
Q. エンジニアはどのような企業に魅力を感じますか?
エンジニアは給与や働き方だけでなく、以下のような要素を重視しています:
1. キャリアへの貢献:自分のスキルがどのように生かせるか、新しい挑戦や成長の機会があるか
2. 社会課題への取り組み:企業が解決しようとしている課題に自分が貢献できるか
3. プロダクトの魅力:開発するプロダクトが本当に面白いものか
4. チームメンバーの質:一緒に働くチームメンバーが優秀かどうか
特に「チームメンバーの優秀さ」は重要な要素です。優秀な人と働きたい、その人の行動を間近で見て成長したいという思いがあります。優秀な人材が一人いると、そこに人が集まる傾向があります。
Q. DevRelの主な目的や目標は何ですか?
DevRelの主な目的・目標は以下のとおりです:
1. 開発組織や働く人の認知と理解を高める:技術領域や組織のアウトプットを増やし、企業のエンジニアリングチームの認知度を業界内で向上させる
2. 技術力の高さと先進性のブランディング:企業の技術的な貢献を業界内でアピールし、最先端の技術に精通していることを伝えることで、企業の信頼性とブランド価値を高める
3. 業界貢献:オープンソースプロジェクトへの参加やコミュニティイベントでの知見共有を通じて、業界全体の発展に寄与する
4. エンジニア採用:外部の開発者との信頼関係を築き、アウトプットを通じて企業が魅力的な職場であることを認知してもらう
5. エンジニア間のコミュニケーション支援や社内の情報流通の促進:エンジニア同士の情報共有を活性化し、技術的な知識・情報が社内で円滑に流れる仕組みを構築する
6. エンジニア組織の課題解決:技術的な課題やコミュニケーションに関する問題を特定し、効果的な解決策を提供する
7. アウトプットしやすい仕組みづくり:エンジニアが自然とアウトプットを増やしたくなるような環境を整え、技術的な知見を社内外に発信しやすいサポート体制を構築する
Q. DevRelの具体的な活動内容は何ですか?
DevRelの活動は外向けと内向けの両方があります。
外向けの活動
技術ブランディングや広報の戦略立案
SNSを通じた情報発信
技術記事やノウハウのブログ公開
開発者向けイベントの企画・運営
業界カンファレンスへの協賛や自社カンファレンスの開催
開発者コミュニティの立ち上げや運営
内向けの活動
組織内のエンジニアリング課題への取り組みと改善
社内技術情報ニュースレターの定期発信
社内技術イベント・勉強会の開催
イベントやコミュニケーションチャンネルの運用
エンジニア向け研修の企画
これらの活動を通じて、DevRelは企業の技術力を外部に伝えるだけでなく、内部のエンジニア組織も活性化・強化し、エンジニアが働きやすい環境を整えます。外向けと内向けの両方をバランス良く行うことが重要です。
Q. DevRel担当者はどのような規模で存在していますか?
DevRel担当者の数は企業の規模によって異なります。大企業では、LINEYahoo!のように20名程度の体制で、担当するプロジェクトに分かれて実施するケースもあります。タイミーやパインディーなどでは5-6名体制で活動しています。
一方、LINEでは初期は4-5人で全員が幅広い業務をこなしていました。各エンジニア組織ごとに担当がついていました。
業界全体でのDevRel担当者の数はまだ限られており、数年前は10-20社程度しかDevRelというポジションを設けていませんでした。しかし最近は名乗る人が増えてきており、2023年頃からはDevRel経験者がDevRelとして転職するという流れも生まれ始めています。
従来は発信が好きなエンジニアが個人的にブログを書いたりカンファレンスに出たりしていましたが、それに価値があると認識され、役割として重要視されるようになってきました。
Q. DevRelの実施において注意すべき点はありますか?
DevRelを実施する際には、外向けのアピールだけでなく、内向けのコミュニケーションや環境整備も同様に重要です。外面だけ良くても内部のエンジニアが不満を感じていると、採用はできても離職が増えるという状況になりかねません。
特にLINEやYahoo!では、外部への発信よりも社内のエンジニアが良い環境で開発できるようにすることを重視していました。社内のエンジニアが「この環境は素晴らしい」と言ってくれること自体がアウトプットになるという考え方です。
また、エンジニアコミュニティとの関係も重要です。エンジニアにとってコミュニティは非常に重要な存在であり、オープンソースコミュニティなどを通じて新しい技術が生まれています。「趣味で集まっているから重要でない」「仕事ばかりでコミュニティの話ばかりしている」といった誤解は避けるべきです。
エンジニアは業界貢献の意識が非常に高く、自分が得た知識を次世代に還元することを大切にしています。コミュニティや会社を超えた繋がりを大事にしており、そうした価値観を理解しないと採用活動もうまくいきません。
Q. DevRelとして参考にすべき企業はどこですか?
DevRelの取り組みでロールモデルとなる企業としては、メルカリ、LINEYahoo!、最近では夢美(MUMI)やタイミーなどが挙げられます。
これらの企業は、単に採用活動だけでなく、エンジニアとの関係構築や技術発信、コミュニティ活動などを積極的に行っています。エンジニアが転職を考える際には、コミュニティへの貢献や情報発信を行っている企業が選択肢として上がりやすい傾向があります。
