
日本はアナログ化せよ 欧米の真似をするな
4,925回視聴
2024年10月1日
NHKの番組監修などを長年務め、地方活性化事業も手掛ける知日派、アダム・フルフォード氏。「未来が地方にある」と語る理由とは。 <ゲスト> アダム・フルフォード|地域活性化の専門家 フルフォードエンタープライズ CEO。イギリス出身で1981年の来日以来、言語コンサルタントとして「英語でしゃべらナイ...
未来は地方にある?地域再生マネージャーが語るAXの世界
日本の地方文化や持続可能なコミュニティづくりに長年携わってきたアダム・フルフォード氏。彼が提唱する「AX(アナログトランスフォーメーション)」とは何か、そして日本の未来がなぜ地方にあると考えるのか、その独自の視点について語ってもらいました。

Q. 「AX」とはどのような考え方ですか?
「AX」とはアナログトランスフォーメーションの略です。これは日本の地方文化、特に「失われつつある暮らしの価値」から生まれた考え方です。
最近ではDX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)など様々な「X」が注目されていますが、技術だけでなく人の変化も必要だと考えています。
自分自身が変わり、これまで歩んできた道とは違う方向へ進む必要があるかもしれない。そのためのアナログトランスフォーメーションが重要だと考えるようになりました。
Q. AXの背景にある「44の失われつつある暮らしの価値」とは何ですか?
これは東北大学(現・東京都市大学)の古川柳蔵先生が約15年前から研究してきたものです。古川先生は90歳以上の高齢者に戦前の地方での暮らしについて聞き取り調査を行い、そこから44の価値を見出しました。
例えば「22. 助け合う仕組み」は、日本の地方に伝わる「結い」のような相互扶助の精神です。一人では難しい屋根の修理なども、皆で協力して行う仕組みがありました。
また「40. どこまでも歩く」という価値も興味深いものです。昔の人々は日常的に2〜3kmを平気で歩いていました。歩くという行為自体が脳に刺激を与え、現在シリコンバレーなどで注目されている「ウォーキングミーティング」のような効果を無意識に得ていたのかもしれません。
そして「44. 生かされて生きる」という価値は、単に生きているということだけでなく、生きることが素晴らしいチャンスだという感謝の気持ちを表しています。これは自然の力や周囲の人々への感謝の念が込められていると考えられます。
Q. なぜ日本の未来が地方にあると考えるのですか?
地方には未来のヒントがあると考えています。その理由は主に二つあります。
一つ目は、人口減少問題です。地方は人口減少の最前線に立っており、約50年前からさまざまな対策を講じてきました。これから東京が直面する問題を地方はすでに経験しているため、そこから学べることが多いのです。
二つ目は、持続可能なコミュニティ作りのDNAが地方には残っているからです。企業も持続可能なコミュニティになりたいと考えるなら、地方の町の日常生活から学ぶことがあります。地方の知恵は、企業戦略を考える際にも刺激的な視点を提供してくれるでしょう。
Q. 実際にどのような地域活性化の取り組みをされていますか?
最近までは福島県郡山市の大瀬地区で活動していました。そこでは地元のベトナム人技能実習生の居場所づくりが一つのテーマでした。
例えば、お正月の門松づくりでは、地元の農家が作り方や由来を説明し、ベトナム人が自分なりの門松を自由に作りました。日本文化をより身近に感じてもらうと同時に、農家の「なんとかなる」という強い精神がベトナム人にとってモチベーションになったと思います。
また、インターナショナルスクールの学生たちが農家体験をしたり、ベトナム人が日本のコミュニティの仕組みを学んだりする機会も作りました。こうした活動を通じて、日本の文化や持続可能なコミュニティづくりのDNAを伝えることを目指しています。
Q. 日本の地方と世界の地方の違いはありますか?
地方に対する考え方が異なります。私はイギリスで生まれましたが、イギリスでは田舎は憧れの場所です。19世紀から観光地として人気があり、多くの人が地方での暮らしに魅力を感じています。
一方、日本では長い間、便利な生活を求めて地方から都市へ移住する流れがありました。地方の生活は厳しいという印象があり、それを避けて都会で暮らしたいという人が多かったのです。
しかし、今は少しずつその考え方が変わってきています。便利さを追求する中で失ってしまったものに気づき始めているのではないでしょうか。
また、日本の地方の素晴らしい点は多様性です。山、湖、森など、イギリスにはないような生活様式がまだ各地に残っています。さらに「44の価値」は普遍的なものですが、世界の多くの地域では失われてしまった一方で、日本にはまだ残っています。
Q. 日本の地方文化が残っている理由について、何か仮説はありますか?
地方文化が日本に残っている理由の一つに、災害の多さがあるかもしれません。日本は地震、台風、大雪、火災など様々な災害が頻繁に起こります。
こうした災害が常に周囲の人々を大切にする必要性を日常的に思い出させているのではないでしょうか。イギリスでも災害は起きますが、その頻度は全く異なります。
災害の際に「なぜ自分は生かされているのか」と考える機会が、地方文化や共同体意識の維持につながっているのかもしれません。
Q. 外国人と日本の地方の関係についてどう考えていますか?
これからの日本の大きなテーマの一つは、日本を選んだ外国人との関係です。今後30年ほどで日本の人口は急速に減少する可能性が高く、外国人材の受け入れはさらに重要になるでしょう。
彼らが自国に戻った後、日本についてどのような評価を広めるのか。また、外国にルーツを持つ人々が日本の良さを共有できるようになれば良いと考えています。
現在、様々な国籍の人々が日本で働いたり研修したりしていますが、これらの人々を大切にしなければ、地方の企業はこれから先に進むことが難しくなるでしょう。
